↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今世つんだケモ娘  作者: 結輝


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/13

9.夢?それとも現実?

リリライト邸 ミュアの部屋


コンコン


「ミュア様、坊っちゃんが帰って来られる時間ですよ」


ばあやさんがにっこり微笑んでいつものように呼びに来た。


「みゅ…」


わたしは、ソファから飛び降りるとエントランスへと向かった。


馬車が停車する音がして、しばらくすると邸の主であるリオが扉を開けて入って来た。


「ミュア、ただいま」


「みゅ…」


リオは、わたしを抱き上げて頬ずりするのが、いつもの習慣なのに…


今日は、わたしを見下ろしたまま嬉しそうに話しだした。


「今日は、ミュアに紹介したい人がいるんだ。さあ、入っておいで」


ゆっくりと扉が開いて、美しいドレスを着たご令嬢が入って来た。

リオの隣に並んでお互い嬉しそうに微笑んだ…


「僕の婚約者だよ」


「くぅ…?」


え?

思わず、後ずさってしまう。


リオは、無表情になって話を続けた。


「どうしたんだい?君が僕と結婚できないと言ったんじゃないか」


だって…


わたしは…


「ああ…、そうだった。ミュアは、この邸から出て行くんだったね?」


あ…

えっと…


「そのリボンも、もう必要ないな」


そう言って、わたしの首からリボンを取り去った。


あ…


「さあ、君は自由だ。何処へでも行くといい」


そう言ったリオの瞳は冷たい。

わたしの身体がブルリと震えた。


邸の扉が開かれ…護衛騎士によって、外へと連れて行かれる。


振り返ると、仲睦まじいリオと婚約者、嬉しそうな使用人達がいて…


だんだんと…邸が遠ざかって行く。


やだ…


わたし…リオと一緒にいたいよ!


他の婚約者といる所なんて、見たくない!


好きなの…愛してる…。


でも…


どうしたらいいの?


わたし…わたし…


涙が溢れた。


………………

…………


「ア…、ミュア」


愛しい人の声がする。


わたしの頬を撫でる優しい手。


「ミュア…大丈夫?」


パチリと目を開けると…目の前には、心配そうにわたしの顔を覗き込むリオの顔があった。


「きゅーん……」


リオ…


リオ!リオだ!


嬉しさの余り起き上がるとリオの首の辺りにすがりついた。


「きゅーん、きゅーん…」


ごめんなさい!

リオ!私の事捨てないで!

ずっと、一緒がいい…


ああ…、この匂い大好き。


わたしは、ベッドで横になっているリオに馬乗りになる勢いで本能なのか…何なのかリオの顔を一生懸命舐めた。


「ミュア?!わっ!ちょっ!まっ…て!?どうしたんだ?!」


「きゅーん…きゅーん」


「ちょっ!わかったから!落ち着いてくれ!くっ…僕の理性がもたないっ…から

!」


………っ!?


ガバッ!と起き上がったリオは、わたしの脇腹を掴んで持ち上げた。


そして、気が付いた。


あ…


あれ?


わたし…


目の前には、赤い顔をしたリオがいる。


夢じゃ…ないの?


えっ…


えええええっ!!!



…………

……… 



『すみませんでした!』


「くぅ…」


ベッドの上で頭を下げた。


どうやら、熊に襲われそうになった所を助けられ、邸に連れて帰って来たのだそうだ。


「その謝罪は…、家出した事への謝罪?それとも…、今した事への謝罪?」


『両方です。ごめんなさい』


「………、僕は怒ってるよ。あんな手紙を残して出て行くなんて…。どれだけ心配した事か、…僕だけじゃない邸にいるみんなが君の事を探してくれたんだよ」


「くぅ…」


優しい邸のみんなの顔を思い浮かべて、胸がキュッと痛くなる。


「ミュア…どうして、邸を出て行こうとしたの?誰かに何か言われた?」


『誰にも、何も言われてない』


『わたしがここにいたらいけないから』


「え?なんで」


『リオ様は人で、わたしはけものだから』


そう書いてポロポロと涙がこぼれた。


「くぅ…」


悲しい…


両思いなのに…


なんでわたし…けものなの…


リオは、わたしの涙を手で拭ってくれた。


「そうか…そんな事を気にしていたんだね」


そんな事って


わたしにとったら重要な事だ。


思わずムッとして、プイッとそっぽを向いた。


「ふふっ、仕方ない。これは、あまり見せたくなかったんだけど、それを解決する為に見せてあげるよ」


え?何を?


振り返ると布団に潜り込むリオの姿が見えた。


布団の中でもぞもぞと動いていた身体は、みるみる大きくなっていった。


私は、驚いてベッドから飛び降りた。


え?!え?!


リオ?!


