12.真実はこうでした。
15年前ー
パステル王国で第3子、美しい姫が生まれた。
姫の名前は、クレア。
姫が生まれた年は、各地で豊作の知らせが届き、病にふせっていた者もみるみる回復するという奇跡が起きた。
皆は、パステル王国の宝石と称えた。
そして、姫はすくすく育って行った。
クレア姫が3歳を迎え、はじめて国民へお披露目する日が決まった。
近隣国の重人達も祝いにくると言う事で準備は、着々と進められていた。
事件が起きたその日は、とても、穏やかな晴れた日だった。
「さあ、姫様起きる時間ですよ〜」
鼻歌交じりに、いつもの様に姫様付きの侍女が起こしに部屋へ入って来た。
ベッドの布団がこんもり膨れている。
あら?起きたくなくて布団の中に隠れているのね?
「ふふふっ、隠れてもだめですよ?姫様〜」
バサッと布団をめくった侍女は、悲鳴をあげた。
「きゃあああ!ひ…ひ姫様が…」
そこには、血痕のついた枕が積み上がっていたからだ。
侍女は、慌てて報告した。
急遽、姫様のお披露目会は中止となり、誘拐だと判断し直ちに、国境を封鎖。
城中を隅々まで探し、騎士達は国中を探しまわった。
結果、姫様は見つからなかった。
国王陛下は、膝を付き…
王妃様は、泣き崩れ伏せってしまった…
城の皆も国民も悲しみにくれた…
あれから、12年…
未だ捜索は、続けられているが情報が入ってもデマばかり…
国王陛下と王妃様は、王子達2人に支えられ、今も娘が帰って来るのを待っていた。
そして、ある日隣国リリライト公爵家から手紙が届いた。
………
……
…
「それで、僕は数日前パステル王国に行っていたんだよ」
「ふみゅ…」
「ミュアがいなくなったと報告を受けた時は、本当に心臓が止まるかと思ったけどね」
「くぅ…」
『ごめんなさい』
と、ポチポチ書き込む。
「でも、そのおかげで心を開いてくれる様になったんだし、絶対、これからも僕が守るから大丈夫だよ」
そう言って、わたしを抱きしめた。
「ふきゅ…」
お…親の前でいちゃいちゃするとか…
ありえないよー
目の前のふたり(両親)は、
「仲良しね」「ああ、そうだな」
なんて言いながら、にこにこしてるけど
誰か…止めて下さい。
「リオ殿がいなければ、私達は一生めぐり会えなかったかもしれない。リオ殿、本当に感謝する」
「ええ、ええ、そうです!クレアを助けてくれて、本当にありがとう」
「いえ、ミュア…クレアは、僕の大切な人ですから」
「ああ、そうだったな」
「これからも、クレアをよろしくお願いします」
……。
私抜きで話が進んでない?
わたしには、疑問が沢山残っている。
今聞いた方がいいよね
いちゃいちゃしてる場合じゃない。
リオの腕からなんとか抜け出したわたしは、疑問に思った事を書き込んだ。
『どうして、わたしがクレア姫だと分かったんですか?』
「ああ、それは、ミュアの右脇腹にアザがあるんだよ。それがこう…牙の形をしているんだ」
「ふみゅ…」
みぎ脇腹?…どこ?
右手を上げて覗き込んでも、ふわふわの毛が邪魔でまったく見えない。
はあ…見えないし
ん?みんなどうしたの?
リオも目の前の両親も顔を手で隠して、震えている。
「みゅ?」
「ああ、ごめん。あまりにも可愛くて」
……なによ。
もう…
「その痣は代々パステル王国の王族にだけ現れるんだよ。ほら、わたしにもある」
そう言って王様は右腕を見せた。
ほんとだ…尖った牙に見える。
「王位を継ぐ直系にしか現れないから、今はわたしを含めて子供達3人と…あと、弟くらいだな」
なるほど…
「それに、血縁関係を調べる魔導具で確認済みだよ。ミュアが寝てる間に、少し毛を貰って」
そんな事まで…
『じゃあ…、12年間過した所は、ニセモノだったんですね』
両親は、ふたりで頷いた。
そうか…
ニセモノ…
「クレア…、早く見つけてあげられなくて、すまなかった」
「辛い思いをしたのでしょう」
え?!
そんな…
両親が辛そうな顔をする。
『そんな、謝らないで下さい。一番悪いのは誘拐犯なんですから』
「ああ、そうだよ。ミュアを辛い目に合わせた犯人を僕は、絶対許さない」
「わたしもだ」
「ええ、許さないわ」
この話の流れだと…
わたしがリオに話した暗い12年間の事も両親に伝わっているのね。
この半年間…小出しにしながら話したわたしの暗い記憶は、寝る前のちょっとしたおしゃべりの合間に、リオに話した。
リオは、その話を親身に聞いてくれた。
たまに、私を抱く腕に力が入って苦しい事もあったけど…、きっと、リオなりにわたしの事を思ってくれているのが分かって、嬉しかった。
じゃあ、犯人って…
『犯人は、ニセモノの父だった。メラデア帝国、宰相のロストム侯爵ですか?』
「ああ、そうだ。わたしの弟だ」
なっ! え?!
