表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界を救い、そして滅ぼした魔女ニティア  作者: 月白
序章〜 暖炉の火と紅茶の匂い
PR
19/78

19 賢者ジャヌス


「買うもんはこれくらいか?」

「ん〜……紅茶の葉と、卵と塩と……これで終わりかな?」


 小さなメモに目を通すニティアと袋を肩からぶら下げたフィニス。

 必要なものを買い終えた2人は、村の人たちと少しばかりの雑談をし、帰路に着いた。


「この道はそっちゅう歩いて通るし……真新しい発見なんてそうそう無いよな」

「そう言うのも含めて経験なんでしょ、同じ道でも季節とか天気によってだって景色は変わるし」

「まぁ…言っている側から雲行きが怪しいんだけどな……」


 空を見上げるニティア。

 村を出る時まで雲ひとつなかった青空は、黒い雲に覆われていた。



「いつの間に……雨に降られる前に急ぎましょ!」

「んだな!」


 そう言いながら、家までのいつもの道を走り始めた。



ザー……


 「くそっ!もう少し耐えてくれればギリギリ間に合ったのに!」


 村で買った物を入れた袋。それを濡らさないように胸で覆いながら走るフィニス。

 卵が入っているせいで全力で走れないのが歯痒かった。


「大丈夫か?」


 息を切らしながら、フィニスの後ろを走るニティア。


「はぁ……はぁ……あと少しだから……大丈夫……!」


 玄関前にたどり着いた2人。


「うわぁ、びしょびしょ……」

「はぁ……はぁ……ほんと最悪……早く着替えたい……」


ガチャっ


「ただいま〜」

「はぁ……ただいま帰りました……」


 静寂に包まれる。


「先生?」

「ジャヌスさん?」


 ドアを開けた瞬間に漂ってくる紅茶の香りと……

 差し出される暖かいカップ……

 そして【おかえりなさい】の声……


 いつもの光景がなかった。


「出かけてるのかな…?」


 テーブルの上には空っぽのカップが2つ。

 読みかけの魔導書もそのまま。


 違和感を感じるフィニス。


「先生!」


 返事がない……


「びっくりした!何よ急に!」


 裏庭へ続く扉が開いていることに気付いたフィニスは、そのまま裏庭へ走り出した。


「……フィニス?」



ザー……


 裏庭でしゃがみ込んでいるフィニス。

 後ろからニティアがやってきた。


「いきなりどうしたのよ!またび……しょ……」


 フィニスの目の前。

 見慣れたローブ。


「え……」


 仰向けで倒れている女性。


「なん……で……?」


 状況が読み込めない。

 思考が停止したニティアが、フラフラとその隣に崩れるようにしゃがみ込む。


 ジャヌスの左手首に指を当てていたフィニスが首を横に振った。


「ジャヌス……さん……」


 状況を理解したニティア。


「いや……いやだよ……」


 ジャヌスの胸に顔を埋めた。


「せん……せ……」


 ジャヌスの左手を両手で包み込み、額に当てるフィニス。


 傷ひとつ見当たらない……

 まるで眠っているような……

 安らかな顔をしているジャヌス……


 降り続ける雨……


 2人の声は……


 雨音にかき消され、森の中へ消えていった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