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祖父母をたずねて家出兄弟二人旅  作者: 泉 きよらか
第5章 アグリ国王都ニュシャの光と闇

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114. 救児院 2

\ Merry Christmas /

ということで、後書きに作者からのクリスマスプレゼント(?)情報などを記載いたしました。

「わたくし、修道女(シスター)見習いのユヴィと申します。本日はどのようなご用向きでしょう?」


 女性……ユヴィさんの言葉にハッとした僕たちは、馬車に寝かせたままの修道女(シスター)を確認してもらう。


「間違いなく、当院の修道女(シスター)ですわ。大変! どうしましょう。治療師をお呼びして……いえ、まずはベッドに寝かせて差し上げるのが先決ですわね」


 おろおろと狼狽(うろた)えたかと思うと、ユヴィさんは僕たちに真摯(しんし)に頭を下げた。ハーフアップの後ろ髪がさらりと前にこぼれ、ユヴィさんが腕に抱く赤ちゃんが「あーう」と小さなお手々で握り締める。


「ご足労をかけたうえ厚かしいお願いではありますが、どうかお手をお貸していただけないでしょうか。なにぶん当院は女子どもばかりで、彼女を運びこむのは難しいのです」

「もちろん、お手伝いしますよ。……チボーが」


 僕とリュカ、それにグルマンドは戦力外だろう。意識のない女性を抱えられるほど、力はない。となると、残るは騎士として訓練を積んでいるチボーだけだ。


「えええ。オレっすか?」

「お願いね」

「うへぇい」


 チボーは渋い顔をしながらも、おっかなびっくり修道女(シスター)をおぶって、部屋に運びこむ。

 そうして、修道女(シスター)の具合は心配だけど、長居するのも悪いかと逡巡(しゅんじゅん)していた僕たちは、「せめてお茶だけでも」と引き留められてしまった。


 ♢


「おきゃくたま、おにゃまえ、なあに?」

「僕はルイで、この子は弟のリュカだよ」

「りゅいたま、りゅかたま!」

「小さいのに、偉いね。『さま』がつけられるなんて」

「えへへ〜。ちちゅた、おしょ……おちょわった!」


 案内された食堂兼リビングで、僕たちはたくさんの子どもに取り囲まれた。お名前は? どこから来たの? 遊んで! と興味津々だ。

 出されたお茶をゆっくり飲む暇もないけれど、可愛らしいおもてなしに僕は幼かった頃のリュカを思い出してほっこりする。


「おにいたん、あっちぃ!」

「ぼく?」

「クク?」


 リュカとメロディアは子どもたちに引っ張られて、あっという間に一緒に遊びはじめた。「とまれ遊び」という「だるまさんが転んだ」のようなゲームだ。子ども同士、仲良くなるのが早い。

 片やチボーは「だっこ!」とねだられ、グルマンドはお腹をタプタプされている。二人とも、子どもたちに大人気だ。


「あ〜う、ぶぶぶぅ〜」

「きみも一人遊びが上手な良い子だね〜」


 僕は腕に抱いた赤ちゃんに笑いかける。治療師の出迎えに行ったユヴィさんから、預かったのだ。

 お口を三角に尖らせてブーブーと吹き出す仕草も、ほんのり香る甘いミルクの匂いも、何もかもが懐かしい。自分の目尻が下がっている自覚はある。


「――極度の疲労と空腹じゃろうて。しっかり食べて、よく寝てりゃあ治る。ほな、お大事に」

「先生、ありがとうございました」


 その時、ふっと風に乗って、そんな会話が聞こえてきた。


(馬車とぶつかった怪我が原因じゃなくてよかったけれど、疲労と空腹?)


「……どうしましょう」


 はあとかすかにため息を吐いたユヴィさんに、僕はますます首を傾げた。

 子どもたちはお下がりを着まわしているのか、ところどころ端切れで繕われた跡のある衣服だけど、清潔で健康そうに見える。

 それに、この部屋を見る限り、質素ながらもきちんと掃除が行き届いていた様子で、居心地も悪くない。


(うーん。一見するとわからないけれど、もしかして運営が厳しいのかな?)


