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36 拳銃を使う理由

 レクスの家の扉を叩く音が聞こえてくる。

 だが普段この家を訪れる者などほとんどおらず、来る可能性があるとしたら、しょうもないものを売りつけようとする怪しい商人か、緊急のクエストで受けてくれる者を探している冒険者ギルドの使いくらい。


 だからレクスは誰かが家に来たとしても、基本的に完全無視である。

 どうせわざわざ出迎える必要のない厄介なのしか来ないんだから、ひたすら居留守を決め込むのが正解…とレクスは考えている。

 しかし今日は違った。


「あのー、レクスさーん、いませんかー?」


 扉のほうから聞こえてくるのはアナの声。

 アナはいつもレクスに会いに来るときは冒険者ギルドにやって来ていたが、先日この家の場所を知ったことで、より確実に会うためにレクスの家に直接やって来たようである。


 となれば、さすがにレクスも居留守を使うわけにはいかないので、扉を開けてアナを出迎えることにした。


「あっ、こんにちはです、レクスさん」

「ああ」


 やはり声の通り、この家にやって来ていたのはアナだった…が、その隣にもう一人…


「お久しぶりですわね、レクスさん」

「そんなに久しぶりでもねえだろ」


 アナと共にシオンもこの家にやって来てしまっていた。

 だがそんなことよりも、レクスにはもっと気になることが。


「つーか、さらに一人増えてるんだが、誰だ?」


 そう、この家にやって来ていたのはアナとシオンだけではなく、もう一人いたのである。


「初めまして、白い悪魔殿」

「は?」


 自分が白い悪魔と呼ばれていることなど全く知らないレクスは、何のことだと困惑している。


「アタシはいずれ世界一の魔導具技師となる女、ルーナ・ティタニー。実は姫ちゃんからこの杖の製作を頼まれていてね…」


 ルーナがそう言いながらあの拳銃を改造したものを取り出すと、それでレクスはその依頼人がアナであると理解し、アナのほうに目を向けた。


「姫? 何で姫なんだ?」

「あわわっ、レクスさん、それは気にしないでください! ルーナ先輩が勝手に言っているだけですからっ!」


 だがそんな風に慌てるアナのことをシオンがとても微笑ましそうに眺めているのを見て、これは下手に聞いたら自分も巻き込まれるやつだ…と感じたレクスは、このことに関してはこれ以上一切追求せず、さっさと拳銃を改造した杖の話を始めた。


「……で、これがその光の矢用の杖か?」

「そうさ、アタシの自信作だから早速試してくれたまえ」

「そうは言われても、光の矢の魔法はまだ何も出来上がっていないからな…」

「だったらまずは光の剣で構わない。アタシとしては、こいつの耐久性が見たいだけだからね」

「耐久性?」

「ああ」


 そしてルーナから拳銃を改造した杖を受け取ったレクスは、早速それで光の剣の魔法を発動させてみた。

 すると拳銃の銃口から光の刃が飛び出した…が…


「なんか細いな」


 そう、拳銃の銃口から出ている光の刃は、光の剣用に作った短い杖で発動させたときよりも、明らかに細くて弱弱しく見える。


「これ、成功なのか?」

「まあ壊れなかった時点で、おおむねテストは成功といえるだろう」


 そしてルーナは、この光の刃が細くなっている理由について語りだした…が…


「この杖の筒状の部分の内側には、姫ちゃんに作ってもらった術式を組み込んで位相の力をまとわせることで、その力による対消滅を利用し…」

「つまり、壊れないように特殊な加工をしているけれど、そのせいでちょっとパワーが落ちちゃっているということです!」

「そういうことですわよね、ルーナ先輩」

「まあ、要約するとそういうことだね」


 思いっきりルーナの説明が長くなりそうな感じだったので、アナとシオンが全力で止めた。

 どうやら二人とも、すでにルーナの長い語りは聞かされ済みなようで、さらにもう一度語られるのはしんどかったらしい。


 とまあそんなわけで、ルーナによる詳細な説明はカットされたものの、アナの要約でなぜ光の刃が細くなっているのかの大体の理由はわかったわけだが、その点で一つレクスには疑問に思うことがあった。


「つーかそもそも、そんな特殊な加工を施してまで、この妙な物を杖にする必要があるのか?」


 つまりそういうことである。

 そもそも拳銃の内部に魔鉱石を仕込んで魔法の杖にしなければ、それが壊れないように加工する必要もなく、それによって魔法の威力が落ちてしまうこともないからである。


 だが光の矢にこの拳銃を改造した杖を使う理由があるということをルーナは語る。


「それは少しでも術式を短くするためさ。姫ちゃんの作る全く新しい魔法はどうしても術式が長くなってしまう。そして遠くの敵を狙う飛び道具の魔法となると、目標に狙いを定めるための術式も組み込まなければならないので、光の剣よりもさらに術式が長くなってしまうだろう」

「だがこの杖を使えば手の動きだけで狙いを定められるから、その部分の術式をカット出来るということか」

「ああ、そういうことさ。だろう、姫ちゃん」

「えっ? それは…そのっ、ええっと……」


 光の矢に拳銃を改造した杖を使うメリットをルーナが語ったものの、どうやらそれはアナがこの拳銃を使うと決めた理由ではなかったようだ。

 ではアナが光の矢の魔法にこの拳銃を使うと決めた理由は何だったのか?

 それは…


「白いゴーレムが使っていたものと同じような杖を使ったほうが、かっこいいから…です」


 ただのロマンだった。


「かっこよさ…。それは重要ですわよね、アナさん」

「はい、重要です!」


 アナとレクスの仲を進展させたいシオンとしては、アナにとってレクスがかっこよく見えるのであれば、それはとてつもなく重要…と全面的に同意している。

 その一方でルーナはというと、先ほど自信満々にもっともらしいことを語ってしまったのを若干恥ずかしく思っているようである。


「ま…まあ、見た目も確かに重要だ。うん……」

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