表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/26

<19>

 セルバの街に来て七日目。レクトはガイストンの店に三度目の来訪を行っていた。

『武具の店 ガイストン』にもう一度来た理由は簡単で、この街に訪れた初日に注文した武具一式ができあがったからだ。

 レクトの新しい武具が出来上がったということで同じパーティーメンバーのケルトとアリエスも興味津々といった態度でついて来ていた。

「ふむ。こんなものか」

 鎧の着付けを手伝っていたガイストンは最後の部位となるヘルメットを渡しながら感想を述べる。

「なかなか様になっているぞ」

 クマの頭を模したように見えるヘルムを被って全部位を装備し終えたレクトの姿は立派な歴戦の勇士を思わせるものになっていた。

「それとおまえさん運がいいぞ」

 さらに方刃の大剣を渡しながらガイストンは装備の説明をおこなう。

「お前さんが装備している武具はどれもアーティファクト化しておる」

 受け取った方刃の大剣を背中に背負いながらレクトは驚いた表情をする。

「なんだって!」

「すごいじゃないか!」

 付き添いで来てくれたアリエスとケルトも大いに驚き、装備がアーティファクト化したことを共に喜んでくれた。


 アーティファクトが生まれる三つ目の条件としてモンスター又はデーモンの素材で道具を作るというものがある。

 モンスターやデーモンを素材にして武具や装飾品などを作ると、元となったモンスターやデーモンの持つ異能が宿ることがあるのだ。

 異能が宿ったアーティファクトが出来る確率は素材となった個体の生きた年月と経験によって上がっていくと思われている。

 そこからさらに職人の腕が合わさることでいくらかアーティファクト化する確率をあげることができるようになっていた。


「まず鎧だが、そちらには【堅牢】と【剛腕】。それと剣には【威圧】の異能が宿っておるぞ」

 モンスターとデーモン素材のアーティファクトは先天的異能が出やすいとされている。

 ただでさえ出来にくいアーティファクトだが、そこに宿る異能が後天的異能だとわかれば、ただでさえ高いレアリティがさらに上がり値段も高騰した物になるだろう。

 幸いというべきかレクトの渡した素材で出来た装備はどれもアマルグマの先天的異能が宿ったものになっていた。


 レクトは背にさした方刃の大剣をすらりと抜いてみる。

 アマルグマの爪、牙、骨を加工して作られたその刀身は、レクトが求めて欲した刀の姿はしておらず、幅広で反りのある刀身をした、いわゆるファルシオンと呼ばれ分類される形をしていた。