「あの……ユヴィさん?」

「まあ。お恥ずかしいところをお見せしてしまいましたわ」

「いえ、その。……もしよければ、僕たちにお手伝いできることはありますか?」


 乗りかかった船だ。もし寄付を募っているようなら、力になれるかもしれない。

 ユヴィさんは僕の目の前に座り、迷いつつも口を開いた。


「……悲しいことに、ここ最近、孤児が増えつつあるのですわ。元々、当院は二人の修道女(シスター)が細々と運営していた小さな救児院ですの。ですから、孤児が増えた分、物入りなことも多く……。その、手元不如意なのですわ」

「なるほど」

「それに、わたくしは通いの見習いですから、それほどお役には立てなくて……。きっと修道女(シスター)が倒れられたのも、これまでの無理が祟ったからですわ」


 聞くに、修道女(シスター)たちは運営費を切り詰める傍らで、苦労して準成人を超えた子どもに住み込みの見習い先を探してやったのだそうだ。

 だから、いま救児院に残っているのは、お世話の必要な赤ちゃんや幼児がほとんどだと言う。もう一人の修道女(シスター)は、二階で数人の赤ちゃんの面倒を一手に見ていて、とてもではないけれど手が外せないらしい。


 必死で赤ちゃんだったリュカを育てた僕にとって、ユヴィさんの話はただただ胸が痛かった。


(僕たち兄弟は運良く頼りになる大人が身近にいたから良かったけれど、もしそうじゃなかったら……)


 救児院に助けを求める未来だって、あったかもしれないのだ。そう思うと、他人事だなんて割り切れない。


「あの、僕、寄付を……」

「ちちゅた、ぼく、おにゃか、ちゅいたの」


 僕が言いかけると、いつの間にか近づいてきた子どもが、指を(くわ)えながらユヴィさんの裾を引っ張って訴えた。

 気がつけば、午後のおやつ時を過ぎている。ぐるぐるとお腹を空かせた音が、僕にまで聞こえた。


「ごめんなさいね。夜のお食事まで、まだもう少し時間があるの。良い子に待てるかしら?」

「……うん」


 その子は、お腹を抑えながらしょんぼりと頷く。その下がった小さな肩があまりにも可哀想で、僕はついユヴィさんに尋ねた。


「あの、子どもたちにおやつは……?」

「当院では……」


 ふるふるとユヴィさんは(かぶり)を振る。

 その曇った表情から、きっと食事を食べさせるのがやっとで、おやつまで食べさせる余裕がないのだろうと僕は察した。


(でも……)


 小さな子どもは、一度に食べられる量が少ない。だから、できれば日に二回、食事のほかにおやつをあげるのが大切だったりする。

 お腹が空けばイライラするのは大人だって同じ。小さな子どもであれば余計に我慢なんてできないし、最悪、ぐったりと元気がなくなることだってあるのだ。

 だからこそ、僕はリュカのおやつを欠かさないように、いつも気を付けていた。


「……そろそろ弟におやつを食べさないといけないので、もしよければ子どもたちも一緒に食べませんか? 僕、収納(ストレージ)に色々食材をしまってあるので」

「けれど……あの、ご迷惑では?」

「いえ! おやつはみんなで食べた方が、美味しいですから」


 僕はそうにっこり笑って言うと、収納(ストレージ)から次々と食材を取り出した。

■ クリスマスプレゼント

カクヨムサポーター限定で公開していた特典のショートストーリ9本を、すべての読者さまに公開致しました。

なろうなのに、カクヨムに遷移いただく形になって申し訳ありませんが、冬休みの暇つぶしにお読みいただければと思います。

https://kakuyomu.jp/users/izumi_kiyoraka/news/16818093090863862172


■ 書籍版のお買い得情報

・ピッコマ:56話中18話分が無料で試し読みできます。こちら、12/27(金)23:59まで! あと3日です。

https://piccoma.com/web/product/175619?etype=episode


・シーモア:新規無料会員登録限定で、70%OFFで購入いただけるそうです。また、レビューを投稿していただくと、相応のポイント付与もあるのだとか。

https://www.cmoa.jp/title/1101437968/

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ピッコマでも配信されています。

書籍版①〜③巻も好評発売中です。詳しくはこちらから

― 新着の感想 ―
継続的支援がないのに甘いものやら知ってしまうと悲しい。まあ、将来の人材投資でなんとかなるんやろうけど。
国が適切な支援を行わないと孤児の保護は大変だよね。
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