表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
71/78

71 小さな手掛かり


「あっつ……」


 王都アクリムから西へ数日。道中は比較的過ごしやすい気候であったのだが、一気に気温が上昇。

 灼熱の空と地面に照らされながら半日ほど歩き続けたフィニス達一同。日が西に傾き、空がオレンジ色に染まる頃にようやくグラダ砂漠の手前にある街、オシスに到着した。


「とりあえず……店の中に入りましょう……」

「賛成……もう無理……」


 街に入ってすぐの飲食店へ入る5人。


チリンチリン


 ドアを開けると同時に小さな鈴の音が店内に鳴り響く。


「あら、いらっしゃい。好きな所に座っていいよ」

「涼しい〜……生き返る……」


 近くの席に座る5人に水とメニューを手渡す店主の女性。


「こんな所に珍しいね、冒険者かい?」

「ん……まぁそん」

「そうそう!俺たちアクリムの城から来たんだよ。ここ最近砂漠化がすごい勢いで進行してるから調査をしにさ!もしかしたら精霊も関係しているんじゃ無いかって思ってるんだけど、何か知ってることあったりする?」


 エラリスの言葉に被せるようにルシオが店主に笑顔で話しかける。


「その原因が分かったら苦労しないよ!ここも数年前までは緑豊かだったって言うのに、今となっちゃ砂まみれさ!」


 それぞれのオーダーを取った店主は、笑いながら厨房の方へと消えていってしまった。


「お前よくもまぁあんなペラペラと喋れるな」


 フィニスが呆れながらルシオを見る。


「別に"城から来た"のは本当だし嘘は言ってないだろ?馬鹿正直に何でもかんでも話すより、こう言う時は身内だってことにしたほうが情報も手に入りやすかったりするんだよ」


 そう笑いながら、ルシオはコップの水を一気に飲み干した。


「ほんと、そういう所は頭いいのにね。なんで女の人を見かけるとバカになるのかしら」

「ギルドにいる時なんて、依頼者が美人の女性だと全然話が進みませんでしたからね……」

「それがルシオの平常運転」


 女性陣の辛辣な言葉に、コップを口に当てて天を仰ぎながら固まるルシオの肩を優しく叩くフィニス。


ぽんぽん


「いい奴だな……」

「お前もな……」



「はいよ!お待ちどうさま!」


 頼んだ料理を次々と運んでくる店主。その店主の後ろから、ゆっくり慎重にニティアの頼んだ飲み物を運んでくる幼い女の子。


「はい!おまちどうさま!」

「ありがとう、お手伝い偉いねぇ」

「えへへー」


 グラスを受け取ったニティアが笑顔で話しかけると、女の子も嬉しそうに笑って答えた。


「砂漠化の原因に……精霊の話ねぇ……作っている間ずっと考えてたけど、やっぱり私は聞いたこともないね……」


 料理を運び終えた店主が、フィニス達のテーブルの前でそう呟く。


「さばくか……せいれい……もぐらさん!」


 店主の言葉に反応した子供が、目を大きく見開いた。


「ねぇおかあさん!もぐらさんのことじゃないかな?」

「え?もぐらだって?そんなの、あんたの間違えでしょうに……」


 運ばれた肉を口に頬張りながら、エラリスが視線を2人に移した。


「もふふぁ……もぐもぐ……ゴックン。もぐらって何?」

「あぁ……数週間前くらいにね、街から出るなって言い聞かせていたのに……この子、他の子達と一緒に街の外に出ていっちまったんだよ。そしてこの子だけ迷子になっちまってね……夕方から捜索隊と一緒に探しにいってみたら、ここから南の方にある洞窟……グラダ坑道の入り口ですやすやと眠ってたのさ」

「この暑さの中……?」

「そう。医者に見せたら軽い脱水だけだってさ。信じらんないだろ?まぁ洞窟の中で涼んでたんだろうけどさ。あそこは魔物だって出るっていうのに……ほんと生きた心地がしなかったよ」

「もぐらさんとずっとあそんでたの!」

「目が覚めたらもぐらさんと遊んでとかなんとか……脱水で意識障害で倒れてただけだろうから、気にしないでおくれ!ほら行くよ!」

「えーまだおはなししたい……」


 店主に手を引っ張られ、嫌そうな表情をする子供に、アルテアが優しく話しかける。


「お姉ちゃん。少しお話ししましょう」

「いいの!?」

「もちろんです!お姉ちゃんお名前は?」

「リヴ!」

「店主さん。少しリヴちゃんのお話を聞いてもいいですか?もしかしたら何か手掛かりになるかもしれませんし……」

「全く……鵜呑みにだけはしないでおくれよ」

「分かっています」


 2人がそう笑うと店主は奥へ。子供は椅子を持ってきて、フィニス達の席に座って楽しそうに話し始めた。



「つまり……迷子になったリヴを、そのもぐらさんが洞窟に案内してくれて……」

「うん!」

「洞窟の奥は危ないからって、入り口のところでずっともぐらさんが遊んでくれてたと……」

「そう!あと小さくてあまくてかたいやつもくれたんだよ!」

「何でしょう?何かの植物とかですかね?」

「でももぐらさんもこまってたよ。どうくつのおくがこわい。どんどんおくにいけなくなってる?って!」


 笑いながらジュースを飲んでいるリヴをよそに、皆が視線を合わせる。


「充分あり得るんじゃないか?リヴァレーの時も、遺跡の奥にいた魔族のせいで水の浄化ができないとか言ってたし」

「うん。私も状況が似てるなって思った」

「精霊単体だと力をうまく具現化できないからね」

「それじゃ決まりかな?」

「リヴちゃん、お話しありがとうございました。あ、これは後でママに見つからないようにこっそり食べてくださいね♪」

「いいの?!ありがとう!!」


 ガルドから貰っていた最後の小さなお菓子をリヴに渡し、笑顔で手を振るアルテア。

 リヴは嬉しそうに渡された包みをポケットの中にしまい、店の奥へと走っていった。


「それじゃ、今日は休んで、明日の夕方にでも行くか?」

「日中は無理……そうしよ……」

「おばちゃん!ごちそうさま!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