6.私だけ知らない新事実そして。
「ミュア、美味しいと噂になってるお菓子を取り寄せたよ」
「ミュア、どこに行くんだ?」
「ミュア、散歩なら僕も」
なんか…最近、過保護通り越して
ストーカーぎみのリオに
わたしの不安な気持ちも少しずつ薄らいでいた。
そして、いつも何か言いたげな視線を送って来る。
いったい…何なの?
扉の前で膝を折っておいでのポーズをしているリオを今日はスルリとかわして、
「きゃふっ…!」
誰かの足にぶつかった。
「お?!これがリオの番番か?!」
いたたた…
何この人!
ぶつかったんだから何か先に言う事あるんじゃないの?
ん?この人…今…何か変な事言ってなかった…?
くるりと振り返ってリオを見ると、まだおいでのポーズのまま
「これじゃない!ミュアだ」
いや、そこじゃなくてー!
「可愛いな!もふもふじゃないか」
ぶつかった男がしゃがんでわたしの顔を覗き込む
茶髪で短髪をうしろに流したマッチョなイケおじさんは、わたしを触ろうとした途端、わたしはリオにヒョイッと抱き上げられた。
「僕の番に触らないでくれ!」
「ハハハッ!分かった分かった!もう、触れようとしない」
いやいや、待って、ちょっと、この人達…
さっきから、何言ってるの…?
今…つがいって言わなかった?
リオは、わたしを抱きしめたままマッチョなイケおじと仕事の話しをしはじめた。
ちょっと!訳わからない!
わたしだけ意味がわからないままの状態なんて…納得いかない!
リオの腕が緩んだすきにスルリと抜け出すと、テーブルの上の会話魔導具に言葉を打ち込んだ。
『つがいについて説明して』
それを読んだリオは、
「あっ!」
と、言って気まずそうに口を押さえた。
「まさか…お前、まだ話してなかったのか?」
「いや、言うタイミングが…」
タイミング?タイミングなんて、いくらでもあったじゃない!毎日一緒にいるんだから
『タイミングは今!』
と魔導具に書いて、テーブルを前足でタシタシ叩いた。
「ああ、分かった」
シュンと肩を落としたリオは、わたしの近くのソファに座ると、わたしを見つけた時の話をはじめた。
「あの日の朝は、なぜか胸騒ぎがして街の視察に出た。
そうしないといけない気がしたんだ。
そして、商店街の通りで花の様な甘い誘われるような匂いがして、匂いを辿って路地裏で傷付いたミュアを見つけた。
ボロボロで今にも死んでしまいそうな弱い息をしているミュアを見て、僕の心が悲鳴をあげた。
僕のつがいが死んでしまう!
と…
それからは、助ける事に必死でよく覚えてない。
君の意識が戻るまで離れられなかった。
ミュアに声を掛けた事も曖昧にしか覚えていない。情けないな…
「怖い思いをしたのだから、今は安静にしてケガの回復が先だ」と、ばあやに会う事を禁止された。落ち着いた時には、もう次の日になってたんだ。
数日後、また会えた時は嬉しかったしホッとしたよ」
ん?助けてくれたのは感謝してるけど…なんで、つがいなの?
『なぜ、つがいなのですか?』
「え?ああ…亜人は、16歳になると番を本能と匂いで見つける事ができる様になるだろ?だから…」
え?!そうなの?知らなかった。
まあ、見つかる可能性はかなり低いから僕もミュアに会うまでは、こんな感覚分からなかったからな…
そう言って、顔をわたしの首筋に埋めて匂いを嗅いだ。
16歳か…じゃあ、もうすぐわたしもそれが分かる様になるのかな。
どんな感覚なんだろう…
リオの顔をジッと見つめた。
「マリウス少し二人だけにしてくれ」
「ああ、分かった」
マリウスと言うらしいイケおじさんは、
後ろ手を振りながら執務室から出て行った。
「………」
「………」
沈黙が気まずい。
「ミュア…、僕は君の事が好きだ。ずっと、一緒にいたい。僕と結婚してほしい」
わたしの心臓がトクンとはねた。
うれしい。だけど…
『それは、つがいだからですか?』
「いや…、確かに番だけど違うよ。僕の…一目惚れだ…」
リオは、わたしを膝の上に乗せて恥ずかしそうに微笑んだ。
どうしよう…すごく、嬉しい!
だけど…
『とても、嬉しい。わたしもリオ様の事が好きです。でも、ごめんなさい。結婚はできません』
「なぜ?」
なぜって…
『わたしは、ヒト型になれないできそこないです。リオ様にふさわしくない』
「そんな事はない。僕は、ミュア以外と結婚するつもりはないよ。できないなら…一生ひとりでいる。時間はたっぷりあるから、ミュア…、僕との事考えてほしい」
『はい』
リオはそう言うけれど、やっぱり無理。
だって、この私と結婚なんて…
今の私と結婚式をするリオの姿を想像した。
やっぱり、わたしはふさわしくない。
そして、わたしはこの邸を出て行くと決意した。
結局、その後会話もなく過ごし…
次の日、何事もなかったかの様に会話していつも通り過ごした。




