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星の栞 -慟哭するひとつの導‐  作者: 白石さくら
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     ◇     ◇     ◇



 国創りから話は始まった。

 この地上が作られて一番初めに誕生したのが、天之御中主神あめのみなかぬしのかみが生まれ、その後に生まれた高御産巣日神(たかみむすびのかみ)神産巣日神(かみむすびのかみ)。この三神は「造化三神(ぞうかさんしん)」と呼ばれている。

 そしてその後に生まれた宇魔志阿斯訶備比古遅神うましあしこびひこぢのかみ天之常立神(あめのとこたちのかみ)と呼ばれる「別天津神(ことあまつかみ)」と呼ばれる。

 その後に生まれる「神世七代(かみのよななよ)」も歴史上では重要視される。

 しかし今彼らが語りたいのは、一番初めに出てきた造花三神の話だ。

 長いときを経て、今の時代も先の時代も、彼らは伊勢神宮にて祀られている。祀られる神は、ときに人の助けとなり導となる。しかし逆に、祀られなくなった神は無常にも、人を祟りという名の絶望へと追い詰める。

 そして、忘れられた神がその暴挙へと向けさせないための導となるのが、天之御中主神に選定されし存在。伊勢神宮に鎮座(いま)す、唯一無二の存在。その血統のもっともカの強い娘を、時代ごとに生まれるその身に神を宿す姫としてこう呼ばれる。


 ――玉依姫、と。



     ◇     ◇     ◇



「そこまでは知っている。あの男たちは、なに…?」


 自分の血に流れている力など、暙桜はとうの昔に知っている。だって彼女はこの力で一人の命をすくい、奪った。未来を失ったひとがいる。

 彼女は無意識に自分の胸に手をあてた。宿る病は彼女の命を刻々と蝕む。病魔は静かに増え続け、いずれは彼女の命を完全にとめるだろう。だがその前に知りたいことぐらいはある。それをしって死しても、かまわないはずだ。


「そう、玉依の血筋はいつの時代でも尊いものです。その血はどんな一族をも(なが)えさせるのにも、使われた裏の歴史があります」

「どんな、一族にも……?」


 おかしい表現だと暙桜は首を捻った。彼女の知る限り、この地上には「人間」という一族しか存在しないはずだ。

 暙桜の様子からそれを汲み取った青年は、苦笑し口を開いた。


「表向きの歴史は全て人間が握っているこの世界ですが、裏の世界には様々な種族が同時に存在しています」


 それは数多ある歴史の中にも存在しない、たくさんの種族の小さな息吹。


「そしてあの場にいた二人も、また人間とは違う種族。彼らはおそらく『鴉』だろう」

「からす……」


 思わず反復した暙桜が思い出すのは、あの空に羽ばたく漆黒の鳥だ。夜闇には姿をみせない鳥が、なぜか羽ばたいている姿がふと浮かんだ。それに、と青年が続ける。


「玉依が生まれる一族は、古来より紅の一族として扱われています。それもまた、人間以外の人種ではあります」


 そういった青年の言葉に暙桜が反復するように呟くが、それは音にならずに空気に消えてゆく。


「………」


 ひとつ頷くと青年は続けた。


「闇夜にきらめく彼らを見つけた人間は誰一人としていない。いや、生きていないのです。なぜなら、鴉が残らず殺すから」


 ゾクリと背中に悪寒が走る。殺す。殺す。――殺す。

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