7.脱走しました。
数日後、リオは仕事で1週間ちかく邸を留守にする事になった。
「僕がいない間、ミュアを頼む。お土産を買って帰るから待ってて」
いつもの様に、わたしにハグをして出て行った。
この機会を逃す手はない。
リオは、ここから2日かかる隣国に行くらしい。
だから、あえて2日邸で大人しく過ごす事にした。
これでいなくなってからリオに連絡が行くまでの時間が稼げる。
3日目
わたしは、いつも通り…部屋でくつろぎながら、寝たフリをして昼すぎを待った。
「ミュア様は、昼寝の時間に入ったな。少しの間交代してくれ」
「はい、わかりました」
逃げ出す気をなくしてから、いつもわたしにはりついている護衛が昼寝のタイミングで交代する様になった。
この1時間がチャンス!
首につけているリボンのはしを本にはさみ、本を後ろ足でとじてその上に乗りおもいっきり背伸びをしたらスルリと首のリボンがほどけた。
こんな高級なリボンをつけてたら、目立つし、盗られてわたしまで売り飛ばされる危険だってある。
気に入ってたけど…仕方ないよね
「可愛いよ」と言うリオの顔が目に浮かぶ…
だめだめ!わたしはここにいちゃだめなの…
会話魔導具に一言書いて、開いているバルコニーへと続くガラス扉から外へと出た。
裏庭へと進み、使用人や商人の配達に使われる裏門の近くの茂みに身を隠した。
この時間は、裏門に商人が配達に来て
門番の護衛も荷物運びを手伝っている所を散歩の際に何度も見ていたので、配達が来るのを茂みで待った。
そして、商人の配達作業にまぎれて…あっさり脱出に成功した。
……やった!前はあんなに苦労したのにな…
リオ様、さようなら お元気で
行く先は決めてある。
公爵領のとなり、アルリナの街近くの森
ばあやさんが前に話してくれた。
「野生の美味しい果実が沢山実った美しく平和な場所なのよ」
その言葉が忘れられなくて…何度もその場所を地図で眺めて確認した。
大丈夫!辿り着けるはず!
そう、最初のうちは軽く考えていた。
…………
………
……
メラデア国 ロストム侯爵邸 執務室
コンコン
「入れ」
「失礼いたします。侯爵様例の件について情報が入りました」
「そうか、それで?」
「はい、邸に出入りしている商人が燐国で荷物に紛れていた生き物を路地に捨てたそうです。たぶん、もう」
「ふむ…、死んでしまったのなら仕方ない。手間がはぶけたな」
侯爵はくくくっと笑って、引き出しの奥にしまっていた1枚の写真を見てニヤリと笑った。
………
……
…
やばい…自然なめてた…。
脱出してから1日中森の中を歩いた。
この白い身体では、目立ち過ぎるし人が通る道を移動した場合、探しに来た護衛騎士に見つかるし、誰かに目撃されれば売り物として捕まったり、リオの元へ情報が入るかもしれない。だから、森の中を移動する事にした。
嫌だけど…ある程度泥で身体も汚した。
途中、見知らぬ植物や動物にテンションが上がって寄り道をした挙句…
迷子状態…
あれ?おかしいな…
わたしの感覚ではこっちなんだけどな…
この身体だしそんなに早くは歩けない…
歩いて数キロだろう。
今の所、追手は来ていないみたい。
小さな木の実をかじりながら、辺りが暗くなり、草が沢山茂った大きな木の根元で野宿する事にした。
草の茂みに隠れるように、身体を丸める。
わたしがいなくなって大騒ぎになってるかな…
リオが留守にして3日目だから連絡が行くとしたら早くて明日あたりかな…
みんな…心配してるかな…ごめんなさい
草の茂みはチクチクして硬く…あの、ふかふかな寝床が恋しい
寂しいな…
「きゅ…」
今までひとりでいる事に慣れていたはずなのに…、この数カ月で人の暖かさに触れて欲張りになってしまったみたい。
でも、これからは自分の力で生きていかなきゃ!
地図では、大きな川を下っていけば着くはず…
明日は、大きな川を探さなきゃ…
歩き疲れた身体は正直で…いつの間にか眠りについた。




