↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
31/58

第31話 昼ご飯

 海が見えてからしばらく走り、高速道路を降りる。道路の周りには低い建物が並び、少し進むたびに店の看板や観光客らしい人の姿が増えていった。


 拓也は港の近くにある駐車場へ車を入れた。


「着いたぞ」


「着いた!」


 ノエルは拓也がドアを開けるのを待って、すぐに車から降りた。


 駐車場の向こうには海が広がっている。道路を一本渡った先には店が並び、そのさらに向こうには何隻もの船が停まっていた。


 車の中から見ていた時よりも海がずっと近い。


 ノエルはその場で海を見たあと、今度は港の方へ顔を向けた。


「タクヤ、あれ動く?」


 ノエルが顔を向けた先には、白い船が一隻停まっている。


「船? 動くよ。あれで海の上走るんだよ」


「乗れるの?」


「乗れる船もあるけど、今日は乗らないかな」


 ノエルは少し船を見ていたが、近くを飛んでいった海鳥に気づいて顔を上げた。拓也も荷物を車に残し、必要なものだけ持って歩き始める。


 港沿いの道には観光客向けの店が並んでいた。魚や貝を売っている店もあれば、店先で魚を焼いているところもある。


 香ばしい匂いが流れてくると、ノエルの足が少し遅くなった。


「いい匂いする」


「腹減ってきたな。昼飯の店、もうちょっと先」


「もうお昼ご飯?」


「ちょっと早いけど、混む前に入った方がよさそうだしな」


 それを聞くと、ノエルはまた先へ歩き始めた。


 店先に並ぶ魚を覗いたり、港に停まっている船を見たりしながら通りを進む。岸壁のすぐ横まで来ると、下で海水が揺れているのが見えた。


 ノエルは端まで近づきすぎないところで足を止め、下を覗き込む。


「近い!」


「落ちるなよ」


「落ちないよ!」


 すぐ近くを小さな船が通り、船の後ろに白い波が広がった。ノエルは身体の向きを変えながら、それが遠ざかるまで目で追う。


 そこから少し歩くと、拓也が見覚えのある店を見つけた。


「あ、ここだ」


 旅行先を決めた日に、二人で写真を見ていた店だった。


 ノエルも入口の写真を覚えていたのか、すぐに拓也より前へ出る。


「ここ!」


「そう。昼ここで食おうって見てたところ」


「早く入ろう!」


 店の中は昼前でも何組か客が入っていた。二人は案内された席につき、拓也がメニューを開く。


 海鮮丼や刺身の定食、焼き魚、揚げ物まで写真付きで並んでいる。


 ノエルは最初に大きな海鮮丼を見た。


「これ食べる!」


「海鮮丼な」


 拓也が自分の分を探している間にも、ノエルは別のページを見ている。


「これも」


「焼き魚も?」


「うん。それとこれ!」


 今度は魚の揚げ物だった。


 拓也はメニューとノエルを交互に見る。


「結構あるぞ」


「食べられるよ!」


「まあ、ノエルなら食うか」


 結局、ノエルは海鮮丼と焼き魚、それから揚げ物を頼んだ。拓也も海鮮丼を一つ注文する。


 しばらくして料理が運ばれてくると、テーブルの上が一気に狭くなった。


 ノエルの前には、魚やイクラがたっぷり乗った丼。その横に焼き魚と、揚げたての魚が並んでいる。


「いっぱい来た!」


「ほとんどノエルが頼んだやつだけどな」


「どれから食べよう」


 ノエルは少し迷ってから、まず海鮮丼へ口をつけた。


「おいしい!」


 そのまま何口か食べ、今度は焼き魚へ移る。さらに揚げ物にも口をつけ、気に入ったものから順に食べていった。


 拓也も自分の海鮮丼を食べる。魚は新鮮で、家の近くで食べるものとはまた違う。


「うまいな、これ」


「こっちもおいしいよ!」


「それもあとで一個もらおうかな」


「いいよ!」


 二人で食べているうちに、あれだけ並んでいた料理が少しずつ減っていく。


 拓也が海鮮丼を食べ終える頃には、ノエルの丼もほとんど空だった。焼き魚も残っているのは骨だけで、揚げ物も最後の一つになっている。


「ほんとに全部食ったな」


「おいしかった!」


 最後の揚げ物を食べ終えると、二人は店を出た。


 外へ出ると、さっきより人が増えていた。港沿いの道を歩き、今度は店の並ぶ方ではなく海の近くへ向かう。


 少し先に腰を下ろせる場所があり、拓也はそこで一度座った。ノエルも隣で伏せ、目の前の海を見る。


 港から一隻の船がゆっくり動き出した。


 白い波を引いて遠ざかっていく船を、ノエルは見えなくなるまで追っていた。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

面白かった、続きが気になると思っていただけましたら、ブックマークや☆評価、感想で応援していただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。