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ペルセウス座流星群の下で-23


「あぁ。さっき、お祖母さんから電話があったそうだ。『遅くなってすまない。やっと片がついた。明日のお昼前に迎えに行く』と」

「お祖母ちゃんから?」

「迎えに来るの?」

「うん。2人にも、心配してくれる大人が居たんだよ」


 美代と沙代はお互いの顔を見合わせ、笑い合って、それから泣いた。やっと泣き止んだはずの沙代も美代と抱き合って泣いた。この1週間、気丈に振る舞っていた2人がどれだけの不安を抱えていたのかがよくわかる。2人の普段の飄々とした様子は、不安や不信を遠ざける為の態度であって、自分たちが今以上に傷つかないようにする為の防衛手段だったのだ。

 5人の間の空気にようやっと平穏と落ち着きが戻ってきた。みんなで家出をしようと計画し始めた時にはどうなることかと不安も大きかったが、やって良かったと姫乃は心の中で呟いた。お陰で自分と向き合い、友人たちの意外な一面を知り、そしてそれぞれが以前よりも自分の未来に希望を見出せた。そうであると、姫乃は信じたかった。

 双子が、「みんなごめんね。嫌なこといっぱい言って」と頭を下げた。双子の気持ちが手に取るようにわかる4人は、「さすがにあれは酷かったよねー?」、「お嬢様は黙ってろって言われたしー?」、「私は『大人ぶって』とか言われたっけなー?」といつもの双子の口調を真似て茶化した。


「わーもう本当にごめんなさーい!」


 沙代が土下座するように突っ伏した。他の4人は声を出して笑い、「なんでピースまでそっち側で笑うのさ」と沙代は頬を膨らませる。


「はーおかしい。私、あんなふうに大きな声を出して友だちと喧嘩するの初めてで。すごく緊張した」

「いやーびっくりしたな。お父さんに啖呵切った時より声が出てたぞ」

「え!? ほんと!? ごめんねうるさくて。加減ができなくて……」

「いやいや、いいんじゃないか? エアリーはこうやって真っ正面からぶつかろうとする人なんだってわかったし。ちょっとレオと似てるよな」

「え!? そうかな? あたしいつもあんな感じ?」

「まぁレオはもう少し短絡的な気がするけどな。シーズにもすぐに食ってかかってたし」

「レオはすぐ怒るよねー」

「怒る怒るー」

「怒らせてるのはそっちでしょー!」


 こうしていつもの鬼ごっこが始まって、いつもの5人に戻った。いや、以前よりももっとお互いの心の距離は近くなっていた。全員が、隠し事もわだかまりも無く、言いたいことを言う為のハードルを越えたような、清々しい気持ちになっていた。


「はぁあ。慣れないことしたからお腹空いちゃった。ビスケット、みんなで食べよ?」

「いいねぇ! あたしずっと狙ってたんだー!」

「実は私も。もうお腹鳴りそうで冷や冷やしてたんだ」

「ピースまだ1つしか食べてなーい!」

「……うちも、食べていい?」

「もちろん! 今度はみんなで作ろ! 次こそは焦がさないようにしなきゃ……」

「これ、エアリーが作ったのか。道理でいつもと見た目が」

「いやー! それは言わないでー! これでも花野さんに教わりながら作ったのー!」

「エアリー、意外と不器用?」

「ぶきよー」

「ぶきよーだー」


 顔を真っ赤にして俯く姫乃。自分が作った物を嘘無く美味しいと言って食べてくれる友人たち。姫乃は自分の部屋からまたチョコレートとアーモンドを持ってきて全員に振る舞った。美代と沙代も持ってきていたお菓子を広げた。カロリーやらニキビやら不摂生やらを頭から排除した、正真正銘の楽しい女子会が始まった。

 それぞれの小さい時の話、小中学校の時の話、恋バナ、ムカつく先生、時には真剣な進路の話、好きなファッションの話、オススメのお菓子。どれも友人となら何時間でも話せる、他愛なく、しかし重要な話題だった。特に恋バナは盛り上がる。


「えー! 佐々木がー? 絶対無い! エアリーの考えすぎだよ! あいつあたしのことただのゴリラとしか思ってないし!」

「そんなことないと思うけどなー」

「その佐々木とやらを私は知らないが、実のところエアリーはどう思ってるんだ?」

「気になるー!」

「好きなのー?」

「す、好きなわけないじゃん! あんな奴!」

「えーホントにー?」

「ホントのホントにー?」

「ま、まぁ。悪い奴じゃないってのは、この前わかった、けど……」

「ひゅーひゅー!」

「いいじゃんいいじゃんー!」

「うるさいうるさい! そういうみんなはどうなのさ!」

「それで言うと私は春休みまでは彼氏が居たぞ?」

「「「「えぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」」」」

「なんだよ! そんなに驚くことか?」

「いやいやだって! アクア全然そんな素振り見せなかったじゃん!」

「去年までってことは今は居ないの?」

「なんで言わなかったのー?」

「なんで別れちゃったのー?」

「いやまぁ、そういう話にならなかったのもあるし、別にいちゃつくとかもお互い無かったし……ほんとにこれ付き合ってるって言えるのかってなって、受験もあるし話し合って別れたんだ」

「えーなんかあっさりー」

「元彼もっとがんばれー」

「いや実は後日談があってな」

「お、なんだなんだ?」

「いやな? 元彼、私と別れた後すぐに別の女と付き合って、教室でもイチャつき始めたんだ。私の時は一切そんなことしなかったくせに……!」

「うーわ! 最低だその男」

「最低だね」

「別れてせいかーい!」

「むしろノーカーン!」


 恋バナになると一気に会話に速度が増し、お菓子を食べる手も止まらない。こうしてあっという間に夜は更けていき、双子が寝落ちしそうになっていたので一旦お開きにしようということになった。折角だから、このままみんなで眠ろうということになり、歯磨きをして、それからみんなで手分けしてそれぞれのマットレスを双子の部屋に運び込む。全員分のマットレスと掛け布団を運び終えたら、それぞれが自分の布団にダイブした。

 元々眠さが限界に達していた双子はすぐに眠りに落ち、玲奈も2人を追うようにすぐに眠る。姫乃と優紀だけが深夜の暗闇の中に意識を漂わせていた。


「ねぇアクア」

「ん?」

「どうして星見会を作ったの?」

「え?」

「いや、まだその答えを聞いてなかったなーと思って」

「そういえばそうだったな。そんな大した理由じゃないんだが」

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