33 専用の杖
最近アナは、何か妙な物を常に持ち歩いていて、ことあるごとにそれを眺めながら何か考え事をしている。
そんなアナの様子が気になったシオンは、アナが手にしている妙な物が何なのか尋ねてみた。
「アナさん、それいったい何なんですの?」
「これは…わからないです」
アナは自分でもなんだかよく分からないものを持ち歩いていた。
「どうしてそんな分からないものを持ち歩いているんですの?」
「これ、なんだか少し似ているんです」
「何にですの?」
「白いゴーレムが光の矢を放つときに使う装備にです」
アナが光の矢と呼んでいるもの、それはつまりビームによる遠距離攻撃である。
そしてそれを放つ装備に似ているものとは、異界の品のうちの一つ、拳銃である。
ただし弾は入っていないので、引き金を引いても何も出ない。
「この前レクスさんと、今度は光の矢の魔法を作ろうって話になったんですけど、そのとき骨董屋さんでこれを見つけたんです。白いゴーレムの装備にちょっと似てる、この異界の品を」
「それでアナさんは、それをどうなさりたいんですの?」
「これで光の矢専用の魔法の杖を作りたいんですけど、わたしの力じゃさすがにそれは難しそうで……」
アナは以前、光の剣のための杖を自作したが、あれはただ短めの持ち手に魔鉱石を取り付けただけの簡単なものなので、魔法研究科の一年生でもちゃんと授業を受けていれば作るのは難しくない。
しかし今回アナが作りたいと考えているものは、そう簡単なものではないため、自分ではどうにもならないと困っていたのである。
「アナさんが全部ご自分でなんとかなさりたいのも分かりますけど、でもそういったことは、やはり専門の方に任せるのがいいと思いますわ」
「そう…ですね」
そんなわけでアナとシオンは、この光の矢用の魔法の杖づくりを頼める者が誰かいないか考えてみたものの、二人が知っているクラスメイトの中ではこれといって適任者が思いつかなかった。
というのも魔法学校の魔法研究科では、一年生のうちは様々な分野をまんべんなく学ぶため、杖職人や魔導具技師を目指している者でも、技術的にはアナやシオンと比べてそれほど大きな差があるわけではないからである。
「やはりここは先輩にお願いしてみたほうがいいのでは?」
「先輩…ですか?」
「はい。二年生からはそれぞれの専門分野に特化して学ぶことになりますから、魔導具開発専攻の先輩であれば、きっとアナさんの求めるものも作れるはずですわ」
そんなわけで二人は、魔導具開発専攻の上級生がいる工房へとやって来た。
「ここが…上級生の…」
そう、今この場にいるのは魔導具開発専攻の二年生や三年生たちであり、知らない人に自分から話しかけるのがあまり得意ではないアナは結構尻込みしていた。
「シオンさん、先輩の中に…どなたか知り合いとかは…」
「いませんわ」
つまり全く知らない上級生に頼みごとをしなければならないわけで、それはアナにとっては結構ハードルが高かった。
「シオンさん、やっぱり…そのっ、こういうのはお店とかで依頼をしたほうが…」
アナとしては知らない上級生に頼むよりも、店などで製作依頼を出すほうが気が楽なようである。
実際研究協力者の光属性魔導師も、魔導師科の生徒には頼まず冒険者ギルドに探しに来ていたわけで。
しかし…
「でもオーダーメイドの杖をお店で注文するとなると、結構な値段になると思いますわよ。アナさん、予算のほうは大丈夫ですの?」
「それは…その……」
どうやらそこまでの金銭的余裕はアナにはないらしい。
「でしたらやはり、先輩たちにお願いするしかありませんわね」
「は…はい…」
「ではまずは、あのあたりから声をかけてみましょうか。行きましょう、アナさん」
こうしてアナはシオンに手を引かれながら、魔導具開発専攻の上級生たちのもとへと向かっていくわけだが、果たしてアナの求める杖を作ってくれる者は見つかるのか……。




