↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
52/58

第52話 魔法でスキー?

 リフトが上へ進むにつれて、下に見える景色はどんどん広がっていった。


「すごい! あんな下にいる!」


 ノエルは拓也の膝の上からゲレンデを覗き込み、滑っている人を目で追っている。


「もうすぐ降りるぞ」


「ここで降りるの?」


「そう」


 降り場が近づくと、拓也はノエルを抱え直した。椅子が足元の雪へ近づき、タイミングを合わせて立ち上がる。そのままノエルを抱えたまま少し前へ進み、邪魔にならないところまで出てから雪の上へ降ろした。


 少し遅れて、直樹と美咲も上がってくる。


「高い!」


 ノエルはすぐに斜面の下を見た。


 さっきまでいた場所はかなり遠く、白いゲレンデが山の下まで続いている。その上を滑っている人たちも、ここから見ると小さく見えた。


「ここから下まで行くの?」


「行くよ!」


 リカが嬉しそうに答える。


「リカ、先行く!」


「転ぶなよ」


「転ばないもん!」


 板を雪の上へ向けると、リカはそのまま滑り出した。


 最初はゆっくりだったが、すぐに速度がつく。左右へ曲がりながら斜面を降りていく。


「僕も行く!」


 ノエルもそのあとを追って走り出した。


 雪を蹴るたびに白い粉が舞う。四本の足で斜面を駆け下り、少し先を滑るリカとの距離をすぐに縮めていく。


 後ろを振り返ったリカが目を丸くした。


「ノエルもう来た!」


「僕速いよ!」


「でもリカも負けない!」


 リカが前を向き直り、また少し速度を上げる。


 ノエルも楽しそうにその横へ並びかけたが、ふとリカの足元を見た。


 板は雪の上を滑るだけで、ほとんど足を動かしていない。


「それやっぱり楽しそう!」


「スキー?」


「うん!」


 ノエルは走りながら少し考えた。


「じゃあ僕も滑る!」


「どうやって?」


 次の瞬間、ノエルの足元の雪が白く光った。


 踏み出した先から、雪の表面が薄く凍っていく。


「え?」


 リカが横を見る。


 ノエルが一度強く雪を蹴ると、その身体が氷の上をすっと前へ滑った。


「わっ!」


 思ったより滑ったらしく、ノエルの身体が少し横へ流れる。


「ノエル、大丈夫!?」


「大丈夫!」


 前脚を広げて体勢を整えると、ノエルは一度止まった。


 自分の足元にできた薄い氷を見て、すぐに顔を上げる。


「もう一回!」


 今度は進む方向へ少し長く氷を作る。


 雪を蹴る。


 白い身体が、その上を一気に滑っていった。


「できた!」


「すごい!」


 リカが声を上げる。


 ノエルは嬉しそうに尻尾を上げたまま、さらに前へ氷を伸ばしていく。


 最初はまっすぐだった道が、少しずつ斜面に合わせて曲がり始める。ノエルも身体を傾けながら、その上を滑っていった。


「リカ、見て!」


「見てる!」


「僕も滑ってる!」


「それスキーじゃないけど!」


「でも滑ってるよ!」


 言いながら、ノエルがまた速度を上げる。


「速い!」


 リカも負けじと追いかけた。


 少し後ろを滑っていた拓也は、その様子を見ながら思わず笑う。


「それで滑れてんのすごいな」


 ノエルは聞こえていないのか、氷の上を滑ることに夢中だった。


 進む先へ薄い氷を作り、そこを滑る。曲がりたいときは氷の道そのものを少し曲げる。何度か繰り返すうちに、最初の危なっかしさはほとんどなくなっていた。


「タクヤ!」


 少し先からノエルが振り返る。


「僕できた!」


「見てるよ」


「速いでしょ!」


「速い速い」


 拓也が答えた、その直後だった。


 前を見直すのが少し遅れた。


「あ」


 板の片方が雪を取られ、身体が傾く。


 立て直そうとしたが間に合わず、そのまま横へ倒れ込んだ。


「タクヤ転んだ!」


 ノエルの声がすぐに飛んでくる。


 リカも少し先で止まり、振り返った。


「ほんとに転んだ!」


「そんな嬉しそうに言うなよ」


 拓也が雪の上から身体を起こす。


 ノエルは氷を途切れさせて拓也のところまで戻ってきた。


「大丈夫?」


「大丈夫。ちょっと油断しただけ」


「ふふっ」


「笑ってるだろ」


「ちょっとだけ!」


 リカも戻ってきて、笑いながら拓也を見る。


「タクヤおじちゃん、転ばないって言ってたのに!」


「一回くらいは転ぶよ」


「リカ見た!」


「僕も見た!」


「はいはい」


 拓也が立ち上がると、ノエルは満足したようにまた前を向いた。


「じゃあ行こう!」


「今度こそリカが先!」


「僕の方が速いよ!」


 二人はまた並んで斜面を降り始める。


 リカは板で雪を切りながら曲がり、ノエルはその横で薄い氷を作りながら滑る。途中で何度も前後が入れ替わり、そのたびに二人の声がゲレンデに響いた。


 やがて斜面の下まで降りると、ノエルは勢いを落としながら氷の道を消した。


「楽しかった!」


 そのまま振り返り、今降りてきた斜面を見上げる。


「もう一回やる!」


「リカも!」


 拓也が追いつくころには、二人はもう次のリフトの方を見ていた。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

面白かった、続きが気になると思っていただけましたら、ブックマークや☆評価、感想で応援していただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。