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世界を救い、そして滅ぼした魔女ニティア  作者: 月白
第2章〜 ギルドと白い影
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32 毒と焚き火と笑い声


「その村まではどれくらいで着くんだ?」


 王都を出て、草木生い茂る密林の中を歩く4人。ガサガサと音を立てながらフィニスが前にいるルシオたちに声をかける。


「普通に行くと4・5日はかかるかな」


 そう言いながら、邪魔な草木を掻き分けるようにして先頭を歩いているルシオ。それにアルテアが続き、ニティア、フィニスの順。


「マジかよ……」


 そう言って、ぜぇぜぇ息を切らしながら歩くフィニス。


「ですが、ここの密林が近道になっているんです。毒を持つ動植物が生息しているので、一般の方はあまり好んで通りはしませんけどね……」


 上半身を少し後ろに向け、アルテアはフィニスとニティアに話しかける。


「ただ……ここの毒性は、魔力をある程度持っている人であれば、例え毒に感染したとしても、感染箇所が腫れる程度で済むんですよ」


 そう言ってにっこり笑い、正面を向き直す。


「へぇ……そうなんだ」


 そうニティアが言った瞬間。


ガサッ!


 後ろから変な音が……


「キャッ!何??」


 振り向くニティア。しかし……何も無い。違和感といえば……


「あれ……フィニス?」


 フィニスがいない。ニティアの声に立ち止まったルシオとアルテアが、ニティアの元まで戻ってくる。


「あれ……フィニスさんは……?」

「なんだ?トイレか?」


 そう言いながらキョロキョロと周りを見渡すが、フィニスの姿が見当たらない。


「フィニス!どこ!?ねぇ!!」


 ニティアが叫びながら来た道を少し戻るように歩いていると……


コツン


 足元に何かが当たる。

 恐る恐る視線を下に向けると……全身が腫れ上がり、泡を吹いて倒れているフィニスがいた。


「キャーー!!」



 木々が少し開けた場所。

 ルシオに担がれたフィニスが、涙目のニティアによって広げられたマントの上に寝かせられた。

 アルテアが近づき、そっと額に手を当て、魔法をかける。


「フィニスは……大丈夫なの……?」

「これは………」


 額から冷や汗を流し、真剣な表情のアルテア。


「そこらじゅうに生えている、毒草の毒ですね……」

「………ん?」

「え?」


 驚く2人。


「魔力が少ない人であっても、腫れはともかく、意識の混濁までの症状が出るまでは、普通その日の晩とか翌日になるのですが……」

「え?なにこの人。その中毒症状が速攻発症したってこと?」

「そういうことになります……ここまで進行の早い人……私も見たことが……」


 そう言いながら魔法で解毒を続けるアルテア。少しずつ体の腫れが引いていく。


「そういえば……」


 ニティアがゆっくりと口を開く。


「フィニスは魔力が無い……全くの0だってジャヌスさんが言ってた……」


 その言葉に納得するルシオと、驚くアルテア。


「なるほど、だから毒が一気に身体中に浸透したのか。魔力0とか珍しいな(笑)」

「私は初めてお会いしました……」


 そう言いながら回復を続けるアルテア。


「でも良かったです……フィニスさんの場合、このまま数時間治療ができずにいたら、危なかったかもしれません」


 そう言いながら優しく笑うアルテア。

 そのアルテアを見て、ニティアは少しだけ胸がキュッとなった。

 胸元のネックレスを手で握るニティア。


「ねぇ……アルテア……回復魔法ってどうやってやるの?」


 その発言にキョトンとした顔でニティアを見るアルテア。

 その後、一度くすりと笑ったあと、少しだけ困ったような顔でニティアに目を向ける。


「私たちの使う回復魔法は、魔力を法力という別のエネルギーに変換する事で使用できる魔法なんです。そして、この変換する能力に関しては……生まれ持ったものであり、後発的にできるものでは無い……と言われています」


