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世界を救い、そして滅ぼした魔女ニティア  作者: 月白
第2章〜 ギルドと白い影
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30 赤髪のギルドマスター


 声のする方を一斉に見るニティアとフィニス、そしてルシオ。

 赤髪のトゲトゲした腰まである髪の毛の女がルシオを睨みつけて立っていた。


「あ……」


 ルシオから脱力した声が漏れ出ている。

 女は、その長い髪をブンブンと左右に振りながら右手をルシオの方へかざして歩いてきた。

 かざした右手を中心に、足の周りにも微かに砂埃が舞っているのが見えたフィニス。


「あ、なるほど……って、あの戦い方!?」


 拘束されているフィニスが呟くと、鋭い岩の塊がルシオ目掛けて飛んでいった。

 痺れている身体で、ルシオは水蛇を吸収し終えた盾を飛んでくる岩の方に構えた……その瞬間……


ボゴッ!


「ぐへっ!!」


 後ろに高速移動した赤髪の女に、ルシオは顔面をぶん殴られていた。


「話は聞いたぞ!王様の推薦の人間相手にてめー何やってんだ!」


 フィニスもつい目を閉じてしまう。昔殴られた後頭部に痛みが走った気がした。


「いってぇ〜……何も殴らなくったっていいだろうが……ちょっと実力が見たかっただけだって」


 殴られた頬をさするルシオ。赤髪の女がため息をつきながらルシオを睨みつけていた。


「バカかテメェ!そっちの嬢ちゃんが本気出してたら、てめーなんて手も足も出ずに終わってるわ!」

「……」


 叫ぶ女と黙り込むニティア。その反応が気になり、拘束が解けたフィニスはニティアに小さく囁いた。


「どういうこと?」

「一応……もう一つ作戦はあったの……」

「え?」

「あの盾、魔法を吸収するのにも魔力を消費するって言ってたから……ルシオの魔力が切れるまでひたすら魔力消費の多い魔法を撃ち続ける……」

「こわっ……」



 薄暗い店内。フィニスとニティア。そしてルシオと……ここのギルドマスターであり、ルシオの姉のヴェスパの4人がテーブルを囲っていた。


「まさかジャヌスさんが……」

「だから力になってやりたかったんだよ。ついでに実力も見たかっただけだって」


 フィニスは少し気になることがあった。

 英雄ジャヌス。知っている人は知っている大賢者である。そのため、大体の人はジャヌス。もしくは英雄ジャヌス。兵士のように、多少関わりのあった人はジャヌス様と呼んでいた。

 だが、この2人はニティアと同じ、ジャヌスさん……


「なぁ、2人にちょっと聞きたいんだけど」

「ん?」

「なんだ?」


 視線がフィニスに集まる。ニティアも首を傾げながらフィニスの顔を覗き込んでいた。


「いや、変なふうには捉えないでくれよな!」


 前置きをしてから話し始める。


「2人とも、ジャヌスさんって呼んでるから。先生と何か交流とか、そういうのがあったのかなって思ってさ。大体みんな、呼び捨てとか、英雄ジャヌス。あとはジャヌス様って呼ぶことが多いから、ちょっと気になって……」


 ルシオとヴェスパが目を合わせたかと思いきや、ルシオが大きく手を上げる。


「ジャヌスさんは俺の初恋の人です!」

「……」

「……」

「このギルドは、親父から引き継いだギルドなんだ」


 ヴェスパが話し始める。


「腐ってもギルド。当然実力がないと、例え受け継いだところで成り立たない。だからルシオと2人で、相当無茶をしたんだ」


 手を上げたままのルシオ。


「数年前、ギルドを正式に引き継ぐ少し前だな。でっかい実績を残そうとちょっと無理な依頼を2人で受けてな……魔物に囲まれてやられそうだったのをジャヌスさんが助けてくれたんだよ」


 英雄時代じゃない。

 自分たちが知っているジャヌスが、人を助けていた。その言葉に胸が熱くなるフィニスとニティア。


「そこから、私は魔力は少ないけど術式構築が器用だからと、そういう闘い方を。弟は魔力は多いけど、魔法としては使えないから、魔導具を上手く使えと言ったアドバイスをもらって、ここまでこれたんだ」


 そう言って笑うヴェスパ。ルシオもそっと手を下ろした。


「そうそう。俺も潜在的にはその辺の魔法使いよりは魔力が多いらしいんだけど……フレイムアロー3発で魔力切れ起こしてたからな(笑)。潜在魔力が多いなんて思いもしなかったし」

「3発って……術式効率悪すぎでしょ……」


 つい突っ込んでしまったニティア。


「ほんとだよな(笑)」


 全く気にせずに笑って答えるルシオ。

 ヴェスパは身体をテーブルの上に預ける形で前のめりになると、フィニスとニティアを交互に見つめた。


「恩人ジャヌスさんの弟子が困ってる……そりゃうちらも協力するしかないよな!」


 そう言ってルシオの背中を思いっきり叩くヴェスパ。


「私もジャヌスさんや魔女、白い炎の件について、裏で何か情報があったら知らせる。そしてルシオ。お前はついて行け」

「え?」

「は?」

「?」


 いきなりの言葉に一瞬フリーズする3人。

 そんなことも気にせずに、ヴェスパは話を続けた。


「その協力の代わり……うちのギルドメンバーとして、難易度の高い依頼をルシオと共に手伝ってくれ。もちろん報酬も渡す」

「あぁ……そういうこと(笑)」


 自分たちも助けてもらい、相手も助ける。Win-Winの関係だと言うことに気づいたルシオはふっと笑った。

 フィニスやニティアとしても、協力者が増えることは嬉しいことだし、何よりルシオの実力も知っている。

 2人は目を合わせてお互い笑い合った。


 3人の反応を見て、にやりと笑うヴェスパ。


「と言うわけで、早速この依頼を受けてもらう」

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