覚悟
その後は黙々とデッサンを続けるシィベリ様。
私達はその隣でお茶会です。
「イチイ、昨日も説明したけど、エミリオくんが貴女の唯一なんでしょう?
なら貴女がエミリオくんの隣に立てるくらい素敵なレディにならないと、エミリオくんの隣には、別な女の人が立つことになるわ。
貴族ってそういうものよ?
揚げ足とられるような人を隣に置いておけないのよ。
エミリオくんは優良物件よ。
早く貴女が成果を出して、エミリオくんの隣に立てる、と、エミリオくん自身に思ってもらわなくっちゃ、早々にその場所は取られるわよ?
どうする?
淑女教育をキチンとこなす?
エミリオくんを諦める?」
イチイ嬢は涙目です。
「一応、僕の婚約者という事なので、僕からも良いですか?」
「イチイ、いい?
見入るだけじゃなくて、話を理解出来るようにならないと、エミリオくんに迷惑をかけるだけよ。
これは最初の試練よ!」
「ハイ!!」
返事だけは良いのよ、返事だけは。と、夫人がつぶやいています。
「…では、良いですか?
僕達はちょっと特殊な家庭環境にいます。
なので、僕達双子はお互いに支え合って生きています。
すみません、取り繕っても仕方がないので、最初にキツイ事を言ってしまいます。
僕の一番は妹のユーディリアです。
だから、僕は本来、政略結婚を望んでいました。
義務さえ果たせば、お互い不干渉でいられると思ったからです。
ですが、貴女はセンバの直系だ。
政略結婚じゃなく、貴女は、僕、を望んでくれている。
でも多分、僕は、貴女が僕に向けてくれる熱量と同じだけのものを返せません。
それでも良いのですか?
良く考えて下さい。
貴女のご両親を見てください。
辺境伯様は暑苦しい「ん"ん"っ」失礼、情熱的な愛情を夫人に向けています。
夫人も、厳しくても、なんだかんだと同じ位の愛情を返しています。
辺境伯様の優先順位一位は、夫人でしょう。
夫人の優先順位一位は、家族でしょう。夫人の方が範囲が広いですね。
でも、多分、僕はそうは成れない。
ユーディリアに何かあったら、伴侶になる方よりユーディリアを優先します。
何か、が、どのくらいの何か、なのか、まだ分かりません。
今ならまだ間に合います、という言い方はセンバの直系に対して失礼なのかもしれません。
でも、貴女はまだ5歳だ。
これからいくらでも出会いはあるはずです。
貴女のその愛情を向けるに値する人が、同じだけ愛情を返してくれる人が、居ると思うんです。
センバである貴女の深い愛情は、僕にはもったいない」
お兄様は、くしゃっと笑った。
「オイオイオイオイ」
シィベリ様のつぶやきが聞こえます。
辺境伯様とヒサギ様は絶句してお兄様を凝視します。
夫人はイチイ嬢を抱きしめます。
イチイ嬢は、お兄様から目を反らさずに、ボロボロと涙を流しています。
お兄様の一番が私でした。嬉しすぎます。
でも、
私は、お兄様の幸せの足枷なのでしょうか?
ワンちゃんを撫でながらそんなことを思ってしまいました。
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