11.お客様が来ました。
わたしがここに来て半年が過ぎた。
今日は、朝から来客があるとかで、みんな忙しそうにしていた。
邪魔しちゃいけないし、わたしは部屋でゆっくりしていようかな…
ソファに上り、読みかけの本を開いた。
コンコン
「ミュア様、さあさあ!お支度いたしましょうね」
「みゅ?」
お支度…?
ばあやさんは、部屋へ入って来たかと思うと、わたしを抱えてお風呂へ向かった。
アッという間にワシャワシャ洗われて、タオルで水気を拭き取ると、ドライヤーの様な魔導具で毛を乾かしながらブラッシングされた。
鏡の前に映る自分は、ふわっふわ!で、いい香り…
「今日は…このリボンにしましょうね」
沢山のわたし専用リボンが入った引き出しから、紫色に金糸で刺繍を施したものを選び、結んでベルの装飾を取り付けてくれた。
このリボンたしか…正装用じゃなかったかな…
ん?
まさか…
わたしもお客様に会うなんて事ないよね…?
この邸以外の人に会うなんて…
不安すぎる
リオからも誰からも今日の事は、詳しく聞いてないし…まさかね。
婚約して3ヶ月…
邸のみんなに婚約祝いをしてもらっただけで、お披露目会などはしていない。
よく考えたら、家出した時以外(まあ、森の中だけど)邸の外に出た事がないな…
リオに、「まだ、外はあぶないから」って言われてしまえば…
家出して危険な目にあった手前、何も言えなかったし、出ようとも思わなかったけど…
「さあさあ!参りましょう」
わたしを抱きかかえたばあやさんは、リオのいる執務室へと歩き出した。
いったい何があるの?
なんだか不安になって見上げるわたしに
「ふふふっ、大丈夫ですよ」
と声をかけるばあやさん…
ぜんぜん、大丈夫じゃないよ!
そして、アッという間に執務室についた。
コンコン
「どうぞ」
ん?
あれ…?
リオの言葉の感じが違う…
いつもだったら、「いいよ。入って」とか言うのに…
ガチャリと扉が開いて、正装したリオと見知らぬ二人の獣人がソファに座っていた。
誰だろう?
「ミュア、おいで」
床に降ろされたわたしは、手を広げるリオに抱き上げられた。
ばあやさんは、一礼して執務室を出て行った。
「………」
目の前に座る獣人二人がわたしをまじまじと見つめてくる。
手を繋いでるし…
高貴な貴族の…
仲の良いご夫婦?だろうか…
二人とも銀髪の長髪を一つに結んで、金色の瞳をしている。
違うのは…獣耳だけ。
男性の方は、見慣れた犬耳だった。
女性の方は、うさぎの様な長い耳。
それにしても…、誰も口を開かない。
わたしは、リオを見上げた。
そして、目が合うと念話が飛んできた。
『ミュア、そのリボン可愛いよ。似合ってる』
『ありがとうございます。じゃなくて!この方達は、どなたですか?』
『これから、説明するよ』
リオは、ひとつ咳払いした。
「ミュア、こちらは、パステル王国の国王陛下と王妃様だよ」
えええええ!?
「ふきゅ?!」
まさか…
はじめて会うお客様が…大物過ぎてブルリと身体が震えた。
え?え?
パステル王国って、確か、南にある隣国の…
で?
どうして、わたし呼ばれたのかな?
ハッ!
あ…挨拶しなきゃ!
慌てていつもの魔導具に言葉をポチポチ打ち込んだ。
ちゃんと、テーブルの上には魔導具と私が座る為の小さな薄いクッションが置いてある。
『ミュアと申します。お会い出来て光栄です』
そう書いて、頭を下げた。
「ああ、わたしもだよ。頭を上げなさい」
その言葉で頭を上げて、ギョッとした。
ちょっ!ちょっと!
二人とも泣いてるんですけど?!
なんで?え?えー?
『リオ様!王様と王妃様泣いてるよ!なんで?』
『ああ…、ね?』
ああ、ね?って何???
王様は、静かに涙流してるし…
王妃様は、ガッツリ顔を歪めてポロポロ泣いてる…
ああああ……もう。
なんか、わたし悪い事しましたか?
はあ…どうしたら…
とりあえず、リオの胸ポケットからハンカチを抜き取って、王妃様に持って行く…
まあ、ちょっと、口で咥えたから…あれだけど、どうぞ?
それを見た王妃様は、一瞬だけ目を見開いて、「ありがとう」と言いながらハンカチと一緒にわたしも抱き込んだ。
「みゅふ?!」
え!なんでこうなった?
王妃様は、ギュッとわたしを抱いてまた、泣き出すし…
王様は、「お前だけズルいぞ」とか訳わからない事言ってるし…
カオス状態…
『リオ様…助けて…』
『ああ…ね』
だから、ああ...ねって何??
はあ…仕方ない…
結局、王妃様が落ち着くまで我慢した。
………
……
「ごめんなさいね。感極まってしまって…」
「わたしも失礼した」
頭を下げようとする王様にリオが止めに入る。
「陛下、落ち着いた所で…話を勧めてもよろしいですか?」
「ああ、頼む」
王様と王妃様は、何か決心したかの様に顔を見合わせる。
…そして、こちらを向いて頷いた。
「それでは…、ミュア」
「みゅ?」
「陛下と王妃様は、君の本当のご両親だよ」
え?!
そんな…
ええええええええー?!
衝撃的な事実に、また、夢なんじゃないかとリオの身体をタシタシ叩いた。
『夢じゃないからね』
と言うリオの声が頭の中に響いた。




