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世界を救い、そして滅ぼした魔女ニティア  作者: 月白
第2章〜 ギルドと白い影
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39 黒と白の激突


「ゲホッゲホッ……」


 倒れ込んだ衝撃で胸を打ちつけ、咳き込むニティア。あのまま魔力を吸収され続けていたらあっという間に魔力を吸い尽くされていたであろう。

 膨大な魔力を持っていたニティアでさえ、半分以上の魔力を持っていかれてしまった。

 何が起こったのか理解ができずに、自分を助けてくれた白髪の男を見上げるニティア。


『なんじゃ……お主は……』


 ギースが白髪の男を睨みつける。

 男は言葉を発することもなく、ゆっくりと地面に足をつけた。


「飛行魔法……それに……」


 白髪の男の胸元には、白く輝くコア。


「魔族……」


 ニティアが視線を白髪の男からギースへと移す。吹き飛んでいた左腕が、いつのまにか再生している。


『あと少しで全部吸い尽くせたんじゃがのぉ…おかげで随分回復させてもらったわい』


 ギースがニティアを見てにやりと笑う。


 さっきは助けてくれたとはいえ、相手は魔族。しかも全身から伝わる、ギースにも劣らない魔力量。そんな魔族が目の前に2体。まさに絶望的状況である。このまま何もできずにやられるわけにはいかない。ニティアが術式を構築し始めると……


スッ


 白髪の男がニティアに向けて剣を向ける。


ビクッ


 思わず肩を振るわせ、身構えるニティアに、白髪の男が視線を向けた。


『今はまだ……お前達とやり合うつもりはない。大人しくしてくれ』

「……え?」


 そう言い、男がギースの方へと身体を向ける。


『ふぉっふぉっふぉ。なんじゃ、喋れたのか。同じ魔族同士……争う必要もあるまい!』


 そう言い放った瞬間、ギースが白髪の魔族へ剣を振るい、その剣先から放たれた黒いオーラが白髪の男目掛けて飛んでいった。

 しかし……


パァーン!


 男が白い剣を一振り。黒いオーラを弾くと同時に、そのオーラが一気に弾けていく。


『ぐっ……小癪な……』


 一気に距離を縮めるギース。そのギースの攻撃を、両方の剣で受け止める白髪の男。

 受け止められているギースの剣からは、黒いオーラが手裏剣のように飛び交い、白髪の男の体を少しずつ切り刻んでいく。


『ふぉっ!』


 ギースが不敵に笑う。


『くだらねぇ……』


 白髪の男がそう呟くと、両手の剣が白く輝き出す。

 そして次の瞬間……


ガキーン!


 ギースの剣。そしてギース自体も腹から上下真っ二つにされていた。


ドサッガシャーン


『この……ワシが……切られた……だと……』

『悪知恵ばっかり働かせてるからだ』


 そうギースに言い残し、ニティアの方へ向き直す白髪の男。

 その頃、フィニスも意識取り戻し、震える身体で上半身を持ち上げ、状況を把握しようと辺りを見回していた。

 目の前には先ほどまで苦戦していたギースが真っ二つにされており、その目の前には新しい魔族が立っている。

 折れた剣と、腰にしまっているナイフを取り出し、白髪の男を睨みつける。一瞬目が合った気がしたが、白髪の男はすぐに視線を空に向けていた。


『こんなに弱い奴が……なんで……』


 そう小さく呟くと、こんどはニティアの方へ視線を向ける。


『あなたなら、もっと楽に勝てたでしょうに』


 そういうと、右手に持つ剣が強く輝き出した。

 咄嗟にニティアの前に入り、折れた剣とナイフを構えるフィニス。


 男が一瞬笑い、そして剣を振るった。


ズシャッ!


「!?」


 振りかぶった剣先から白い斬撃が飛び交い、真っ二つにされているギース……ギースのコアを砕いていた。


『ぐっ!おのれ!!貴様やはり白髪の魔女の!!』

『うるさい』


 再び剣を振り、ギースのコアを粉々に切り刻む男。


『うご……ご……』


 黒い炎を纏い、ギースは消滅していった。


 一瞬で静寂に包まれる空間。


 再び白髪の男がフィニスとニティアに顔を向け、フィニスの顔をじっと見つめる男。


『フィニスだったな。もっと強くなれ。ここを切れるくらいにな』


 自分の胸元のコアを指差す白髪の男。


『ニティアさ……』


 何かをニティアに言おうとして口を止めた白髪の男は、再びふわりと飛び上がる。


『……次はお前達の番だ』


 そう言い残し、一瞬の眩い光を放ったあと……白髪の男はその場から消えていた。


「……なんだったんだ……あいつ……なんで俺たちの名前を……」

「……ルシオは?!」


 ふとルシオの方に目をやり、ふらつきながらもルシオの元に駆け寄る2人。肩から切られたルシオの傷口の前にはリヴァレーがいた。

 

