第53話 雪遊び
それからもう一度リフトに乗り、今度はさっきより少し長く滑った。ノエルはすっかり氷の上を滑ることに慣れ、リカと並んだり先へ出たりしながら斜面を降りていく。
下まで戻ってきたところで、リカが板を外しながら雪の積もった場所へ目を向けた。
「ちょっと雪で遊ぼ!」
「遊ぶ!」
ノエルはすぐにそちらへ走っていった。拓也も板を外して少し離れたところへ置いていると、リカはもう雪を丸めている。
「ノエル!」
振り向いたノエルへ雪玉が飛ぶ。
「わっ!」
ノエルは横へぴょんと跳んで避けた。
「ノエル速すぎ!」
今度はノエルの足元の雪がふわっと持ち上がり、いくつかの雪玉になってリカへ飛んでいく。
「ずるい! 魔法使ってる!」
「なんで?」
「いっぱい一気に飛ばしてるもん!」
リカは笑いながら逃げ、すぐに振り返って投げ返した。雪玉がノエルの背中に当たる。
「やった!」
「あっ!」
ノエルが振り返ると、その周りにさっきより多くの雪玉が浮かんだ。
「ちょっと! 増えてる!」
リカが逃げ、ノエルが追いかける。雪玉が飛び交うたびに、楽しそうな声が響いた。
そのうち一つが、近くで見ていた拓也の胸に当たった。
「タクヤにも当たった!」
ノエルが嬉しそうに言う横で、リカもすぐに次を投げる。
「俺も混ざれってことか?」
拓也は足元の雪を丸め、そのままリカへ投げ返した。
「きゃっ!」
ウェアの脇腹に当たり、リカが笑いながら逃げる。
「タクヤおじちゃん大人げない!」
拓也は答える代わりにもう一つ雪玉を作る。
「また投げる!」
今度はノエルが横から雪を飛ばしてきた。
そこからは拓也も混ざって入り乱れた。リカとノエルが拓也を狙ったかと思えば、拓也もすぐに投げ返し、いつの間にか誰が誰を狙っているのか分からなくなる。
しばらくして、リカが雪の上へ座り込んだ。
「疲れた!」
「楽しかった!」
ノエルもその横で尻尾を大きく動かしている。
少し休んだあと、リカが周りの雪を見回した。
「あ、雪だるま作ろ!」
「作る!」
「一緒に作るって言ったもんね!」
「うん!」
それぞれ近くの雪を集め始めた。
「リカ、かわいいの作る!」
「僕でっかいの!」
「どれくらい?」
「すっごいでっかいの!」
ノエルは嬉しそうに答えると、自分の前の雪を集め始めた。
リカは小さめの雪玉を二つ作って重ね、丁寧に形を整えていく。拓也もその隣で雪だるまを作り、最後に小さな石を並べて顔をつけた。
「できた」
リカが拓也の雪だるまを見る。
「……変」
「どこが?」
「顔!」
ノエルも拓也の雪だるまの前まで来て、顔を見る。
「ほんとだ。目ずれてる!」
拓也も正面から見直す。片方の目が少し高く、口もわずかに斜めになっていた。
「そんな変か?」
「変!」
リカとノエルが笑う。
その横では、リカの雪だるまもきれいに形になっていた。
「できた!」
「かわいい!」
「でしょ!」
ノエルはそれを見たあと、自分の雪だるまへ戻る。
足元の雪がゆっくり動き始めた。
最初は丸い塊だったものが、周りの雪を巻き込みながらどんどん大きくなっていく。ノエルより大きくなり、リカより大きくなってもまだ止まらない。
「でっか!」
「もっと!」
さらに雪が集まり、大きな胴体ができる。その上へ別の雪の塊が浮かび上がり、ゆっくりと重なった。
みんなで見上げるほどの大きさになると、ノエルは表面の雪を細かく動かし始めた。顔に目や鼻、口ができ、身体の横には雪だけで作られた腕まで伸びていく。
「すごい!」
「腕もある!」
リカが雪だるまの周りを見ながら声を上げる。
「ノエル上手!」
「ほんと?」
「うん!」
拓也も少し離れたところから見上げた。
「よくこんな細かく作れるな」
巨大な雪だるまが形になるにつれて、近くを通る人たちも何人か足を止めていた。
「でかっ」
通りかかった子どもが見上げる。
別の家族も足を止め、出来上がっていく雪だるまを眺めていた。
ノエルは最後に顔の形を少し整える。
「できた!」
満足そうに尻尾を振るノエルの前には、拓也よりずっと大きいのに、顔も腕もきれいに作られた雪だるまが立っていた。
「でっかい!」
ノエル自身も少し離れて見上げる。
しばらく眺めていたかと思うと、また足元の雪が動き始めた。
「まだ作るの?」
「うん!」
今度は三つの雪の塊が横に並び、それぞれ少しずつ形を変えていく。
最初に形が見えてきた一つには、四本の足と耳、それに尻尾がついた。
「あ、ノエル!」
「僕!」
その隣では、人の形をした雪が少しずつ整っていく。
「これリカ!?」
「うん!」
もう一つにも頭と身体、腕や足ができていく。
「こっちタクヤ!」
「俺もいるな」
三つの雪像が並んで立っていた。ノエルの雪像は四本足の姿や耳、尻尾まで分かり、リカと拓也の雪像も顔や髪の形が細かく作られている。
「すごい! みんないる!」
リカが自分の雪像の横へ並ぶ。
「似てる?」
「似てる!」
ノエルも自分の雪像の横へ移動し、同じ向きに立った。
「僕も!」
「ほんとだ!」
拓也はリカとノエルを見て少し笑った。
巨大な雪だるまと三つの雪像が並ぶようになると、さっきよりも周りで足を止める人が増えていた。
「あれ、みんなの作ってる!」
「すごいね」
そんな声が聞こえてくる。
ノエルは並んだ雪像を見回し、満足そうに尻尾を振った。
「いっぱい作った!」
「楽しかった!」
リカも嬉しそうに雪像を眺める。
「せっかくだし、写真撮るか」
「撮りたい!」
「僕も!」
拓也はスマートフォンを取り出し、巨大な雪だるまと三つの雪像が一緒に入るところまで少し下がった。リカはノエルの隣へ走っていく。
「ノエル、こっち!」
「うん!」
リカとノエルが雪像の前に並ぶ。拓也がスマートフォンを向けると、リカは笑い、ノエルも嬉しそうに顔を上げた。
何枚か撮って画面を見せると、リカがすぐに手を伸ばした。
「タクヤおじちゃんも撮る!」
拓也はそのままスマートフォンを渡した。
「ノエル、タクヤおじちゃんの隣!」
「分かった!」
今度は拓也とノエルが雪像の前に並ぶ。リカは少し離れ、両手でスマートフォンを構えた。
「撮るよ!」
リカが画面を押す。
「撮れた!」
戻ってきたスマートフォンには、ノエルと拓也、その後ろに巨大な雪だるまと三つの雪像まで一緒に写っていた。
しばらく写真を見ていると、リカがお腹のあたりを押さえた。
「お腹すいた」
「僕も!」
拓也も時計を見る。
「じゃあそろそろ昼にするか」
「食べる!」
「リカも!」
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