そして、動きがピタリと止まって、バサリと布団から顔を出したのは…


黄金のオオカミだった。


グルルル


声を聞いてビクリと一瞬肩が震える。


でも…


リオ…なの?


ベッドに寝そべってジッとこちらを見るオオカミの瞳は紫色で黄金の毛並みはサラサラ…リオと同じ。


じゃあ…あの時助けてくれたのは、リオだったの?


わたしは、ゆっくりベッドに上るとリオに近づいた。


鼻と鼻が触れ合うくらいに近づいた瞬間、ペロリと顔を舐められた。


「ふきゅ!」


わたしの身体を囲い込むように座り直すと、ペロペロと舐めてくる。


やぁ…もう…舐め過ぎよ


『ミュア、聞こえる?』


え?


直接頭の中にリオの声が聞こえた。


「みゅん…」


『よかった。ミュアも練習すれば僕と頭の中で会話できるようになるからね』


え!すごい!会話したい


『ミュアの悩み少しでも解決したかな?』


リオは人間族じゃなくて獣人族で、わたしを助けてくれた黄金のオオカミで…


ああ…、聞きたい事はいっぱいあるけど、家出してみて思い知った。


自然の厳しさ、一人でいる事の寂しさ

そして、自分の気持ちを偽って行動し、周りの人に心配を掛けた事。


あとで、ばあやさんや護衛騎士、使用人の人達に謝らないとね。


そして、わたしの気持ちをちゃんと言わなきゃ。


後悔したくない…


わたしは、ベッド脇に置かれた魔導具に言葉を打ち込んだ。


『わたし、リオ様の傍にいてもいいですか?』


『もちろん!いいに決まってる。ずっと僕の傍にいて…ミュア』


嬉しい…


わたしは黙ってリオの身体に擦り寄った。


『ねぇ…ミュア、一生大切にするから…僕と結婚しませんか?』


リオの優しい声が頭の中に響いた。


ドクンドクンと心臓の音が煩い。


もう、この気持ちに嘘はつかない


『はい。よろしくお願いします』


文字を打ってリオに頭を下げた。



いつの間にかヒト型に戻っていたリオに、ギュッといきなり抱きしめられた。


「ああ…ありがとう!すごく嬉しい!」


「みゅう」


いいのかな…


こんなに幸せな事が起こるなんて


夢見たい…


ん…?


夢…?


まさか…


また、夢なんじゃ…?


ガバリとリオの懐から顔を上げた。


「ん?どうした…?」


リオは優しく微笑むけど…


現実なのかリオの身体をペタペタと触った。


ん…


本物だ。現実だ。


だけど、何か…触り心地が


「み…みゃふ?!」


ちょっ!?


ちょっと!


リ…リオ、裸じゃない!


バクバクと心臓が早鐘を打つ。


ど…どうしよう


目のやり場に困るー!


裸のリオに抱えられたまま短い手で目を押さえた。


「ん?…ああ、ごめん。獣化すると服が脱げちゃうんだ。こればっかりは、仕方ないな。ミュア…、恥ずかしがってるの?」


恥ずかしがってますよ!


だって…、だって…


「くっ…、ふふふっ、もう、ほんと…可愛すぎて困る。ミュアは、僕をどうしたいの?」


ソッと目から手を離すと裸体のリオが可笑しそうに笑ってるし…


どうしたいって…


こっちが聞きたいよ!


プイッとそっぽを向いた。


「ほんと、可愛い!」


そういったそばから、わたしの顔中に何度もキスする。


やっ!ちょっ!まって!ふぁっ!


リオの甘々攻撃は止まらない。


今まで何度もされてるけど、今日はいつになくしつこい。


そして、最後にわたしの唇にキスをした。


「んきゅ?!」


ふぁっ!


リオは私を見つめてこう言った。


「大丈夫だよ。もうすぐ、ミュアの願いは叶うからね。全てうまくいく」


願い…?


なに?…頭まわんないよ


ちょっと今は、甘々攻撃のせいでそれどころじゃなかった。


だけど…そうなったらいいなと思った。


ああ…もう…無理。


「きゅう…」


「え!?ミュア!大丈夫?!」


色々とキャパオーバーだったわたしは、とうとう気絶してしまったらしい。



………

……


わたしが気絶した後、リオはすぐにばあやさんを呼んだ。


何事かと、ばあやさんは扉を開いて、その光景に絶句した。


裸のリオが気絶したわたしをベッドで抱きかかえていたからだ。


「坊っちゃん!なんて事を!」


「違うんだ!誤解だよ!」


怒りをあらわにするばあやさんになんとか誤解を説いて、すぐにお医者様を呼んだらしい。


疲労からの発熱、急に激しい運動(家出)をしたため、全身筋肉痛になった。


わたしは2日寝込んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。