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34 白い悪魔の姫君

「あの、少しお話よろしいですか」

「ん、一年か。何だ?」

「実はですね、わたくしたち、とある特別な杖を作ってくださる方を探しているのですけど…」

「いったいどんな杖だ?」

「それはですね……」


 魔導具開発専攻の上級生にはコミュ力の高いシオンが話しかけていったものの、作ってほしい杖の詳細なことに関してはアナしか分からないため、シオンはアナのほうに目線を向けた。

 そしてアナは、かなり緊張した様子で拳銃を見せながら語りだす。


「あ…えっと、そのっ、作ってほしいのはこれの中に魔鉱石を仕込んだ杖で…」

「何その妙なの?」

「これは…ですね、何か…と言われても、わたしにもこれが何だかよく分からないんですけど、白いゴーレムはこれによく似たもので光の矢を放っていたので、光の矢の魔法にはこれで作った杖があったほうがいいかと思って、それで…そのっ…」

「うーん、ごめん、正直何が言いたいのかよく分かんねえや。悪いけど他を当たってくれる」

「は…はい……」


 一人目は不発。

 そしてその後も……


「今は自分の魔導具の開発で忙しいから…」


「えっ、それを杖に改造するの? うーん、こんな見たこともないもので杖を作るだなんて、あたしにはちょっと荷が重いかな」


「光の矢とか、そんな魔法無理っしょ。研究するなら、もっと現実的な魔法の研究したほうがいいんじゃないの」


 ……と、何人かに声をかけてみても全て空振りで、アナはすでに心が折れかけていた。


「ごめんなさい、シオンさん。せっかく先輩たちに声をかけてくれたのに、わたしの説明が下手すぎるせいで、全て無駄に…」

「そんなことありませんわ。アナさんはちゃんと、白いゴーレムと光の矢について語れていましたもの」


 と言いつつシオンも正直よく分かっていない。

 だが白いゴーレムや光の矢のことについてはよく分かっていなくとも、この研究に賭けるアナの思いだけは誰よりもよく知っているため、シオンはまだこんな所であきらめる気はないようである。


「さ、次行きますわよ、アナさん。今度こそ…」

「今度こそ…何かな?」


 その人物は突然二人の前に現れた。

 何やら不敵な笑みを浮かべている魔導具開発専攻の女子生徒。


「さっきからいろんな人に話しかけてるけど、いったい何をご所望だい?」

「あ…あのっ、これで杖を…」

「ふーむ、これかー……。あはははっ!」


 アナの手から拳銃を取り上げたその女子生徒は、拳銃を眺めながら笑い声をあげている。

 するとそんな彼女の態度が癪に障ったシオンは、すぐさま食って掛かっていった。


「いったいどういうおつもりですの? アナさんの研究を馬鹿にするというのであれば、すぐにお引き取り…」

「あー、悪い悪い。勘違いさせちゃったなら謝るよ。アタシは別に馬鹿になんかしちゃいないさー。ただ、さっすが白い悪魔の姫君ちゃん、面白いこと考えるなーって」

「白い…悪魔?」


 この女子生徒から白い悪魔の姫君などと呼ばれても、何でそんな風に呼ばれているのか全くわからないアナはきょとんとしている。

 するとこの女子生徒は、なぜアナのことをとそんな風に呼んだのかを語った。


「この前の決闘、アタシも見てたんだよ。結界魔法を光の剣でばんばんぶっ壊すの、ありゃ爽快だったねえ。……で、そんときさ、負けたほうが対戦相手のことを白い悪魔…とか言ってたらしいんだよ。だからぁ、その白い悪魔にお姫様抱っこで運ばれていった君が、白い悪魔の姫君ちゃん…ってわけ」

「はわっ!」


 アナはそのときのことを思い出して顔が赤くなっている。


「おっ、いいねえ、うぶな反応。とりあえず姫君ちゃんって呼んでいい? いや、ちょっと長いから姫ちゃんかな?」

「いや…あのっ、そのっ……」


 アナはこれまであまり接してこなかったタイプの相手に戸惑っている。

 するとそんなアナのことをかばうかのように、シオンは二人の間に割って入っていった。


「それで先輩、あなたはいったい何者なんですの?」

「アタシかい? アタシは魔法研究科三年、魔導具開発専攻のルーナ・ティタニー。いずれ世界一の魔導具技師になる女さ…と、これでいいかい?姫ちゃんのお友達」

「え…ええ……」


 こうしてルーナは自分のことを名乗ってシオンをひとまず納得させると、すぐさまある話をアナに持ち掛けてきた。


「というわけで姫ちゃん、この妙なもんで作った杖が欲しいんなら、このアタシに依頼するといい。アタシなら最高の杖を作ってやれるよ」

「ほ…ほんとですか?」

「ああ」


 そんな渡りに船な話に、これでもう杖を作ってくれる人を探さなくていいんだ…と、アナはほっとしている。

 だがその一方でシオンは、あまりにも話がうますぎる…と、ルーナのことを警戒していた。


「ルーナ先輩」

「何だい?姫ちゃんのお友達…」

「シオンですわ」

「ではシオン嬢、アタシの提案に何か意見でもあるのかい?」

「そうですわね。先輩が善意や好奇心でアナさんに協力してくださるというのであれば、わたくしから言うことは何もありませんわ。ただ、そうでないというのであれば…」

「いいねえ、話が早くて助かるよ、シオン嬢。確かにアタシは、善意で協力する気なんてこれっぽっちもない」


 そのルーナの回答に、やはり…と納得するシオンと、期待を裏切られてショックを受けているアナ。

 そしてルーナの目的とは…


「アタシが姫ちゃんに協力しようってのは、半分は好奇心で合ってるよ」

「では、もう半分は何ですの?」

「そりゃあもちろん、このアタシ自身の利益のためさ」

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