 俯くニティアを見て、再び優しく笑うアルテア。


「それでは、少しだけ協力をお願いしてもいいですか?ニティアさん」


 顔を上げ、少しだけ目を輝かせたニティアが、アルテアに言われるがまま、隣に座る。

 そして、フィニスの額にかざしたアルテアの手の上に、ニティアの手を当てさせた。


「ニティアさんの魔力を少しお借りしますね」


 アルテアが意識を手に向けると、ニティアの手を包み込むように、うっすらと輝き出す。


「これでフィニスさんも大丈夫ですよ」


 にこりと笑うアルテア。


「ほ、ほんと世話の焼けるやつなんだから!」


 そう言いながらも、ニティアは嬉しそうに笑っていた。


「いいねぇ〜……」


 そんな2人のやり取りを見て微笑みながら、集めてきた薪に火をつけ、持ってきた食料を温め始めるルシオであった。



 「面目ねぇ……」


 フィニスが焚き火で温められたスープを飲みながらみんなに謝る。


 「本当よ!心ぱ……時間が無駄になっちゃったじゃない!」

 「いや、俺も悪かったよ。その特性を知ってたらもっと慎重にルートを選ぶべきだったのに」


 3人を見てくすりと笑うアルテア。


「明日の朝進めれば、夕方には村に着くはずです。奇病についても、日中は調査できないと思いますし、問題ありませんよ」

「でも……また倒れちまったら……」

「フィニスさんは……魔力が無いとの事なので、効果は薄いかもしれませんが、森を通過するまでは毒に対する耐性魔法をかけておきますから大丈夫です」


 じーっとフィニスを見ているニティア。


「な……なんだよ……」

「べっつに〜」


 笑いながら小さなため息をつくルシオ。


「とりあえず、明日は毒草全部俺が引き受けるから、フィニスもニティアも安心しな。その代わりに……!俺が毒で倒れたらアルテアちゃん!俺にも回復をお願いします!!」

「は?私は別にこの程度の毒なんか効かないから?心配もしてないんですけど?!」

「いや、毒を引き受けてくれるのはありがたいけどさ……ルシオはその先にある、アルテアに回復とか介護してもらいたいとか言う邪な考えだろ」

「何を言っているんだフィニス君!俺はみんなを守るための盾としてだな……」


ぷっ


 何か噴き出すような音……音が聞こえた方に視線を移す3人。そこには……



「あはははは!あ、す、すみません(笑)くすっ」


 涙を流して笑っているアルテア。


「いや、皆さんが面白くて……(笑)」

「そうか?いつものことだぞ?」

「俺はしらんけど?」

「2人ともうるさい」

「ぷっ……」


 再び噴き出すアルテア。


「本当にすみません……あまりこういう……賑やかな環境にいなかったもので、面白くてつい……」


 手で涙を拭うアルテア。3人が首を傾げた。


「ん?教会ではみんなと話とかしないの?」


 ニティアの言葉に涙を拭う手が止まり、俯くアルテア。


「聖光十字教会。外向けには、穏やかに優しい……癒しのイメージを向けているところではあるのですが……競争や派閥争いが激しいところなんです……」

「へぇ……知らなかった……」

「なんか……大変そうなんだね……」


 アルテアは少し困ったような表情で話を続ける。


「神官の位には、人数制限があります。そのため、みんなその位を奪い争うため……競争をしたり。自分たちがいいポストに付きやすくなるよう、派閥を作ったり……本来は自分たちのためじゃなくて、困っている人達のために立ち上がった教会のなんですけどね……」


 パチっパチっと、薪の弾ける音が周りに鳴り響いていた。


「今回の依頼に関してもそうなんです。解決できるかもわからない難しい内容だからって……誰もやりたがらない……困っている人々を助けるための組織なのに……」


 膝をギュッと抱えて炎をじっと見つめているアルテア。


「あなた達が、とても楽しそうに依頼を受けてくれて。そして人を助け合う様子を見ていたら……なんか面白く……そして羨ましくなってしまいました」


 そう言い、少し寂しそうに笑っていた。

 毒が抜けたばかりのぼーっとする頭を、ちいさくゆらゆら揺らしながら、そんなアルテアにフィニスが口を開いた。


「よく分からないけど、じゃ〜一緒にくれば?」


 その発言に目を丸くするアルテア。

 少し間が空いた後、くすりと笑った。


「それも……いいかもしれませんね♪」

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