 刀身の形についてはガイストンが提示したサンプルから吟味して選んだ。

 やはり刀がなかったのが少し寂しかったが、それでもこのファルシオンという剣もレクトはそれなりに気に入っていた。

「試し切りがしたいのなら、ちゃんと専用の場所があるがどうする?」

 その申し出を聞いたレクトは新しいオモチャで早く遊びたいといった子供のような表情をして申し出を受け入れた。


 ガイストンが案内した試験場には弓矢用の的がいくつかと鎧を着せたカカシがいくつか立っていた。

「そのカカシがつけている鎧は寿命がきて廃棄する予定の物だから遠慮なくやっちまって構わないぜ」

 そのように説明を受けたレクトはファルシオンを抜いてカカシの一つに対して正眼に構える。

 新しい武器を手に入れた喜びの心を落ち着かせるために深くゆっくりと深呼吸を行う。

 自らの心中を風のない湖面のように静かな凪ぎにさせ、程よい緊張感が体を支配したところで力強く正確に剣を打ち込んだ。


 ザシュ


 基本をしっかり押さえた面打ちによってカカシは鎧ごと見事に真っ二つに切り裂かれた。

「すげえな。とてもハンターになりたての木札の若造とは思えない腕前だ」

「修行しましたから」

 レクトの真っ直ぐで迷いの無い太刀捌きにガイストンは素直に感嘆の言葉を述べた。

 多くの客と渡り合って来た職人のガイストンにほめられレクトは照れながら恐縮していた。

「お前さんならそいつをうまく使いこなせるだろうよ」

「ありがとうございます。部不相応な装備をしていると思われないように精進します」

 異能が宿るアーティファクトは天恵が宿る物と違って触れただけで効果や使い方がわかるようにはなっていなかった。

 どのような能力があるかは【識別】の天恵の力で解るようになっている。

 効果のほどは知った使い手は、その力がうまく自分になじんで使いやすくなるようになるために鍛錬をかかさず行うのだ。 


 買い物を終えたレクト達は新しい装備のお披露目のための狩りには行かず、そのまま拠点にしている宿の『夜に哭く風亭』へと帰って来ていた。

「あらレクトなかなか立派な装備じゃない」

 丁度客が立ち去ったテーブルをかたずけていたレジーが新しい装備に身に包んだレクトを見て感嘆する。

「ありがとうございます」

 新米ハンターを指導してくれるレジーに褒められてレクトは照れくささと誇らしさの入り交じった顔になる。

「レジーさん聞いてよレクトの剣と鎧ってば凄いんだよ!」

 レクトについて行ってことの成り行きを見ていたアリエスが、レクトよりも興奮した様子でレジーに事の次第を報告する。

「レクトの剣と鎧がアーティファクト化したんだよ!」

「まあ!おめでとうレクト君」

 そのことを聞いたレジーはレクトの元に訪れた幸運を我が事のように喜んだ。

 カウンターでグラスを磨いていたフラルも絶叫するような祝福の言葉を聞いて、目を見開いた驚きの表情をしてレクトのほうを凝視していた。

「アーティファクト化なんて滅多にないことだからお祝いしなくちゃね!」

「そうね。今夜は御馳走にしようかしら!」

「待ってくれないか!」

 なし崩し的に大宴会が開かれそうになった状況に対してレクトは冷水を浴びせるかのように止めに入った。

「できればオレの装備がアーティファクト化したことはあまり周りの言いふらさないでほしい」

「どうして?めでたいことじゃない」

 滅多におきない奇跡が起きたことを祝福するのはさも当然と思っていたアリエスは、なぜレクトが冷や水を浴びせるようなことをするのか理解出来なかった。

「この前のブルトンとかいう奴のよなことがおきないようにするためか?」

 レクト以外で冷静に物事を考えることができたケルトが確認するように聞いて来た。

「そうだ。オレのような木札のハンターが本来買えないはずのアーティファクトを持っているとしれば、この前のように因縁をつけられるかもしれないからな」

 本来ハンター協会提携の店ではハンターの実力を示すペンダントの材質で売ることができる装備や消耗品に制限を加えていた。

 これは上質な装備や消耗品は実力のあるハンターが持ってこそ意味があるというハンター協会の意向からくるものだ。

 初心者がいい装備を身に着けただけで強くなれるはずがないと思っているので、本来ならレクトはアーティファクト化した装備を購入することができないのだが、これには一つだけ例外がある。それは自身が用意した素材から作られた物がアーティファクト化したなら問題なく購入できるというものであった。

 なぜならアーティファクト化するほどの素材を用意することができるということは、少なくとも素材の元となった対象を本人は狩るだけの能力があるということになるはずだ。

 ならば今のランクが例え木札であっても将来的には鋼札かそれ以上のハンターになる可能性を本人は持ち合わせているということになるのだ。

 しかし世の中にはそのように思うことが出来る人間ばかりではない。

 ランクが低いにもかかわらずいい装備をしている人間は何かインチキをして手に入れたに違いないと思うかもしれないのだ。

 例えば金持ちが金にあかせていい素材を仕入れたとか、強いハンターの獲物を横取りしたといったぐあいに。

 実際レクトが装備している武具の素材は元はと言えばポップが倒したアマルグマのものだ。

 漁父の利を得たと責められても文句は言えないし、入出経路を知れば言いがかりやこじつけとしか言いようが無い理由で強奪しようとしてくる人間も出てくるだろう。

 もちろんそのような輩が現れたらレクトは全員返り討ちにするつもりだが、進んで厄介事を引き寄せようとは思っていないので装備がアーティファクト化したことは秘密にしておきたかった。


