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世界を救い、そして滅ぼした魔女ニティア  作者: 月白
第2章〜 ギルドと白い影
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42 英雄の手記


 図書館の入り口前に立つニティアとフィニス。2人の顔を見て、入り口に立つ兵士が軽く会釈をする。


「フィニス様とニティア様ですね。念のため許可証の確認を……」


 そう言われて、ニティアは書類を兵士に見せる。


「はい」

「……はい、問題ございません。どうぞ中へ」


 兵士に案内され、2人は図書館の中へと入っていった。



 数時間前……


 ギルド内の訓練場にて、双剣を使いルシオと対峙しているフィニス。


「おーらぁ!」


ガキーン!


「ずいぶん双剣も使い慣れてきたじゃん!そらよっと!」


 盾で剣を受け流し、槍で攻撃を仕掛けるルシオ。その槍をもう片方の剣で受け流し、ルシオの盾を足場にして後方へ飛び、距離を空けるフィニス。


「ふぅ……だいぶコツが掴めてきたわ。怪我してるのに付き合ってもらって悪いな」

「いやいや、いいって。どうせ酒飲んでるだけだし(笑)」

「本当よく飲むな……」


 呆れて笑うフィニス。ふと視線を隅の方にやると、そこにはニティアが目を瞑って何かをしていた。

 おそらく術式を構築しているのだろう。魔力で空気が揺らいでいるのか、ふわふわと黒い髪が舞っていた。


「そんで、まだどの魔法を入れるか決めてないのか?」


 ルシオに声をかけられ、視線を戻すフィニス。


「自分に1番足りないものを補う形にするのか……長所を伸ばす形にするのか……決めるのはもうちょっとこいつを使ってみてからだな」


 二つの剣を眺めるフィニス。


「おい、ニティアとフィニス。王国ギルドの人がお前らに用事があるんだとよ。ちょっといいか?」


 突然訓練場にヴェスパの声が響き渡った。

 ニティアとフィニスは一度視線を合わさると、お互いに首を傾げ、ヴェスパの元へと歩いていった。


「私たちに王国ギルドの人がですか?」

「え、俺らなんかしでかしたかな……?」

「ま……まさか……」


 そんなやりとりをしていると、ヴェスパの後ろから冒険者と思われる男が姿を現した。


「お二人がニティアさんとフィニスさんで?」

「はい、そうですけど……」

「宿屋にいなかったので、こちらにいてくれて助かりました。この書類を渡すように城から依頼を受けたんですけど……」


 そう言い、冒険者は印で封をしてある書類をフィニスに手渡した。


「それでは、自分はこれで失礼します」


 軽く頭を下げた後、冒険者はそそくさとその場を離れていった。

 フィニスが受け取った書類を見てみると、そこには【王国図書館使用許可証】の文字。

 その文字をみて2人は顔を合わせたあと、自然と小さなハイタッチを交わしていた。


 その様子を見ていたヴェスパは、一度くすりと笑うと、今度は弟の方へ顔を向け、ルシオを呼び出す。

 姉に呼ばれ、のそのそと歩いてくるルシオ。


「例の件だけど、予想通りだ。今は廃協会にいたっていう情報だ」


 ヴェスパのその声を聞いて、ルシオの表情が変わった。


「2人はこれから図書館に行くんだろ?」

「うん、そのつもりだけど」

「なんかあったのか?俺も行こうか?」


 フィニスの胸元を軽く拳で殴るルシオ。


「お前らはお前らのやるべきことをやって来い。俺もちょっと用事ができたからな」


 ルシオがそう言って笑うと、そのままの足で訓練場を後にしていった。



 図書館


「すげぇ……」

「初めてみると、この本の量……びっくりするよね(笑)」

「逆に調べるのが大変そうだ……」


 そう言いながら、2人はジャヌスや魔女。魔物や魔族等ついて書かれている文献を何冊か取り出し、テーブルに着いた。

 お互いに真新しい情報を手にすることができないまま、何冊目かの本を手に持ち、本のタイトルを見るフィニス。


 "英雄達の記録"


