第54話 スキー場の昼ご飯
スキーセンターへ戻ると、外とは違って暖かい空気に包まれた。拓也とリカはスキー板と、両手に持っていた細いポールを邪魔にならないところへ置き、昼食を取れるスペースへ向かう。
少しして、直樹と美咲も戻ってきた。
「お腹すいた!」
リカがすぐに美咲のところへ駆けていく。
「ずっと遊んでたもんね」
美咲が笑いながら答え、それから拓也を見る。
「拓也くん、リカと遊んでくれてありがとう」
「俺よりノエルがずっと遊んでたよ。それならノエルに言ってあげて」
拓也が横を見ると、ノエルも美咲の方へ顔を向けた。
「ノエルもありがとうね。リカ、すごく楽しそうだった」
「僕も楽しかったよ!」
ノエルの尻尾が大きく動く。
「リカと遊ぶの楽しい!」
「リカも!」
すぐ隣から声が返ってきて、美咲が嬉しそうに笑った。
昼食はスキーセンターの中にあるフードコートで取ることになった。入口の上には料理の写真が並び、カレーやラーメン、丼ものなどが大きく表示されている。
「いっぱいある!」
ノエルがメニューを見上げる。
「何食べる?」
「これ!」
最初に見たのはカツカレーだった。
「あとこれ!」
今度は隣のラーメンを見ている。
「それも?」
「うん! これも食べたい!」
さらに唐揚げ丼を見つけ、その横にあったポテトにも目を止める。
「これも!」
「まだ増えるのか」
拓也が言うと、直樹が横からメニューとノエルを見比べた。
「それ、全部食うの?」
「食べるよ!」
迷いのない返事だった。
結局、ノエルはカツカレー、ラーメン、唐揚げ丼、ポテト。拓也はカツカレー、直樹はラーメン、美咲はうどん、リカはカレーを頼んだ。
注文した料理を受け取ると、拓也は自分の分とノエルの料理を何度かに分けて席まで運んだ。
最後のトレーを置くと、ノエルの前だけ一気に賑やかになる。
「並ぶと余計すごいな」
直樹が料理の数を見て笑う。
「いっぱい!」
ノエルは嬉しそうに答えた。
「ノエル、そんなに食べるの!?」
リカも目を丸くしている。
「食べるよ!」
ノエルがリカの前の皿を見る。
「リカはカレーだけ?」
「リカだっていっぱい食べられるもん!」
「まず自分のカレー食べてからね」
美咲に言われ、リカは少しだけ口を尖らせた。
「食べるもん」
拓也はノエルの料理を食べやすい位置へ寄せ、自分のカツカレーも手元へ置く。
「じゃあ食うか」
「いただきます!」
ノエルは最初にカツカレーへ口をつけた。少し食べたところで、すぐに顔を上げる。
「これおいしい!」
「カツ?」
「うん! カレーも!」
そのまま何口か食べると、今度はラーメンへ移る。熱かったのか一度顔を離したが、少し冷ましてからまた食べ始めた。
拓也が自分のカレーを食べている間にも、ノエルの料理は目に見えて減っていく。
「ほんとに食うんだな……」
直樹が半分ほど残った自分のラーメンと、ノエルの前を交互に見る。
「いつもこんな感じだよ」
拓也はそれだけ答えて、またカレーを食べる。
向かいでは、リカが自分のカレーを食べながらノエルのポテトを見ていた。
「それおいしい?」
「おいしいよ!」
「リカも食べたい」
「いいよ!」
ノエルがすぐに答える。
拓也がポテトの入った紙カップをリカの方へ少し寄せると、リカは一本取った。
「ありがと!」
「うん!」
リカが食べるのを見て、ノエルもまた一本食べる。
「おいしい!」
「おいしい!」
声が重なり、直樹と美咲が顔を見合わせて笑った。
食事を続けているうちに、リカのカレーが先になくなった。
「食べた!」
「ちゃんと食べたね」
「リカもいっぱい食べた!」
そう言ってノエルを見るが、ノエルの前では唐揚げ丼までほとんど空になっている。
「まだ食べてる……」
「もうちょっと!」
残っていたポテトも食べ終えると、ノエルは満足そうに顔を上げた。
美咲が空になった皿を見てから、少し笑う。
「そんなに食べて、午後からちゃんと動けるの?」
「動けるよ!」
「ほんとか?」
直樹も笑いながら聞く。
「滑れるよ! 午後も滑る!」
ノエルが答えると、リカもすぐに身を乗り出した。
「リカも滑る!」
「まだ勝負するの?」
美咲が聞くと、リカは当然のように頷く。
「する! 午後はリカが先に下まで行く!」
「僕の方が速いよ!」
「リカの方が速いもん!」
昼ご飯を食べ終えたばかりなのに、もう次に滑る話で盛り上がっている。
直樹はそんなリカとノエルを見ながら、少し笑った。
「なんかもう、親友みたいだな」
美咲も頷く。
拓也は残っていた水を飲みながら、まだ言い合っているリカとノエルを眺めた。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
面白かった、続きが気になると思っていただけましたら、ブックマークや☆評価、感想で応援していただけると励みになります!




