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3 いつか王都で


「あ〜…やっとついた!」


 街の入り口で大きなあくびをするフィニス。ここはフィニスたちの家がある森から、少し離れた村……の、さらに先にある小さな街である。

 フィニスが狩った動物の燻製肉。ニティアとジャヌスの作った薬を定期的にこの街へ売りにきているのだ。


「……何がやっとついたよ……近くまで私の魔法で運んであげたじゃない」


 そんなフィニスを横目に、大切な薬の入った鞄をゆっくりと背負い直すニティア。


「20分は歩いただろ?」

「魔法がバレたら面倒なんだから仕方ないでしょ!」


 小さな物を浮かせたり、一時的に浮遊する魔法は存在するが、フィニスたちを運ぶ飛行魔法や運搬魔法。これらの魔法は、ニティアが作り出したオリジナルの魔法である。

 膨大な魔力量と、魔法に対する天賦の才があって初めて使用できる魔法であり、現にジャヌスですら使用することは不可能だ。

 そんな珍しい魔法を使う人間がいると知られたらどうなるか……面倒ごとになるのは目に見えていた。


「まぁでも、俺の肉もだけど……特にニティアと先生の作った薬は評判いいから大丈夫でしょ。前回もすぐ売れたし。さっさと売って買い物でもしようぜ!」

「あんたね……前回の時もそれで売上金全部使って、伝説の勇者?のパンツだかなんかを勝手に買って、ジャヌスさんに怒られたじゃない……」

「なっ…?!紅の魔女を倒したって言われる伝説の勇者のパンツだぞ!?ちゃんとパンツも紅色だっただろ!」

「魔女が紅なだけで、その魔女を倒した勇者のパンツがなんで紅色なのよ……」

「あ……確かに………」


 荷車を押しながら歩くフィニスに向かって大きくため息をつくニティア。そんなニティアの頭にフィニスは手を軽く乗せた。


「今回はちゃんと先生には許可もらってから大丈夫!軽く羽を伸ばす程度なら使ってもいいよってね」


 その言葉に目を大きく見開くニティア。


「え?!ほんと!」

「嘘ついてどうするんだよ(笑)」


 と、会話をしていたはずのニティアの姿が目の前から消えていた。


「なにやってんの?遅い!早く行くよ!」


 声の方に視線を送ると、すでにはるか先にいるニティア。


「どんだけ楽しみなんだよ」


 小さく呟いたフィニスは、荷車を引きながら、足早にニティアの後に続いていった。



「毎度ありー!」


 そう言って傭兵らしき男から硬貨を受け取るフィニス。ニティアが後ろを振り返ると、鞄の中だけでなく、荷車の肉も空っぽになっていた。


「うわ……ほんと、あっという間に売れちゃった……」


 あまりの速さで完売したことに驚くニティア。


「だから言ったろ?結構評判なんだって」


 そう言いながら、硬貨を数えるフィニス。ひと通り数え終わったのか、硬貨を袋の中に入れていく。


「それじゃ、飯でも食いにいきますか」


 その発言を聞いたニティアは目を輝かせ、小さくジャンプをしたあと……


「やった♪」


 そう小さく呟いた。



「いっただきま〜す♪」


 そう言い、はちみつのかかったパンケーキを口いっぱいに頬張るニティア。


「むっふ〜♪」


 そんな幸せそうな顔を見ながら、肉の挟まっているパンを食べるフィニス。


「毎回……よくそんな幸せそうに食べられるな……」


 半分呆れながら、肩肘をテーブルについてニティアを見るフィニス。


「ほんとだよ」


 そう言いながら、店主が紅茶を持ってきた。


「あ、これはいつもニティアちゃんが美味しそうに食べてくれるからサービスね」


 持ってきた紅茶を2人に差し出す。

 ニティアは紅茶をひとくち飲み、パンケーキと一緒に味わった。


「おばさんありがとう!」

「ありがとうございます」

「うちのなんて、そんなたいそうな物でもないのに……王都に行けばもっとフワフワのが食べられるわよ」 


 苦笑いしながら店主は厨房へと戻っていった。

 フィニスがニティアの方に視線を送ると……その話を聞いたニティアは目を輝かせ、フィニスへ視線を向けている。


「ねぇ」

「行かねーぞ」

「まだ何も言ってない」

「言わなくてもわかる」

「ケチ」


 少しだけ眉間にシワを寄せたニティアは、再びパンケーキを口に運んだ。

 次の瞬間、その顔はさっきと同じ満面の笑みに変わっていた。



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