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世界を救い、そして滅ぼした魔女ニティア  作者: 月白
第2章〜 ギルドと白い影
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31 初めての依頼


 テーブルの上に置かれた紙。依頼書に目を通す3人。


「えっと……山奥の村で謎の奇病……ですか?」


 ニティアが記載されている文字を読み上げると、ヴェスパがニティアに視線を合わせた。


「そういうこと。お前らには依頼者と一緒にこの村に行って、この奇病の判明。可能であれば解決をしてきてもらいたい」


 ぽかーんとする3人。


「私とルシオでいくしかないと思っていたが、ちょうど良かった。私もやることがあるからな」


 そう言うヴェスパに、ニティアは慌てるように口を開いた。


「解決って言ったって……どうやって……?私は回復魔法はおろか、治療もできませんよ?」


 にやりと笑うヴェスパ。


「言っただろ?"依頼者と一緒に"って……おい!」


 訓練場とは異なる、奥の扉の前に立っている男に声をかけるヴェスパ。男は大きな返事をし、部屋の中へと入っていった。


「なんだ?」


 首を傾げながら奥の扉を見る3人。気にせずヴェスパが話を続けた。


「私とルシオで詳しく話を聞こうと思ってな。依頼書を受け取るついでにそのまま連れてきたんだ」


 ガチャりと奥の扉が開く。

 男の後ろから歩いてきたのは……


 肩にかかるオレンジ色の髪の毛。白いハビット(修道衣)に身を包み、ニティアの持つ杖とは異なる、先端が金属の十字のような形をした杖を持ち、ゆっくりと歩いてくる女性。

 4人が座るテーブルの手前で立ち止まり、深々とお辞儀をした。


「えっと……皆様初めまして。今回の依頼をさせていただきました……聖光十字教会のアルテアと申します」


 顔が上がり、少しだけ恥ずかしそうに笑うアルテア。その顔を見た瞬間に、ルシオが立ち上がった。


「城下ギルドのサブマスターを務めるルシオと申します。もし宜しければ、この後一緒にお食事でもいかがでしょうか?シスターアルテアさん……」


 そう言って差し出されたルシオの手を、胸元に刺していたペンで突き刺すヴェスパ。


「いったぁ!!」

「依頼主をいきなりナンパしてんじゃねーよクソが!」

「いや!するでしょこんな美女!」

「女なら誰でもいいのかテメーは」


 その発言に、ふとニティアを見るフィニス。


「ん?でもニティアは口説かれたりとかしてないよな?」

「まぁ、そうだね」

「そりゃ……お子様に手を出すわけないだろ……」


 そう言ってフィニスとヴェスパがニティアのある部分に視線を移した後、アルテアの同じ部分に視線を移す。


 ニティアの視線が、自分の胸元と……


つるーん


 アルテアの胸元を……


ぷるーん


 往復して泣いた。


 ニティアの全身から"起こり"を察知したフィニスは、慌てて話を逸らしにいった。


「お、俺はフィニス!つい最近ここにきたばっかだから、色々知らないこととか多いと思うけどよろしくな!」


 そう言い、今度はお前の番だと言わんばかりにニティアに視線を移すフィニス。

 大きなため息をついた後、ニティアもアルテアの方に体を向けた。


「私はニティア。フィニスとは一緒に暮らしてた幼馴染なんだ。よろしくね!」


一通り3人の挨拶が終わり、呆気に取られていたアルテアはくすりと笑う。


「はい、よろしくお願いします」



「で、今回の依頼の確認だ。山奥の村で蔓延している奇病の解析と、あわよくば治療ということだが……教会の方では何か……思うところがあったりはしないのか?」


 単刀直入に聞きたいことを聞きにいくヴェスパ。

 依頼者が全員いい奴とは限らない。そして、受ける依頼によっては情報の有無が生死に直結することは身を持って知っている。

 このような情報収集も含め、依頼の精査をした上で、ギルドのメンバーへ依頼の振り分けをしているのだ。


「それが……事例がないんです……」

「事例がない?」


 赤い薔薇をアルテアに差し出しながら、ルシオが尋ねる。


「はい。(あかり)が……(ともしび)が消えていくんです」

「ん?どゆこと?」

「さぁ……?」


 フィニスとニティアが顔を合わせて首を傾げる。


「詳しく聞かせてくれるか?」


 ヴェスパが薔薇を投げ捨てた。


「最初は突然、夜間に小さな蝋燭や松明の火が消えて、着かなくなっていったそうです」

「日中は問題ないのに……なぜか夜間だけ……」


 アルテアが視線を落とす。


「しばらくすると、灯りを出す魔導具……その次は暖炉……そして灯りを発する魔法……」

「何故か、灯りに関係するものが夜間限定で使えなくなるんです」


 首を傾げていたフィニスが口を開いた。


「ん?でもそれは奇病じゃないだろ?周りの明かりが消えてるだけであって」


 アルテアがフィニスに視線を移す。

 ニティアは少しだけモヤモヤした気持ちで耳を傾けた。


「はい。そのため、その時は魔法ギルドに依頼をしたのですが……その後すぐ、人の灯。命の灯までが消えてしまうという症状が現れ……魔法ギルドにこの依頼を断られてしまったんです」

「命の灯って……死ぬってこと?」


 ニティアがすぐにアルテアに尋ねる。


「段階的に……ですが、その通りです」

「段階的に?」

「まず、瞳の灯が薄れていき、感情も薄れていきます。その次に、精神の灯が蝕まれて、反応ができなくなります。そして最後に……」

「命の灯が消え、死ぬってことか」


 ヴェスパが目を瞑りながら答えた。


「はい……教会ではこの病を灯喰病または魔女の呪いと呼んでいます」

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