 多分ジャヌスたちのことも書かれているのではないか。ペラペラとページを捲っていくと、ジャヌスについて記載されている箇所で手を止める。

 まじまじと読んでみると、フィニスはその文字に見覚えがあることに気がついた。


「この文字……先生の……」


 小さく呟いたフィニスは、そのまま目を通していった。


"多くの魔族を倒し、向かった古の居城。黒い魔女【ノクス】の居城へと足を踏み入れたヴァルク・グラム・ミレア・エルシア、そして私の5人。

 激しい戦闘の末、ヴァルクとミレアが戦死。グラムとエルシアは意識があるものの重傷。私も重傷を負い意識を失っていたが、ミレアが白月の指輪へ回復魔法を込めていてくれていたのだろう。ノクスが姿を消した後に指輪の魔法が発動し意識を取り戻し、グラムとエルシアの3人で城を脱出することになった。

 道中多数の魔族に囲まれてグラムが戦死する。

 なんとか近くの防衛基地に戻ってきたものの、エルシアはそのまま昏睡状態。魔力の枯渇はエルフにとって命に関わる問題である。それにもかかわらず、道中は私に無理をさせないように戦ってくれていたエルシアに涙が止まらなくなった。

 私についても、ノクスとの戦闘で返り血を目に浴びたせいなのか……時折目が熱くなる。原因は不明だ。


 半月後、エルシアも死亡。そして私の体にも異変が生じるようになる。

 突然視界が真っ黒に染まり、目の前の映像とは異なる映像が映るようになった。どうやら未来の映像を映し出しているようだが、私の意思に反して突然起こる。正直困惑以外の何物でもない。

 こんな力を今更手に入れたところで、死んでいった仲間達が帰ってくることはないのに。


 王都へ戻ってからは、定期的に王都へ情報を提供することを条件に、人里離れて暮らすことの許可を得られたため、隠居をすることにした。

 私にできることは、次の世代を育てること。力の使い方を導くこと。

 きっと未来の若い世代が、私たちを超え、世界を救ってくれることを祈って……"


「先生……やっぱり見えてたじゃん(笑)なぁ、ニティア」


 そう言ってニティアに目を向けたフィニス。ニティアはというと、目を大きく見開いたまま、手に持った文献は小刻みに震えていた。


「ご、ごめん……少しだけ外の空気吸ってくるね」


 そう言い残し、本を閉じたニティアはフィニスと目も合わせずに、突然外に出ていってしまった。


「どうしたんだ……?」


 ニティアが読んでいた文献に手を伸ばすフィニス。


"魔女"


 とだけ書かれた表紙がボロボロになった文献。

 フィニスはニティアが見ていたであろう黒い魔女について記載されてているページに目を通す。


"紅の魔女が倒されてから数百年後。突如黒い魔女が現れ、各地区を滅ぼし始める。魔女は自分を【ノクス】と名乗っており、それはかつて紅の魔女を倒した英雄達の1人。魔法使いノクスと同じ名前である。

 ………

 ……

 …

 そして、今回も【魔女狩り】が全国で勃発している。

 【魔女狩り】とは、かつて魔女が現れた際に魔女と似た一族が差別・迫害されることである。

 紅の魔女が現れた際には、紅髪の魔法使い一族が魔女狩りにあい、一族滅亡の寸前まで追い込まれた記録が残っている。今回もまた黒髪の魔法使いの一族においても同じ事案が全国で多発。

 黒髪の魔法使い一族は、かつての英雄……ノクスの出生の一族でもあり、魔力の高さや術式構築の才能に特出している傾向が多く、一般市民からより恐怖の対象となったものと思われる。"


「……」


 本を閉じたフィニス。本はそのまま、急足でニティアの元へ向かっていった。



「ここか……」


 城から最も離れており、城下町のメインストリートから外れた一画。城壁や、廃墟と化した無数の大きな建物により、ほとんど日も当たらないくらい場所。

 働けない人や、親を失った子供達。金と暴力でなんでも解決してしまうスラム街。

 ルシオは、その一画の中央に置かれている教会の前に1人で来ていた。

 誰も手入れをしていないのだろう。壁一面は植物に覆われており、ひび割れたステンドグラスがかろうじてここが教会であったことを主張していた。


ギィーッ


 施錠もされていないドアをゆっくりと開ける。


 人気の無いボロボロの教会。そんな中、たった1人、崩れた女神像の前に跪き、祈りを捧げている女性の姿が目に入った。

 ルシオはゆっくりとその女性に近づいていく。


「やっと見つけた……アルテアちゃん。どうしたの?」

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