39 修羅場?
討伐クエストというものは、町や街道の近くに現れた人間にとって危険な魔物を排除するためのもので、それ以外の魔物は誰かが個人的に依頼を出さない限り討伐対象とはならない。
そして討伐対象ではない魔物を倒して討伐証明部位をギルドに提出した場合、それは冒険者ランクを上げるための実績としてはカウントされるが、討伐報酬をもらうことは出来ない。
なぜならそれらの魔物は、多くの人にとって全くかかわりのない…つまりは危険ではない魔物だからである。
当然ダンジョン内に出現する魔物も、ダンジョンの外に出てこない限りは一般人にとって全くかかわりのない魔物であるため、討伐対象とはならず、いくら倒しても報酬はもらえない。
ではダンジョンの攻略に出向く冒険者たちは、どうやってお金を稼ぐのか?
それは、ダンジョン内で手に入るアイテムである。
ダンジョン内では高価な宝石や珍しい素材、特別な力を持った武具、そしてこの世界のものではない異界の品…など、様々なアイテムが手に入ることがある。
つまりそれらを手に入れて売り払った金額こそが、ダンジョン攻略に出向いた冒険者の収入となるわけだが、それは必ずしもおいしい報酬となるわけではない。
なぜなら高値が付くアイテムが手に入るかどうかは完全に運任せであり、その確率は決して高くはないからである。
要するに…
「ダンジョン攻略なんて、危険度が高い割に大して儲からん。俺はそんなところに行く気は一切ない」
一獲千金を狙う冒険者にとっては魅力的だが、運に左右されず確実にお金を稼ぎたいレクスのような者にとっては、正直リスクがリターンに見合わない全く魅力がない場所ということである。
「何でそんな悲しいこと言うんすか師匠っ! 冒険者なら誰だって一獲千金の夢を見るものっす! そしていつかは、一番乗りでダンジョンを攻略する名誉を…」
「俺はギャンブルは当たらないものだと思っているし、名誉になど一切興味はない」
レクスは冒険者の中では比較的少数派な、一獲千金の夢や冒険者としての名誉よりも、確実な収入を優先するタイプであった。
「それはあんまりっすよ、師匠っ…」
「つーか師匠ってなんだ。俺は弟子など取った覚えはない」
「師匠、ソロでオーガ倒したんすよね? マジで尊敬っす。だから自分の師匠に決めたっす!」
「勝手に決めるな」
レクスは話の通じなそうなファイにかなり困っている様子。
そこで、このファイを紹介してきたベルに文句を言うことにした。
「おいベル、こいつ何なんだ」
「ダンジョン攻略のためのパーティーメンバーを探している、ファイ・レディーゴちゃんですよ」
「そんなことを聞いているんじゃない。何でこんなのを俺のとこに連れてきた?」
「それは…その、お世話になっている先輩に頼まれたので、ちょっと断りづらくて」
「おい」
ギルドの受付嬢内にも力関係は存在する。
「でもいいじゃないですか。ファイちゃんはつい最近冒険者になったばかりの子なので、レクスさんに対しても特に悪い印象はないみたいですし、これを機に一度くらいはパーティーを組んでみるのも…」
「断る。こんな暑苦しいのと組むのは御免だ」
「何でそんなこと言うんすか、師匠っ! 二人で一緒にダンジョン攻略するっす! そして一番乗りで最深部までたどり着いて、自分たちが攻略者の名誉を得るっす!」
ファイはまだ冒険者になったばかりのブロンズランクなのにもかかわらず、もうすでに新ダンジョンを一番に攻略するという夢を見ている。
「無理だ、あきらめろ。他に行け」
「嫌っす! もうシルバーランク以上の人、師匠以外残ってないっす!」
ダンジョン攻略を夢見る少女ファイは、何が何でもレクスとパーティーを組みたいがため、レクスを逃さないよう必死に服をつかんでいる。
「放せ!」
「嫌っす、絶対に放さないっす!」
なんとかファイを振り払おうとするレクスと、絶対に逃してはなるまいとレクスにしがみつくファイ。
するとそんな状況のところにアナとシオンがやって来た。
「あっ、レクスさん。誰かと一緒にいます」
「浮気ですのっ?」
シオンの目には、この状況はそうとしか見えなかったようだ。