「そうね。そのほうが懸命かもしれないわね」

「え〜!そんなのつまらない」

 レクトの考えを聞き、レジーは素直に賛同し、アリエスは不服をもらす。

 この世界の人間の持つ自分の天恵を自慢したがる気質から言えば、アリエスが仲間の装備がアーティファクト化したことを誇らしく自慢しようとするのは当然のことかもしれないが、今後のことを考えるとレクトとしてはそれは控えて欲しかった。

「だめよアリエス。パーティーを組んだからには仲間の考えも尊重出来るようにならなきゃ。それがリーダーならなおさらよ」

 レクト、アリエス、ケルトの三人は現在パーティーを組んで狩りをしている。

 パーティー名はまだ決めてないが、パーティーを結成すことが決まって真っ先にアリエスがリーダーになることを立候補してきたのである。

 その時元気よく挙手をしながら自分がリーダーになることを訴え続けるアリエスをレクトとケルトの二人は反対することもなく微笑ましい気分で了承したのだった。


 ブオオオオ


 レクト達が和やかな会話をしているとどこからともなく重圧感のある角笛の音が響き渡った。

 レクト達新米ハンターの三人は何事かと訝しげな顔をして見合わせるが、ベテランハンターのレジーは何事かを察したかのようにエプロンを外して宿の奥へと駆け込んで行く。

「何事ですか!?」

 しばらくして完全武装して戻ってきたレジーにレクトが何がおこったのかを尋ねる。

「巨獣が現れたわ!」

 緊張感と気迫のある表情でそう答えると脇目も振らずに宿から出て行く。

「あなたたちはまだ木札なんだからそこにいなさい!」

 もちろん去り際について来ないように釘を刺しておくのは忘れなかった。

「巨獣か。噂には聞いていたが出会う機会がついにおとずれたか」

「よっしゃ!腕がなるぜ!」

 去り際のレジーの注意などどこ吹く風と行ったばかりにケルトとアリエスは戦いに赴く準備をはじめている。

「二人とも行く気か?」

 血気盛んなアリエスはともかく、一歩引いた冷めた雰囲気を持つケルトまでもが戦いに行こうとしているのを意外そうに思いながらもレクトは尋ねる。

「巨獣が怖くてハンターができるか!」

「さすがに戦いに挑もうとは思わないけど後学のためにも巨獣は見てみたいと思っているよ」

 こちらの問いかけにアリエスは勝ち気で男勝りな答えを返し、ケルトは知的好奇心を満たしたいという思いがある返事をする。

「レクトはどうする?」

「オレも興味があるから付き合うぞ」

 今度は手にしたトンファーを弄ぶようにクルクルと回しながらアリエスが聞いてくる。

 それに対する答えはケルト同様好奇心的な理由でついて行くことにした。

「おぬしら…」

「大丈夫です。戦闘には参加しません」

「えー!見ているだけなんてつまらないよ!」

 それを見かねたフラルが引き止めようとするが、そこはケルトがうまく言い訳してから有無も言わせずに宿を飛び出して行った。


 巨獣。それはセルバの街に月に一回あるかないかという頻度で襲ってくる大型のモンスターのことだ。

 通常のモンスターが巨大化したものがどこからともなく現れ、セルバの街を襲撃して来るのだ。

 この巨獣は必ず街の北東を襲撃してくる。なぜ北東なのか、その理由はそこにモンスターが欲してやまぬ最上の餌があるからだ。


 ズガーン


 強固な外壁に大質量の物体が激突する音が響き渡る。

 全体中を傾けた渾身の体当たりをぶちかましたのは、巨大な鹿のモンスタースパイクディアであった。

 通常のスパイクディアが普通の鹿より一回り大きいくらいのに対して、このスパイクディアは優に十デュメルは超えていた。

 その巨獣のスパイクディアは北東に突き出た小さな半円の外壁に向けて何度も突進していた。

 頭の角による猛烈な突進攻撃をくらいないがら外壁はよくもっていた。

 しかしいくら外壁が頑丈でも守ってばかりではいずれ外壁は破壊され崩れさるかもしれない。

 攻めに転じて巨獣化したスパイクディアを倒さなければセルバの街は陥落して蹂躙されるだろう。

