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星の栞 -慟哭するひとつの導‐  作者: 白石さくら
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「誰だてめぇは」


 土方の鋭い誰何に動じた様子もない女は目元を和ませた。


(うぬ)らが望んだものじゃ」


 口調も声もまったく違う、けれど外見は暙桜のそれと同じ。


「名乗るのが遅れたの。(われ)は天地を司る神のひとつ、創世姫(つくよき)。汝らが望む知識を持ち合わせるものじゃ」


 暙桜にかけられていたであろう大袿に袖を通している少女は、どこか大人びて見える。

 ぶかぶかの大袿の袖元で口許を隠して目元を和ませている暙桜は少女というより一人の女性にしか見えない。外見が変わってしまっているのもあるだろうが。


「あいつはお前の存在を認知しているのか?」


 しているとすれば、彼女は新選組にそれを隠していたことになる。それならば、彼女の処遇を決めたのは少し早とちりだったのかもしれない。

 そう考えた土方だったが、その答えはあっさりと返された。


「認知はしていない。ただ、最近は吾が目覚め始めたために、吾の力が漏れ、暙桜自身に吾の知識や力といったものが流れ始めていた。じゃから吾はこうして出てきた」


 身体をなくされたら困るからのぅ…と溜息交じりの言葉に山南が眉を寄せた。


「身体、とは…?」


 僅かに遠慮がちのその問いに、不遜ともよべる態度で創世姫は答えた。


「吾はここでは具現できぬ。故に、暙桜が消えれば同じように吾が消える」


 胸元に手のひらを当て、堂々ともとれるような態度にあわないその言葉に、原田がはっと目を瞠った。その反応を視界の隅に映した創世姫は満足そうに頷いた。


「左様。暙桜がこの時空に落とされたとき、汝ら新選組の隊士であるあ奴等が暙桜を亡き者にしそうになったときは焦ったものじゃ」


 ほほほほほ…と笑い続ける創世姫になぜかふつふつと湧いてきたのは、怒り。

 刀に手をかける仕草を見せた総司を目ざとく見つけた創世姫は、楽しそうにその双眸を細めた。


「ほぅ…、吾に手を出すというのか? たかが脆弱な人間ごときが」

「悪いけど、神様とかいきなり言われたって、それを納得できるほど、僕も新選組も子どもじゃないんでね」


 悪びれた様子もない総司に目を丸くした創世姫は次の瞬間には底冷えするほど涼やかですがすがしいほどの冷笑をその顔に貼り付けていた。


「そうじゃのぅ…。ならば吾が今ここで新選組を滅ぼしたとしても、歴史にはさして支障は無いとみえる」


 力の奔流か、神の怒りか。戸が開いていない室内に、異様な風が吹く。舞い上がる黄金の髪から覗く紅の瞳が残忍に煌く。

 左手は口許に当てられたままだから、彼女の唇がどんな形をしているか分からないが、その目許は嫌に(たの)しそうにつりあがっているから、その唇がどんな形をしているかなど、想像がたやすくできる。

 一触即発の空気になった。

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