うそでしょ?!
「あいつとは、わたしが王位についてから疎遠になってしまってね。まあ、問題をおこして、帝国の侯爵家に婿入りしてからは、何かと嫌がらせの手紙を寄越してきたり…まあ、色々とあったんだよ…。クレアのお披露目会に招待したのが間違いだった」
「ええ…、あの方なら護衛の目を掻い潜って、クレアを連れ出す事もできます」
「あいつの所に潜り込ませた諜報員も連絡が途中で途絶えてしまって、探りを入れているのがバレたんじゃないかと動く事も出来なかった」
悔しそうに膝の上で両手を握りしめた。
王妃様が握り拳にソッと手を添えた。
わたしがいなくなった12年間…探してくれていたんだ。
それだけで、心が温かくなった。
あれ?
じゃあ…、わたしはパステル王国に連れて…じゃない。帰らないといけないの?
リオと離れるのやだな…
何か考えているリオを見つめた。
『ん?ミュア、どうした?』
『あの…』
『ん?…』
『わたし…パステル王国に帰らなきゃダメ…なの?』
『ああ…、それは』
そう言ってリオは黙り込んだ。
だんだん不安な気持ちが大きくなる。
え?なんで?何か言ってくれないの…
「くぅ…」
なんか…悲しい
わたしはリオの隣で丸くなった。
わたしは見ていなかったけど、リオは丸くなったわたしを見て、額に手の甲を当てて天井を見ていたらしい。(後日、母情報)
「クレア?大丈夫?」
「みゅ」
王妃様(母)が心配して声をかけてくれた。
「クレアが疲れてしまった様だし、今後の事なんだが…」
王様(父)は、そう言ってリオを見つめた。
「陛下!僕に考えがあります」
「なんと、その話聞こうじゃないか」
リオは、真剣な顔で話しだした。
………
……
小一時間、リオの話が続き…終わった時には、夕食の時間になっていた。
両親は、どうやらお忍びでここまで来たらしい。
だから、地味目の正装をしてたのか…
王様だったら、もっと、きらびやかな服を着てそうだもんね。
今日はこのままここに泊まるそうだ。
両親と一緒に夕食をとる為、食堂へ行くと…
「「ミュア様!!誕生日おめでとうございます!」」
「きゃふ?!」
び、びっくりした!!
わたし…今日、誕生日なの?
知らなかった…
邸のみんなが集まって拍手が止まらない。
『みなさん、どうもありがとう』
魔導具にお礼を書いて、プレゼントをたくさん貰った。
両親からは、いなくなった12年間分のプレゼントと16歳の私へのプレゼンとを貰った。
「ここで全部あけるのは大変だから後で、あけてからのお楽しみよ」
と、王妃様(母)が気遣ってくれた。
リオは、「後で渡すから」と照れながら言った。
今日の夕食は、料理人が全力を出して作ったのだろう。
とても、美味しかった。
………
……
リオの部屋
はあ…疲れた
ベッドにボフッと寝そべる。
今日は朝から色々ありすぎた…
「ミュア、お疲れ様」
寝支度を終えたリオがタオルで濡れた頭を拭きながら入って来た。
「ふみゅ…」
『驚きすぎて…疲れちゃったよ』
「ふふふっ、だろうね」
ギシッとマットがきしんで、リオがベッドに上がってきた。
自然とリオと目が合う。
「ミュア…、あ…クレアか…」
どちらで呼んだらいいか迷ってる。
ふふふっ、なんか可愛い…
両親には、好きな方で呼んでくださいと言ったけど、
『ミュアって呼ばれるの好きだから、ミュアがいい…』
「わかった。ミュア…、誕生日おめでとう」
そう言って、わたしの目の前に手のひらサイズの箱をさしだして、パカッとひらいた。
そこには、紋章の入った指輪が入っていた。
オオカミと剣と盾の描かれた紋章のまわりに宝石がちりばめてある金の指輪。
「代々婚約者に贈られる指輪なんだ。本当は、もっと早く贈るつもりだったんだけど…、母がいる別荘から取り寄せるのが遅れたんだ。今更だけど、受け取ってくれるかな?」
少し不安そうに眉を下げて言う。
わたしが今更受け取らないとでも思っているのだろうか…?
パステル王国の姫だから…?
わたしが姫なんて…自分が実感ないのに
箱を持つ手が少し震えてる。
『ありがとう。嬉しい。大切にします』
そう言って、その指輪に触れた。
「はあ…、よかった」
リオは箱をベッド脇に置いて、わたしを抱きしめた。
『ミュア、愛してる』
「みょ!」
リオの声が頭に響いて思わず変な声が出た。
リオがくすくす笑う。
『わたしも愛してます』
リオの目が見開かれた。
じわじわ顔が赤くなって片手で顔を隠した。
どうだ!参ったか!
わたしだって負けないんだから
………
あの指輪…
指に嵌めたかったな…
どうして、わたしはヒト型になれないの?
そんな事を考えながら
リオの体温が心地よくて、疲れていたからか…わたしはそのまま眠ってしまった。