『ボクひとりでは止血までしかできなかったけど、急所は外してあるし、死にはしないはずだぞ』


 ひょっこりとルシオの盾から現れたリヴァレー。


「あんた……見当たらないと思ってたらそんなところに……」

『痛いのは嫌だからな』

「でも……助かったな……」

「……うん」


 ルシオの止血された傷跡に薬を塗り、回復薬を口に流し込んだ後、再び寝かせるフィニス。

 ゆっくりと立ち上がり、辺りを見回す。


 傷だらけの壁。血だらけの床。そして折れた剣先。


 これを見ただけで、どれだけ激しい戦闘があったのか見て取れるほど悲惨な状態だった。


「あの白いやつ……なんだったんだ……」

「わからない……でも……あんなに強かったギースを一撃で……」

「……また図書館で調べなきゃならないことが増えたな」

「うん」



 ルシオが目を覚まし、何があったのかを説明した2人。ルシオの体力が回復するまで、もう少しだけこの場に留まることにした。


「まぁ、今は考えてても仕方がないし……とりあえず目的の歯ブラシでも探すとしますか」

『ん?歯ブラシ?』


 フィニスの言葉にリヴァレーが反応する。


『歯ブラシって、あのトゲトゲしたやつか?』

「お!リヴァレー知ってるのか?!」

『知っているもなにも……』


 てくてくと、部屋に流れている川側まで歩いていき、じっと水の流れを見つめるリヴァレー。

 しばらくすると小さく光何かが、水の中から空中へと浮かび上がってきた。


『凄い臭かったから、水の中にずっと沈めていたんだ。結果的に魔族を倒してくれたんだ。お礼にコレやるよ』


 差し出されたものは異様な臭いを放っている歯ブラシ。物凄く臭いというわけではないのだが……ただただ今まで嗅いだことのない異臭。ニティアは鼻を指で摘み、眉間にシワを寄せた。


「なにこの臭い……こんなのが勇者の歯ブラシなわけ……」

「うぉぉぉぉ!!マジ?臭い??伝説は本当だったのか!!」


 そんなニティアの言葉を遮り、テンション爆上がりのフィニス。


「……は?」

「俺は全く感じないんだ!魔力に応じて鼻を刺激する……伝説の通りじゃないか!」

「どんな仕組みの歯ブラシなんだよ……」


 部屋中に響き渡るフィニスの声を聞き、ルシオは笑いながらボソッと呟いた。

 歯ブラシに鼻を近づけて臭いを嗅ぐフィニス。本当になにも感じていないようだ。


「そんな伝説……聞いたこともないわよ……」


 項垂れるニティアと、部屋の隅で座りながら笑っているルシオ。そして歯ブラシを掲げて無邪気に喜んでいるフィニス。そんな3人を見て、リヴァレーもついつい小さく笑みをこぼしていた。



『お前達。本当に助かったよ』


 遺跡の外の湖畔の前で、リヴァレーが小さくお辞儀をした。


「こっちこそ、コレありがとな!」


 そう言って歯ブラシを小さく突き出すフィニス。そんなフィニスの肩にちょこちょこっとリヴァレーが登ってくる。


『フィニス、また会えるといいな』


 そう言いながら頬擦りをし、肩から降りてルシオの元へと駆け出していくリヴァレー。


『お前にも助けられたな。止血してても怪我は酷いんだ。無理はするなよ』


 そう言ってルシオの足をペチペチと叩くリヴァレー。


「止血ありがとな」


 最後にニティアの足元でちょこんと座るリヴァレー。


『気持ち悪いって言って悪かったな。ニティア』

「あなたはここに残るの?」

『あぁ。やっと水の浄化ができるようになったからな』

「そっか……あのさ……」

『なんだ?』

「……一回だけ……撫でていい……?」


 ぷっと吹き出すフィニス。リヴァレーも少しだけ怪訝な顔をしていたが……


『お前の魔力は……ちょっとボクには合わないんだ……一回だけだぞ』

「……!!」


 そう言ってリヴァレーが頭を差し出しすと……ニティアは満面の笑みで頭を撫でるのであった。

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