13.悩みが解決しました。
ん、んん……
寝返りを打って、薄目を開けるとカーテンの隙間から空が少し明るくなっているのが見えた。
起きるには、まだ早い時間だった。
夢を見ないほど熟睡できたみたいで、なんだか身体が軽い。
振り返るとリオは、まだ眠っていて
思わずまじまじと寝顔を見つめた。
まつ毛長いな…
肌もすべすべだし…
金髪の髪もサラサラだ…
こんな美青年がわたしの婚約者で…いいのかな
なんだか顔がニヤけそう…
ふと、リオの髪を触ろうと手を出して
「え」
うそ?!
自分の身体の変化に気づいた。
思わず飛び起きて、自分の手をまじまじと見つめる。
て…手が…人の手になってる?
グーパーしてみる。
うん、わたしの手みたい。
顔をペタペタ触った。
人の肌だ…
髪は、思ったより長くてウエーブがかかった銀髪
どうしよう…
どうしよう…
夢じゃないよね?
確認したいけど…
そう思って隣を見る。
まだ眠ってるリオの髪にソッと触れてみた
わあ…サラサラだ
なんだか嬉しくなってリオの頭を撫でた。
すると、撫でられた事に気づいたのか
リオは、わたしの腰を引き寄せて抱きしめた。
「ひゃ!」
前と違う肌の感覚にドキドキする。
どうしよう…
しばらくすると足を絡めて来る。
やっ…ちょっと、
リオの胸を押すとよけいに抱き込まれた。
昨日までとは違う恥ずかしさに耐えきれなくなったわたしは、リオを起こす事にした。
どうやって起こそう…
ん…
身体は固定されちゃってるし…
呼んでみる?
わたし…ちゃんと話せるかな…
さっき、変な声が出たから出るのは確認済み
よし…
「り…、お」
でた!
「り、お…、お…き、て」
なんとか言えた。
うーん…、これは練習しないとね
「り、お」
「ん…、ミュアどうした?」
リオは、薄めを開けてわたしを見ると…固まった。
「あ、…え?!」
驚いてわたしを抱き込んでいた腕を離すと、慌てたリオがわたしに覆いかぶさる形になってしまった。
リオと見つめ合う…
「ミュア…?だよね?」
そう呼ばれてコクリと頷いた。
リオが目を見開いた…
ゴクリと唾を飲み込む音がした。
「ああ…、ミュア」
わたしの首元に頭を埋めて、ソッと抱きしめられた。
「ずっと、待ってたのに…眠ってしまったんだな…僕は」
リオがボソボソと呟く。
ん?
待ってたって…?
「り…」
と言いかけて、念話の方が早い事に気づいた。
『ねぇ』
「ん?」
『待ってたって…、何を?』
「それは…、ミュアが16歳になるのを…」
16歳になるのを?って…
16歳は、…成人。
結婚できるから?
あ、16歳になったらつがいが分かるんだっけ?
と、色々考えていると…矛盾を感じた。
16歳になったのは、昨日で…
今更待ってたなんて言われるのは、おかしい…
あ…
……もしかして、
『もしかして、16歳になったらヒト型になれること、知ってたの?』
違うかもしれないけど、かまをかけてみた。
リオは、黙ったまま何も言わない。
はい、アウトー!
