22 賢者の見ていた世界
急に声をかけられ、驚いた2人。
その声の主は、以前魔物から助けた行商人であった。
「まさかここでお会いできるとは!」
「あの時の行商人のおっちゃん!」
その反応を見た店主は、ふっと笑った。
「ちょっと混んできたし、知り合いなら同じテーブルでいいかい?」
構わないと言うフィニスと頷くニティア。
フィニスが隣を空けて、そこに商人が座った。
「それでは、この方と同じ物を1つと、あとはワインをください」
オーダーをした商人がニコニコ顔で2人に話しかける。
「いや〜…まさかもうお会いできるとは……あの時は本当にありがとうございました!ここは私が持ちますから、好きな物を頼んでください!」
そう言って自分の胸をドンと叩く商人。
「もちろん、甘いものやデザートも、好きなだけ頼んでいいですからね!」
その言葉にピクッと肩が反応するニティアに、フィニスはぷっと笑ってしまった。
「いや、ありがとうおっちゃん」
「あ……ありがとうございます……」
商人は、前回会った時とは明らかに様子の違う2人を見つめた。
こんな時間に、2人だけで食事をしているのも気になる。
「して……こんな時間に……どうかされましたかな……?」
商人はワインを一口飲み、少しだけ言葉を選ぶように視線を落とす。
目を合わせたフィニスとニティア。ニティアがゆっくり頷いた為、フィニスはここに至るまでの事情をゆっくりと話し始めた。
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「そのような事が……」
目に涙を溜め、ワインを一気に飲み干す商人。すぐさま店主を呼びおかわりを注文する。
「それで、世界を回る為に旅を始めたと言うわけですか……」
「……うん」
「……とりあえずは、先生がよく行っていた王都に行こうと思ってるんだ」
その言葉を聞いた瞬間に立ち上がる商人。
「おおお!でしたら私の馬車に乗っていきませんか!?」
突然の大声にびっくりする2人。
商人はそんなことお構いなく、話を続ける。
「ちょうど、私もこの町での商いが終わり、王都に戻るところでして……。それに、助けていただいた際、次お会いした際にお礼は必ずすると言ったはずです。命を助けてもらったお礼が、この食事だけだなんて……商人としての名が廃れてしまう!」
フィニスが少し間を置いた後、ふっと笑った。
「……?」
ニティアは首を傾げていたが、フィニスはそのまま商人の手を取った。
「わかった、それじゃお願いするよ!」
「もちろんです!」
そうして、翌朝に商人の馬車に乗り、王都へ行ことが決まった。
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店から出て、宿へ向かう2人。
「何で、馬車に乗って行けって言ってたときに笑ったの?」
先に沈黙を破ったのはニティアだった。
「ん?……あぁ」
一瞬何のことか分からなかったが、理解したフィニスがニティアに向かい笑って答える。
「いや、あの時さ。きっと先生も、たくさんの人を助けて、こうやって助けた人に助けられたりもして……そうやって世界を回ってたんだろうなって思ったら、なんか嬉しくなっちゃってさ」
それを聞き、空に浮かぶ月を眺めるニティア。
「私たちも……できるかな?」
同じように空を見上げるフィニス。
「それをやって行くんだろ」
ニティアも優しく笑う。
「そうだね」




