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世界を救い、そして滅ぼした魔女ニティア  作者: 月白
第2章〜 ギルドと白い影
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40 天才魔法使いのプライド


 リヴァレーと別れた後、止血はされているが、重症であるルシオ。一刻も早く治療をした方がいいと考えたニティアは、飛行魔法で王都の手前まで飛び、そこから急いで城下のギルドへ戻る。


 ルシオの様子を見たヴェスパは、ルシオを教会へ連れて行くので、2人でカシェルの元へ依頼完了を伝えてくるように言われ、2人はカシェルの屋敷をたずねていた。


「どれどれ……」


 手に持った歯ブラシに鼻を近づけて匂いを嗅ぐカシェル。ニティアはその光景を見ていられず、目を背けていた。


「確かに……微かに臭いはしますが……」

「だろ?俺は全く感じないし、ニティアなんかは臭く感じるらしいんだぜ!」


 少し考えた後、カシェルは使用人を2人室内に呼び、何も言わずに歯ブラシの臭いを嗅がせる……


「うっ……!」

「……?」


 1人は顔を背けながら鼻を押さえ、もう1人は何のリアクションも取らずに首を傾げる。

 その反応を見たカシェルはにっこりと笑った。


「まさか……本当に実在しているとは……!」


 どうやら呼んだ使用人の1人は魔力持ち、もう1人は魔力を全く持たない者だったのだろう。

 フィニスの言う通り……そして伝説の通り、魔力を持つ者の鼻を刺激する歯ブラシだと言う事がわかり、目を大きく見開いたカシェルは、満足そうにフィニスの手を取った。


「ありがとう!報酬はギルドを通して後ほど渡す!感謝するぞフィニス君!」

「俺も実物を見れて感動したぜ!」


 げっそりするニティアをよそに、熱く握手を交わす2人。しばらく勇者の話で盛り上がった後、2人はカシェルの屋敷を後にするのであった。



 ギルドに戻った2人。

 そこには、ちょうど教会から戻ってきたのだろう。ヴェスパと顔色もすっかり良くなっているルシオが一息ついているところだった。


「ちょうど良かった。遺跡での魔族との戦い。オレが気絶してる間の話を、もう一度、姉貴も含めて話してくれないか?」


 そう言いながら、酒を片手に手招きするルシオ。2人もそのテーブルに着き、遺跡での出来事をヴェスパとルシオに話し始めていった。



「なるほど……よく生きて帰って来れたな……」

「白髪の魔族の気まぐれのおかげよ……じゃなかったら私たちもやられていたわ」

「いや、でもそんな強大な魔族がいるっていう情報だけでも貴重だ。報告書を書いて城に提出してくる」


 そう言って立ちあがろうとするヴェスパをニティアが止めた。


「あの……しばらく奥の訓練場……使ってもいい?」

「ん?あぁ、別に好きに使っていいぞ。でも物資は壊すなよ」


 そう言ってヴェスパは立ち上がり、自分の部屋へと消えていった。


「……どうしたんだ?」


 フィニスが首を傾げながらニティアの顔を覗き込むと、ニティアは目を瞑る。


 ギースや白髪の魔族に、魔力の量では決して負けていなかったニティア。それにもかかわらず、ほぼ手も足も出せずにやられてしまった。

 たまに趣味でオリジナル魔法の開発はしていたが……基本的には狩りやジャヌスとの修行の時くらいしか攻撃魔法を使っていない。

 実践経験が不足していると言えばそれまでなのかもしれないが……それでもあそこまで何も出来なかったことが悔しくいろいろ思うところがあったのだ。


 ニティアがゆっくりと目を開ける……


「久しぶりに魔法を作ろうと思ってさ」


 ニティアの顔を見て、ふっとフィニスが笑う。


「そうか」


 短く答えた。それを聞いたニティアもゆっくりと立ち上がり、それじゃ行ってくるねと告げた後、奥の訓練場へ1人足を運んで行った。


「……」

「……?」


 無言のフィニスと、酒を飲み上機嫌のルシオ。フィニスは背中に携えている折れた剣の柄を一度掴んだ後、ルシオに目を向けた。


「なぁ、この辺にいい武器屋無い?」

「あぁ……そうか、折れちゃったんだっけ?」

「新しい剣が無いことには、何も出来ないしな……」


 一瞬何かを考えたルシオ。すぐに考えがまとまったのだろう。酒を一気に流し込んだ後、明るい表情でフィニスへ顔を向けた。


「武器屋じゃなくて、おすすめの魔道具屋ならあるけど……一緒に行ってみるか?」

「魔道具屋……?」



 訓練場に1人。


 杖をかざし、ふわりと宙を舞い始めるニティア。


(魔力がたくさんあるだけじゃ意味がない……)


 目を瞑り、遺跡での戦いを思い返す。


(あんな狭い場所じゃなければ、私だってもっと大規模な魔法を……いや違う。相手も同じ条件なのに一方的にやられてた)


 術式を構築し、あらゆる可能性を模索する。


(剣を持ってたから?いや、でもギースにしろ白髪の魔族にしろ、そもそも刃を伸ばしたり斬撃を飛ばして……)


 はっと目を開けるニティア。


「そうか……魔力で現象を引き起こすんじゃなくて、魔力そのものを使ってたんだ……でも魔力そのものを放出するなんて聞いたこと……」


 大量の魔力を消費しながら、魔力を具現化して放出する術式を構築しようとするニティア。そんなスムーズにその術式が見つかれば、みんながその魔法を使っている。そんな簡単に術式を構築できるはずも無かった。

 しかし……それにもかかわらず、ニティアは笑っている。


「面白くなってきたじゃない……」


 魔族が使えて私に使えないはずがない。天才魔法使いの血が滾っていた。

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