知ってたんだ。
わたしが悩んでる事、知ってるくせに…
なんだか腹立たしくなった。
『分かった。もういい…』
「え?ミュア?」
リオをキッと睨んで、肩を持って横に押しのけた。
起き上がるとリオに背中を向けた。
「ちょっ!ミュア?」
『どうして、言ってくれなかったの?』
「そ、れは…、…んん、……………確実なものじゃなかった、から………言えなかった」
『確実なもの?』
「…ああ…、僕はミュアの事情を知った時から、獣人について徹底的に調べた。なぜヒト型になれない者がいるのかを…」
『え…』
「実際に他にヒト型になれない者にも会いに行ったし、体内魔力や毒物の調査もした。だが…なかなか、はっきりとした答えが見つからなくて」
はあ…
リオはため息をついた。
仕事の合間にそんな事までしていたなんて…
「マリウスがたまたま、パステル王国で見つけて来た古い書物の中には、こう書いてあった」
『過酷な運命を背負った者には、獣化の呪いが降りかかる。16の年あるいは、愛し合う心がその呪いを解くだろう』
過酷な運命か…
確かに…辛い幼少期をすごした。
3歳まで本当の両親と幸せに暮していたんだろうけど…、わたしにはそんな記憶はない。
「もし、これが本当ならミュアは、16歳の誕生日を迎えれば、獣化の呪いが解ける事になる。もし、ダメでも僕は…ミュアを愛しているから…、いつかミュアが僕の事を心から愛してくれたら…解ける」
そう言って…、後ろからわたしを抱きしめた。
はあ…
リオのため息が肩にかかる。
ふわっと甘い誘われるような良い香りがした。
「ミュアにこの古い書物の1文を告げたとしようか、もちろんミュアは、期待するよね?」
わたしはコクリと頷いた。
うん。もちろん…そうだ。
「で…、この1文が嘘だったとしよう、16歳の誕生日が過ぎて獣化の呪いが解けなくて…、ミュアはきっと落ち込むんだ。そしてまた、僕達に愛し合う心があるのに呪いが解けなかった時のミュアは、2度目の絶望と…僕に対しての愛を疑うようになる…、僕は、そんな事…耐えられない」
くっ…と、何かを我慢する様な声がして、リオの抱きしめる腕が震える。
「僕は、例え獣化の呪いが解けなくてもミュアを愛してる。ミュアは、ヒト型になれない負い目を感じるかもしれないけど、僕は、ミュアと一緒にいられるだけで幸せなんだよ」
リオの言葉が、わたしの胸を締めつける。
嬉しくて、苦しい…
抱きしめるリオの腕にソッと手をおいた。
そうか…
だから、わたしに言えなかったんだ
腹立たしい気持ちは、いつの間にか消えて、愛しい気持ちが溢れて来る。
『リオ様…、ごめんなさい』
「え?」
『わたしが間違ってた。こんなにわたしの事を想ってくれてるのに…ひどい態度をとってしまって…』
ソッと後ろに振り向くと、泣きそうな顔で微笑むリオが見えた。
ああ…、これはダメだ。
身体の向きをもう少し後ろに向けて、自分から抱きつく。
『リオ様大好き。愛してる』
目を見開いたリオに、自然と微笑みかけるとリオの目からポロポロと涙が落ちた。
あーあ…、
わたし、リオを泣かせちゃった…
少し手で拭って…ペロリと舐めた。
しょっぱい…
「ちょっ!ミュア?」
自分から、ふふふっと声が出た。
そして、ベッドに押し倒された。
わたしを見下ろすリオの顔が近づいて、唇が重なった。
そのキスは、軽いものから深いものへと変わっていった。
『あの…さ』
『ん?』
『気づいてると思うけど…、ミュア、…裸だからね』
『あ!』
そうだった!
ちょっ!やだ!恥ずかしい…
身体を隠そうと両手を前に出した瞬間、リオに手首を取られ、ベッドに縫い付けられた。
『ちょっ!恥ずかしい…から』
腕に力を入れてもびくともしない。
『んー…、僕を疑った罰として、僕の匂いをたくさん付けさせて貰おうかなっ』
わたしを上から見下ろすリオが口角を少しあげてイタズラに笑った。
リオが獣化した時の事を思い出す。
『…やだ』
『だーめ、これは、お仕置きなんだから…』
そう言って、また唇が重なる。
その後の事は、とにかく…
獣化していた時の様に、リオが満足するまで甘い拷問を受けた。




