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今世つんだケモ娘  作者: 結輝


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5/12

5.気付いてしまいました。

ミュア様 坊っちゃんがもうすぐお帰りになりますよ」


「みゅ…」


もう、そんな時間?行かなきゃ…


階段を降りてエントランスでリオが帰って来るのを座って待つのが当たり前になった。


決して、夫の帰りを待つ妻ではなく…

飼い主の帰りを待つ犬である。


「ミュア、ただいま」


「みゅう…」


「いい子にしてたか?」


「ふふふ、坊っちゃん最近お帰りが早くなりましたね」


「そりゃ、ミュアが待ってるからな。ばあや食事の仕度が出来たら呼んでくれ、それまで、ミュアと部屋にいる」


「ふふふ、はい、かしこまりました」


そう言ってわたしを抱え自分の部屋へと歩き出した。


部屋へ着くと、わたしをベッドに座らせリオは、ラフな格好に着替える。その後わたしを抱きしめてベッドで横になって話をする。


今日あった出来事だったり、愚痴だったり…


その後が問題なんだけど…


「ああ、ミュア…、今日も可愛い」


「もっと、触っていいかな?」


「僕にも触っていいからね」


「はあ…、可愛い、食べちゃいたいな」


まるで、恋人同士の様な甘々な会話が一方的にはじまってしまう。


うう…


こんな言葉を浴びせられるペットって大変だよ…


心臓に悪すぎる



ドキドキしてるなか…わたしを抱きしめたまま、疲れて眠ってしまったリオがこんな一言を呟いた。


「いつか、僕の事…リオって呼んでほしいな…」


ごめんね…


わたしの口からリオの名前を呼ぶ事は一生ないよ。


だって、わたしはヒト型になれない獣人なんだから…


このまま、けものの姿で一生を終えるの


どんなに好きでも…仕方ないよね


て…、え?


わたし…今無意識に好きって…思った?


あ、え…そうか、わたしリオの事好きになっちゃったんだ。


じわじわと何かがこみ上げてきて、胸の辺りがキュウっと苦しくなる。


わたし…バカだよね…


叶わない恋なんてして…


久しぶりに目に涙が滲んだ。


………

……

…


「ミュア、最近食欲がないのかな?」


「みゅ…」


「食べたい物があったら言って、何でも用意するからね」


はあ…恋煩いです…なんて言えないよ


私は黙ってテーブルの上に置いてある会話魔導具に手を伸ばした。


『大丈夫。ありがとうございます』


「え、うん…」


この会話の後、無言で重たい空気のまま食事をして、リオは仕事へ出かけていった。



「ミュア様?どうかされましたか?身体の具合が悪いのでしたら、お医者様を呼びましょうか?」


部屋のソファでうなだれていたわたしに、飲み物とお菓子を持って来てくれたばあやさんが心配そうに声をかけてくれた。


『大丈夫』


わたしが話せる事は、身近な一部の人しか知らない。

会話できるのは部屋か執務室だけなので、各部屋に1台ずつ会話の魔導具を置いてくれた。今では、ばあやさんとも気軽に話ができるようになった。


「そうですか。何か聞きたい事やしてほしい事があったら何でも聞いてくださいね。ばあやは坊っちゃんが産まれる前から公爵家にお使えしてますのでね。もしかしたら、坊っちゃんより詳しいかもしれません。ふふふ」


『そうなんですね…』


「ええ、坊っちゃんに聞きづらい事でもお答えしますよ」


「みゅ…」


え…聞きづらい事…


『じゃあ、ひとつ聞いてもいいですか?』


「ええ、どうぞ」


『リオ様に婚約者は』


「あらあら、まあまあ!」


まだ、文字を書いてる途中なのにばあやさんは話し出した。


「坊っちゃんには、ずっと婚約者なんていませんよ。15歳で領地の管理を任されましたからね。仕事が忙しくてそれどころじゃなかったんですよ。でも、最近は仕事も落ち着いて来ましたからね…そろそろ」


『そうなんですね。いい人が見つかるといいですね』


それ以上聞きたくなくて、わたしも話の途中で文字を書いた。


「ええ、ふふふっ!ばあやは、すぐ近くにいると思うんですよ」



すぐ近く…?


屋敷の中?仕事先にいるのかな…


そうか…いたんだ


急に胸がギュッと苦しくなった


ああ…、これは重症ね


ばあやさんが楽しそうに何か話してるけど…さっぱり頭に入って来ない。


話の途中だけど、少し休むからひとりにしてほしいと書いて、退室してもらった。


リオから婚約者を紹介されたら…


わたし耐えられるかな…


ちゃんとお祝いしてあげられる…?


こんな気持ちになるなら


獣人じゃなくて…


ただの犬だったらよかったのに…


………

……

…



「ばあや、最近ミュアの様子がおかしい。話しかけても何だか上の空で」


「そうですね…、ちゃんと自分の気持ちをお話したらどうですか?」


「自分の気持ち?そんなの毎日言ってる!」


僕は、ミュアに対して思った事を素直に話している。


疑いの目を向けるばあやがため息をついた。


「では、あの事はお話しましたか?」


「あ、いや…まだだ」


「でしたら、あの事を含め自分の気持ちをお伝えして、ミュア様の気持ちを聞いてみてはどうですか?」


「そ…それは…」


「逃げられちゃいますよ!」


「うっ…?!わかった。話してみる」


………

……

…


メラデア帝国 ロストム侯爵邸 執務室


「父上、お呼びですか」


「ガルバス、ニフテル、お前達アイツを知らないか?」


「え?あいつ…とは?」


「誰の事でしょうか?」


書類に目を通すのを辞め腕を組んだ。


「ミュアの事だ。お前達がたびたびあの倉庫に行っている事は、使用人からの情報で知っている……。で?どこへやった?」


顔を見合わせた二人は、お互いに先に説明しろと目配せし、兄の方であるガルバスが口を開いた。


「僕達最近忙しくて、知りません」


「そうか…」


「はい、僕も剣術の訓練が忙しくて、あ!今日褒められて」


バンッ!


話の途中で侯爵は机を両手で叩いた。


「そんな事今はどうでもいい…。お前達…本当に知らないんだな?」


二人を睨みつけた。

二人はその怖さにブルリと震えた。


本当の事を話せば殺される。


そう判断した兄の方が先に首を縦に振った。少し遅れて弟も同じ様に首を振る。


「はあ…、お前達もういい。戻れ」


侯爵は、二人が執務室から出て行った後、ため息をつきながらタバコに火をつけた。


「まあいい、バレることはない。見つけ次第始末すればいい事だ」



…………

………

……


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