 そうさせないためにも街の外壁の上には多くのハンター達が集まって攻勢に転じようとしていた。


「オレの【火球】をくらえ!」

「突進がもう一度来るぞ!」

「【封印】のくそったれはどこ行きやがった!」

「あいつなら三日前から指名でいないぞ!」

「クソ!役立たずが!」


 外壁の上にいるハンター達が怒号を飛ばし合いながら天恵を使った攻撃をしかけていく。

 火球、氷槍、風刃といった攻撃が何発も命中するが、その巨体ゆえにびくともせずに再度体当たりをぶちかましてくる。

 外壁上にいる者達が再び襲い来る体当たりの衝撃に備えて身構えるが来るはずの衝撃は一向に訪れることはなかった。

 どうしたことかと身構えていたハンターの一人が外の様子をうかがうと、巨獣は青白い光に包まれて、その身を凍り付かせていたのだ。

「待たせたな!」

 天恵を使ってスパイクディアを凍り付かせた男が颯爽と現れてそう叫ぶ。

「これでとどめだ!」

 それに続いて現れた男が裂帛の気合いをこめて叫び、天恵を発動させるとスパイクディアの足下に渦巻く炎が現れる。

 やがてそれはスパイクディアの体長以上の円となったとき、その身を包む炎柱となってスパイクディアの体をつつんで焼き尽くしていく。

 体を凍り付かせて動けなくなった後に強烈な炎の攻撃を受けたスパイクディアは見事炭化した彫像となって崩れ去ってしまった。

 あっけなく倒された巨獣の姿を見たハンター達は、勝利を獲得した二人のハンターに惜しみない賞賛をおくっていた。

 しかし、全てのハンターが彼らを絶賛したわけではなく中には折角の素材が全てダメになっていることに嘆いているものもいた。


 レクト達が外壁の近くにたどり着いた時には全てが終わった後で、すでに後片付けに入っている所だった。

 そうとは知らずに全体的に周りがまったりしはじめていることを訝しげに思っていると背後から声をかけられた。

「あなた達きちゃいけないと言ったのに来ちゃったの!?」

 そこには来ない用に言い含めていた三人が来ていることに驚きと呆れの色をした顔のレジーが立っていた。

「どうしても巨獣というものを見てみたかったんです」

「ランクが上がれば嫌でも戦うことになるから焦る必要なんてないのに?」

「私は戦ってみたかった!」

 春が訪れた後から冬が訪れるまでの間におこる巨獣の襲来は、セルバの街にとっては半ば風物詩となっており、その撃退は鉄札以上のハンターにとっては義務となっていた。

 そのためかセルバの街では鉄札になっただけでなく、巨獣襲来クエストに参加することができて初めて一人前のハンターとみなされる風潮があった。


 巨獣との戦いを体験できなかったことに不満をつのらせているアリエスをケルトが宥めていると、突然大きな喧騒がおこって人だかりができた。

 何事かと思いレクト達もそちらのほうへと目を向けると金髪碧眼の美貌の青年と黒髪に黒い瞳の偉丈夫の二人組の男性が外壁から降りてきた所だった。

「レジーさん。あの二人は?」

「今日一番の功労者よ」

 黄色い歓声に手を振って応える二人組を見て、何故そこまで大騒ぎしているのかわからないのでレクトはレジーに尋ねてみた。

 そのことについてレジーはブルトンの時のような嫌悪感を持たず、むしろ高い好感度を持って説明してくれた。

 彼ら二人は『双頭の鷲』という名前でパーティーを組む凄腕のハンターだった。

 名前の通り今まで二人だけであらゆる強敵を倒して来た。

 二人組の内、金髪の好青年は【凍結】のファルカスといい、どんな強靭な体を持つ相手でも凍り付かせて動けなくする天恵を使いこなしていた。

 もう一人の黒髪のたくましい男は【火炎柱】のダルクスといい、どんな巨体も炎の柱に封じ込めたちまちの内に燃えカスにしてしまうという恐ろしい天恵の持ち主だった。

『双頭の鷲』はファルカスが【凍結】を使って動きを止めている隙にダルクスが【火炎柱】止めを刺すというコンビネーションで様々なモンスターを倒して来た。

 その代わりダメにしてきた素材も多かったが。

 それでも好感の持てる人柄をしているため街の人間に大いに慕われ、セルバの街の筆頭ハンターとして人気者になっていた。

