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世界を救い、そして滅ぼした魔女ニティア  作者: 月白
第2章〜 ギルドと白い影
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29 宙を舞う魔法使い


 大きな盾と大きな槍を持ったまま走ってくるルシオ。


「あんな重装備のくせに……速ぇな……」


 フィニスがニティアに一度視線を合わせて、小さく頷いた後ルシオへと走っていく。

 フィニスとルシオが交戦する直前……フィニスが空高く飛び上がったその時。


バチッ!バチチチッ!


 細長い雷が一線、ルシオの盾目掛けて、通り過ぎていった。

 それを見たフィニスが下で盾を構えているルシオに対して剣を向けた。


「そんなビリビリしてたら、もうどうしようもないだろ!」


 剣を振りかぶろうとした瞬間、ルシオがふっと笑った。

 次の瞬間、振りかぶった剣に衝撃が走り、フィニスは吹き飛ばされていた。


「は?」


 唖然とするフィニスの元へ、ニティアが近づいてきた。


「全く魔法が効いてない……あの盾、魔法耐性がすごいんだと思う」

「そんなのずりーだろ!?」

「でも耐性があるのは盾だけのはずだから!」


 ルシオが2人の方向に身体を向け、ゆっくりと歩いてきた。

 立ち上がり、ニティアの前に出るフィニスに対して、ルシオが槍を向ける。


パチッ!


 槍の先から小さな稲光……これはっ!!


バチチチッ!!


 咄嗟に身体を横に投げ出すフィニス。先ほどまでフィニスが立っていた場所に、細長い雷が一線走っていた。


「まじか……これを初見で避ける奴を初めて見た……」


 目を見開き驚くルシオ。


「魔法耐性じゃない……?吸収と放出をしている?」


 フィニスの言葉を聞き、ルシオは笑いながら槍と盾を上に掲げた。


「その通り。この盾は装備者の魔力を使って魔法を吸収。そしてまた魔力を使って槍から受けた魔法を放出。俺は術式の才能が無くて魔法は使えないけど、魔力だけはそこそこあったみたいでな……この2つは俺にとっての最高の相棒だよ!」


 そう言い、走ってくるルシオ。


「あんなんどうしろってんだよ……」

「そんなの私だって……!」


 と言ったニティアの脳裏にある言葉が蘇る。


【予想外の出来事が起こった時、今一度落ち着いてみてください。ニティア……あなたには、どんな困難だって乗り越えられる力がありますから】


 すっと深呼吸をするニティア。視界がクリアになり、完全に落ち着きを取り戻していた。


(よく考えないと。私ならできるはず……!)


 迫り来るルシオに突撃するフィニス。


 術式を組みながら少し距離を取ったニティアが、少しだけ規模の大きい魔法を使う。


バチバチっ!


 先ほどよりも大きな雷。しかしルシオの盾に完全に吸収。向けられた槍により自分に跳ね返された。


「っ…!!」


 咄嗟に金属の粒子を展開し、電流を拡散する。


 次!


「フィニスどいて!」


 今度はルシオの全方位から炎の矢を放ってみるも……後方や側方からの炎は槍を振り回して打ち消され、正面の炎は盾で吸収。そして吸収した炎を2人に向けて飛ばしてくる。

 難なく避ける2人。


「さて……どうしますかニティアさん?」

「うるさいな!次……拘束してみるから接近戦であんたがなんとかしなさい!」


 そういうと、ニティアは水を発生させた。


(一般的に知られていないアクアリバインドなら……)


 細長い蛇のような形へと変化した水が、フィニスの突撃に合わせてルシオへ向かう。


「甘い甘い!」


 しかし、魔法はあっさりと盾で吸収。そしてフィニスの剣はルシオの槍で弾かれ、ニティアの元まで吹き飛ばされた。


「あ!俺の可愛い水蛇ちゃんも吸い込みやがって!」


 ズズズ……と吸い込まれていく水蛇。


(……?!)


「まだまだやれるでしょ?こんなんで終わったら、この後の酒も美味くならないよ!」


 水の魔法を吸収したルシオが、今までよりも早く突撃してくる。

 ルシオの槍を避け、剣を打ち込むフィニス。その剣も盾で防がれ……そのまま槍での薙ぎ払いを、フィニスが剣で受け流す……。


 すごい攻防により、周りで見ているギルドメンバーたちの盛り上がりも最高潮だ。

 そんな中、一瞬の隙を狙い、盾から水の蛇を出現させたルシオ。突如現れた水蛇が身体に巻きつき、拘束されたフィニスは、そのまま盾で吹き飛ばされ、ニティアの横に転がってきた。


「あっ!ちくしょー!ずりーぞ!」


 もぞもぞ動きながらルシオに叫ぶフィニス。ニティアは、そんなやりとりを遮るかのように、フィニスの前に立ち塞がった。


「降参かな?」


 ルシオが笑う。


「……ううん。多分……私たちの勝ちだよ」


 そう言って笑うと、先ほどと同じように、魔法で水を作り、水蛇をルシオに向かって放つニティア。

 盾を構えて吸収するルシオ。


「それはさっきもダメだったでしょ!」


 吸収し続ける盾。


 盾の合間から前を見ると……水蛇に絡まっているフィニスだけ。視界からはニティアが消えていた。


「私たちはもう、負けられないの」


 あり得ない方向からの声。


 ルシオが上を見ると……そこには宙を舞うニティア。


 盾はまだ吸収を続けている。


バチッ!


 上空から放たれる雷。


「ぐぉっ!!」


 盾を動かせずに、槍で雷を受けて感電したルシオが膝をついた――その瞬間。


「そこまで!」


 訓練場に、よく通る声が響いた。


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