幕間 お優しいお貴族様
シュロス視点
「キミ、それ、大丈夫なの?」
「うぎゃぁあ!!!!!」
何の気配もなく、いきなり背後からかけられた声に、思いっきり叫んで振り返り、バランスを崩し、花壇に植えてた植物を折ってしまった。
「ああ、ごめんなさい」
そう謝られた瞬間、ギュルルルルるるるぅ、腹の虫が盛大に鳴った。
「うん?じゃぁ、お詫びにこれをあげる」
そう言ってサンドイッチ弁当を差し出すご令嬢。
サンドイッチ弁当とそのご令嬢の顔を交互に見つめる自分。
ギュルルルルるるるぅ。
もう一度鳴る自分の腹。
なんでこうなった?
花壇の縁に腰かけて、サンドイッチ弁当を頬張る自分。
その隣に座るご令嬢。制服の質から、お貴族様だとわかる。
「そんな人が、自分みたいな平民に弁当渡して、隣に、しかも花壇の縁に座って良いのか?大丈夫か?自分、後で消されない?!」
「いや、食ってるし」
「主語ないな、この人。お貴族様として大丈夫なのかな?」
「声出てるし?」
「うぎゃぁあ!もももも申し訳ございません!!!」
スライディング土下座、一択でしょう!
「大丈夫、ちゃんと食え。
あと、一応貴族ではあるが、センバの騎士爵。ある人物にお仕えしてる」
「はい、ありがとうございます、ありがたく頂きます」
「ん。で、質問の答えは?」
「し、質問?されましたっけ?」
「最初に聞いただろう?ソレ、大丈夫なのか?って」
「ソレ、とは?」
「ん」
そう言って、指差すのは花壇の植物達。
「ええーっと、これが何か、わかるので?」「ん」
「大丈夫、とは?」「ん?」
2人で首をかしげあってしまった。
「自分的には何が聞きたいのかサッパリわからないし、お貴族様的には何故わからないのか、わからないのだろうけど、主語がないから伝わらないからね?!」
「だから声出てる」
「もももも申し訳ございません!!!」
「ん。キミはソレが何か、分かって植えてる?頼まれたの?」
「腹が減って、自分で植えました!でも自分、植えてもいないのに生えてくるのがコレらなんです!
土や場所で生えてくるモノが変わりますが、全てコレらになります。
だから、自分で育てた物だし自分なら食えるのかと思って、試してみようと」
「やめとけ。死ぬぞ?」
「処分します!!!」「ん」
「でも、腹減って死ぬか、毒で死ぬなら、毒の方が苦しいの短い?」
「後遺症込みで生き残る可能性も」
「ソッッコーで処分します!!!」「ん」
ギュルルルルるるるぅ。
「…足りないの?」
「…久しぶりに良いもの食ったんで、胃が盛大に動き始めたのかと」
「私の主人に会うなら、もっと食わせてやる」
「喜んで!!!」
「…キミ、危機管理足りないよ?」
「大丈夫です!これでも人をみる目はあります!
だって、本当に自分を利用しようとする人なら
さわやかーに〝スゴいね!〞って来るか、始めっから〝寄越せ〞と来るか。
お貴族様なら大体その2択で
〝キミ、大丈夫?〞なんて声掛けしません。
それに、アナタ様「セリ」え?「アナタ様じゃなく、セリ」セリ様「さん、でいい」あ、ハイ。
セリさんはこんなに言葉が足りないのに「あぁん?」ヒュッ
セリさんが、お仕えしている方ならお優しい方だと思いますので!!」
「ユーディリア様はお優しい。
エミリオ様は素晴らしい。覚えとけ」
「ハイッ!!!
って、エミリオ様?
殿下に嫌われてる食堂フィーバーの双子さま?」
「…危機管理足りないよ?一回シメるか?」
「遠慮させてくださいイイイイ!!!」
これが、自分とセリさんの初対面の出来事だった。
やっぱり、自分を信じて良かった。
エアトル侯爵家の双子様はお優しいお貴族様だった。
ユーディリア様は、お優しすぎる。お土産まで用意してくれて、
なんでいっつもお腹が空いているの?なんて聞いてくれた。
普通のお貴族様なら、見ても気にしないか、眉をひそめて終わりだと思う。
エミリオ様はお口が悪いけど、平民の自分の事をキチンと考えてくれた。
マンドル様に勝てないって言っても、そもそもの教育の質が違うと、自分の努力を否定しないでくれた。
しかも、毒草が育つ、なんて、いっくらでも有効活用出来そうな事を聞いたのに、自分達じゃなく、マンドル家に保護して貰えるよう話してやる、と言ってくれた。
自分が、エアトル家がいいとワガママを言ったのに、家族の事も考えてくれた。
うん、だから、エミリオ様達じゃなきゃヤダ。
ねぇ、ばぁちゃん!!!
人を見る目を養え、って言うこと聞いて良かった!!!
「自分、大当たりを引いたと思う!!!」
ゴン!!
最後の心の声が漏れてたみたいで、セリさんにゲンコツを貰ってしまった。
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