 そんな説明をレジーがしている間に『双頭の鷲』の二人組は街の中の人混みへと姿を消していった。


 街で人気の英雄がいなくなった後、レクトは多くのハンターが決死の攻防を行っていたほうへと目を向ける。

「あの壁の向こうに魔泉があるんですね」

「ええ、そうよ」

 レクトがつぶやきをもらすように尋ねた魔泉とは、セルバの街の北東部に突き出て作られた外壁にある小さな池のことであった。

 セルバの街は北東に突き出た外壁のおかげで遠くから見ると亀のように見える街だ。

 その突き出た外壁の中に十デュメル程度の水銀のような色をした池があり、これが魔泉と呼ばれている。

 そして巨獣が真っ直ぐセルバの街を狙い、ハンター達が必死の攻防戦をする理由はこの魔泉にあった。

 魔泉とは伝説の魔王が英雄達に敗れて大地に溶け込んだ後に、魔王の瘴気が湧き出した物とされている。

 それが証拠に魔泉を飲んだ人間はたちまち毒に侵されのたうち回りながら死んでいき、モンスターが飲めば無限の活力を与えた。

 そして人々がこの地を開墾して街を作ろうとした時も、泉を占有する四つ腕のクマの巨獣と激しい死闘を繰り広げたと言われている。

 そして街が出来た後も魔泉を狙ってどこからか来襲する巨獣と戦い続けている。

 そのような街に災いしかもたらさないように思える魔泉を何故街の人々は残して守り続けるのか?それはこの魔泉がセルバの街にとって貴重な資源だからだ。

 触れただけで肌が焼けただれるような猛毒を持つ魔泉だが、それが適用されるのは人間のみとなっている。

 動物が飲めばモンスター化し、生物ではない武具や道具をつけ込むと異能を宿したアーティファクトになるのだ。

 そう人々が魔泉を管理保管している理由は手軽にアーティファクトを作ることができるからだ。

 そしてこの魔泉は地上の平原に出来ることなど滅多に無く、大抵は危険で異界化したダンジョンの奥深くや鬱蒼と茂った森の奥深く、渓谷の深い谷底などにあるものなのだ。

 そのためセルバの街にある魔泉はとても貴重なものとなっているのだ。


 他の条件と比べてアーティファクトが作りやすい魔泉だが、無制限にアーティファクトが作れるというものではない。

 まずカラスの行水のようにサッとつけただけでアーティファクト化するものではない。

 最低でも十日以上つけ込んでやっと効果が現れる。

 すでにアーティファクト化している物をつけ込んでも新しい効果はつかない。

 つけ込みに失敗してアーティファクト化しなかった物を再びつけ込んでも絶対アーティファクト化することはない。

 これらの制約をクリアして【◯◯+10】という効果のアーティファクトが生まれる。

 効果の◯◯についてはつけ込む素材によって違う物となっている。

 武器につければ【攻撃+10】。防具なら【防御+10】。装飾品ならそのどちらか。

 袋やカバンの類いにつければ【容量+10】となることがわかった。

 レジーが身に着けていた容量拡大のカバンは魔泉につけ込んで作られたものだ。

 また魔泉の効果は魔泉のある地形によって大いに異なることがわかっている。

 活動盛んな火山にあれば【火属性】。氷雪に覆われた場所なら【氷属性】というふうになることがわかっいる。

 ただセルバの街で作られるアーティファクトがなぜ【◯◯+10】となるのかは理由は解っていない。


「オレも早く容量拡大のカバンが欲しいな」

 レクトが新人ハンターが最初に目標にすることをつぶやく。

 隣にいるアリエスとケルトも感慨深げにうなずいている。

「あなた達なら見込みがあるからそれくらい大丈夫よ」

「ほんとうですか!」

 レジーからお墨付きをもらえてアリエスが一際大きくはしゃいで喜んだ。

「そろそろ帰りましょう。もうすぐお腹をすかせたハンターが店に駆け込んでくるはずだから」

 そう言ってレジーはレクト達三人を誘って我が家となる宿へと帰っていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