胡散臭いんだもん!
ひとしきり笑ったシィベリ様。
私達に、ヒシっと向き合います。
思わず「ヒッ…」っと怯んでしまったのは、仕方ないと思うんです。
お兄様がすかさず前に出て、私を後ろに隠してくれました。
「怯えるなんて、ひどいなぁ、これから絵を描くのに、君達の顔を見ただけじゃないか」
「「だって、胡散臭いんだもん!」」
お兄様と声が揃ってしまいました。
「グフっ、胡散臭いって……的確!!」
今度はヒサギ様が肩を震わせています。
「ああぁ、この子達は、悪意に敏感よ?ずっと晒されてきたんだもの」
「セイラーちゃんもひどいなぁ。
悪意なんて、持ってないよ?絵を描く、観察対象だよ?」
「「セイラー…ちゃん?」」
「そう!セイラーちゃんをセイラーちゃんって呼んで良いのは僕だけだからね?」
「「失礼な、呼びませんよ」」
「アハッ、双子ってすごいね!声が揃うんだね!」
シィベリ様がグイグイ来ます。
私とお兄様はジリジリ下がります。
「お兄様、この人、コワイ」「うん、変態だね。小児愛好者なの?」「それならお兄様も危険ですわ!!」「どっちもいける小児愛好者は犯罪者だよ!王家はこれを野放しに?!」
「どっちもいける小児愛好者って、どこで覚えたそんな言葉?!」
私達の会話にシィベリ様が割り込み身を乗り出してきます。
お兄様が、私を抱きしめて隠してくれます。
お兄様、ちょっとイライラしてきましたね?
ウィンドカッター出そうですよ?
その瞬間、何かが横を通り抜けてった、と思ったら
「グフォッ」
シィベリ様が後ろに倒れました。
見ると、廊下から走って来たワンちゃんが、シィベリ様にタックルをかまし、鳩尾にクリティカルヒットしたようです。
「良くやった、駄犬!!そのまま一気に畳み掛けろ!!
ご褒美は、あとでディと褒めまくりだ!おやつもつける!!」
「ワン!!」
ワンちゃんはこちらを向いて右前足を上げ合図をすると、下敷きにしているシィベリ様に向き直り
「バフォ」
低い声で一声鳴くと、上げた右前足をおおきく振りかぶります。
「ストーーップ!!!」
夫人の大声と共に、部屋全体がキラキラと冷気に包まれます。
「みんな、頭を冷やして。
シィベリ、今回は貴方が悪いわね。悪意に敏感って教えたのに、面白がってわざと怖がらせたでしょう。
本気で怯えたから、お守り様が感じ取ってやってきちゃったじゃないの。
貴方、本来なら今頃死んでるわよ?
ってか、旦那サマ!!こういう時は助けに入るものよ!」
夫人は、大人しく壁に向かって正座している辺境伯様にも怒っています。
「す、すまん、足がしびれて動けない…」
「「「「えええーー」」」」
私とお兄様、夫人とヒサギ様の声が重なります。
イチイ嬢も、うつ伏せになり、ぴくぴくと足が震えています。
私達はみんな辺境伯親子に釘付けでした。
ワンちゃんだけが見ていました。
変態画家の口元が三日月を描いていることに。
「ふぅん、この犬がお守り様なんだ」
床に倒されたシィベリ様が起き上がりながら、のんびりした口調で聞きます。
ワンちゃんは、シィベリ様の上からは退きましたが、ウーウーと警戒音を発しています。
「うわー、嫌われちゃったねぇ」
ポリポリと頭をかきながらシィベリ様がつぶやきますが、ものスッゴク胡散臭いです。
「ワンちゃん、助けてくれてありがとう。こっちおいで」
「よし、駄犬、ディがもふもふを所望だ」
ワンちゃんは、パッとこっちを振り向き尻尾ブンブンでやって来ます。
「(よし、駄犬、あの変態からディを守るぞ!とりあえず、ディを隠せ!)」「(わふっ)」
私を真ん中に右からはお兄様が抱きしめ、左からはワンちゃんがぎゅうぎゅうとすり寄って来ます。
「そこの一人と一匹、ユーディリアちゃんが潰れちゃうわ。加減をしなさい、加減を。
ってか、今がデッサンチャンスじゃない、仕事しなさい、仕事を」
「ハイハイ、って、犬も?」
「当然!!」
「天使を挟む犬、尊い……」
「…は?なんかおかしな言葉が聞こえた気がする?」
「…イチイの事は気にしなくて良いわ。
ユーディリアちゃんとエミリオくんが何かする度に、見入っちゃって、戻って来なくなるのよ。
エミリオくんがサービスすると、鼻血も出るわ」
「サービスすると鼻血が出るって、話だけ聞くといかがわしいね!」
「「やっぱり、小児あ」」「そこの双子!違うからね?!
もう、なんなのコイツら。美術品みたいな顔して言うことえげつなくない?特に兄の方!!」
なんだよラスボスって、と、ぶつぶつ言ってますが、聞こえましたからね?
私達のこと透たんですね?鑑定師匠、グッジョブです。




