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世界を救い、そして滅ぼした魔女ニティア  作者: 月白
序章〜 暖炉の火と紅茶の匂い
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18/78

18 あなたならきっと


「まずフィニス。幻影に惑われず、よく観察して本体を見つけましたね。ニティアへの指示も良かったです」


 そう言って笑うジャヌス。


「先生……もうこれは勘弁してくれ」


 そう言って小刀を頭の上でくるくると小さく振り回した。


「さて……ニティア」

「……はい」

「あなたは魔力に頼りすぎです。それに、出力制限をしていたとしても、あの霧を晴らす方法なんていくらでもありましたよ?」

「え?」

「下を温めて上を冷やせば?」

「上昇気流……」

「御名答。出力を制限していても、量に関しての制限はしていません。なので、小さな炎をたくさん下に。そして水や氷を上空に精製する……あるいは、倒れている木々を浮遊魔法で振り回すだけでも、本体を視認できる程度まで、霧を晴らすことはできたでしょう」


 何もできず、唇を強く噛んでいるニティア。そんなニティアの口に回復魔法を当てながらジャヌスが続ける。


「あなたの地頭の良さは私が1番知っています。予想外の出来事が起こった時、今一度落ち着いてみてください。ニティア……あなたには、どんな困難だって乗り越えられる力がありますから」


 回復を終えたジャヌスが、ニティアの頭を優しく撫でた。



 夜。


 みんなで簡単な食事をとり、ニティアとフィニスの2人は自分の部屋へと戻っていった。


 テーブルの上に無造作に置かれている、街で購入した魔道具を見ているジャヌス。


 その中から、真ん中の白い石が鈍く輝く、錆びた小さな指輪を取り出した。


「こんなところにあるとはね……」


 指輪を上にかざし、魔力をそっと込める。


 錆が落ち、みるみるうちに元の輝きを取り戻す指輪。ジャヌスは指輪の内側を覗き込む……


 【Saga. Janus】の刻印が刻まれていた。


「まだ……懲りもなく生きていますよ」


 そう呟き、小さく笑うジャヌス。

 テーブルのカップを手に取り、紅茶を一口飲んだ後。その指輪を大切そうにハンカチに包み、読みかけの魔導書の上に置く。

 もう一度そのハンカチの上に手を添えたジャヌスは、そのまま部屋を後にしていった。



 翌朝。


 朝食を取り終わり、ジャヌスは紅茶で一息……


「ジャヌスさん。昨日みたいな状況に遭遇したとき、例えば……」

「先生!今日の修行についてなんだけど……」


 ……できなかった。


 昨日の実戦が2人にとって、いい刺激になったのだろう。

 そう思いながら、紅茶を口に運ぼうとしたジャヌスの視界が……真っ黒に染まる……


パリーン!


「……」


 真っ黒に染まった視界が元に戻る。

 落下するカップと床に飛び散った紅茶。そしてあたり一面には紅茶の香りが漂っていた。


「ジャヌスさん、大丈夫ですか?」

「先生?」


 2人が心配そうにジャヌスの顔を覗き込む。


「……すみません、考え事をしていたら手が滑ってしまいました」


 そう言いながら、割れたカップを拾うジャヌス。


「そうそう。今日ですが……大切な来客が来るのを忘れていまして……」


 カップの欠片を拾い終えたジャヌスが、2人に顔を向ける。


「積もる話もあるでしょうし、すみませんが……2人は村まで買い出しをお願いできますか?」

「別にいいですけど」

「って言うか、ここに来客とか珍しいな」

「だから私もすっかり忘れていましたよ」


 笑いながら、買い出しに必要なものを手短に伝えるジャヌス。


「では、準備が出来次第お願いしますね。あと……」

「??」

「ん?」

「飛行魔法は禁止です。ゆっくり……周りを見てきてください」

「それも経験でしたよね(笑)わかりました」

「まぁ荷物もそんなに多く無いしな」


 2人が目を合わせ、そのまま準備のために部屋を出ていった。


 魔導書の上。ハンカチに包まれた指輪を手にしたジャヌスがくすりと笑う。


「そういうことですか……」



 玄関の前に立つジャヌスと、外から玄関の方を見ている2人。


「そんじゃ行きますかね」

「行ってきます!」


 そう言い、振り返る2人。


「フィニス!」


 いつもより、少しだけ大きな声を出すジャヌス。その声に気づき、振り返る2人。


「ニティアのこと、頼みますね」


 優しく微笑むジャヌス。


「子守は任せなさい!」

「何が子守よ!!」


 クスッと笑うジャヌス。


「それから、ニティア」


 じっと優しくニティアを見つめるジャヌス。


「あなたなら、きっと大丈夫です」

「え?ん〜……は、はい!」


 一瞬首を傾げたニティアが元気な返事をした。


「それでは、気をつけて」

「りょーかい!」

「はい!」


 再び振り返り歩き始める2人。

 優しい笑顔のまま。

 2人の姿が見えなくなるまで……


 見送り続けるジャヌスであった。

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