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007 冒険者ギルドへ行こう

「はい。ここが冒険者ギルドだよ」

「てか、近っ」


ものの数十メートル、1分も歩かないうちに私たちは冒険者ギルドへ辿り着いた。

何だったら最初から建物の一部が見えていた。ひと際大きい青い屋根の建物がそれだった。

建物正面にはでかでかとした、剣をクロスさせたシンボルが鎮座している。

これは誰にでも何の施設、お店なのかを分かりやすいようにしたものだ。

ポルェ族は読み書きができない。それは一部の人族も例外ではない。

この世界での識字率はそれほど高くはない。この町だけを見ても人口の6割ほどしか読み書きを習得していない。なので、店の看板は文字と合わせて絵を添えてある物を使うことで文字の読めない者にも対応している。

大抵は軒先まで商品を並べて置くので外観でほぼ何の店なのかは分かるが、武器屋なら剣のマーク、鍛冶屋ならトンカチのマーク、宿屋なら太陽と三日月のマークなどデザインは自由なので店の店主は密かなオシャレとして看板にはこだわりを持っている。異世界あるあるである。


「それにしても立派な建物なんにゃ~」


他の民家や店のシンプルな外装とは違い、冒険者ギルドは支柱に彫刻が施され、至る所に装飾が施されている。お金のかかってそうな凝った造りだ。建物自体も大きく、他の建物の敷地の4,5倍はありそうだ。しかも3階建てで、上の方から複数の綺麗な青い垂れ幕が下がっており貴族の屋敷だよと言われた方が納得するような他とは明らかに存在感が違っていた。


「そだね、もともとは貴族の屋敷だったんだけどね。貴族が死んだか町を出たかしてさ、それを冒険者ギルドが買い取って使ってるんだ。おっと、この情報は無料だよ。なんせ僕が生まれるずっと昔の話だからね。お金を取るほど詳しくないしどうでもいいことだからね」

「ふーん」


薄い反応を取っておく。すぐに情報料と声高に言われても嫌なので、ルインに対しては塩対応でいくことに決めた。

大きな門のような入り口から中に足を踏み入れる。


「じゃあ僕はちょっと人を探してくるからルクスはその辺で待っててよ」


そう言い残しルインは向こうへ行ってしまった。

中はとても広く、中央正面にででーんと大きな看板が立っていてそこに無数の紙が貼られている。これがいわゆるクエスト依頼だろう。うん、まったく読めん。

奥にいくつかカウンターがあり、そこで冒険者が何やら手続きやらクエストの納品みたいなことをしているようだ。

酒場でも併設しているかと思ったがそんなことはなく、ちょっと休憩できそうなテーブルやイスが各所に配置されている。どこも冒険者で埋まっているので取り合えずベテラン冒険者臭を漂わせながら壁に寄りかかってみる。


「あーでも酒臭くはないけど若干汗臭いかもにゃ」


これもポルェ族ゆえ鼻が利くのかそれとも気になるほど臭くなってるのかは分からないがなんか空気の籠った運動部の部室みたいなかほりが漂っている。

冒険者の男女の比率は8:2くらいだろうか。もちろんここに冒険者全員がいるわけじゃないだろうが、現時点での比率はそんな感じになっている。やっぱり男のほうが圧倒的に多い。

冒険者の仕事には危険がつきものだ。そのためか荒くれ者というか血の気が多い者が多い。憧れの冒険者ギルドではあるが見た感じ誰もがいかついので緊張していまう。ルイン早く帰って来て。


「ねーぐるさんた」

「あいあいもー」


そして多くのポルェ族が右端の方で何かやっている。ルインも向こうのほうに歩いて行ったが、ケモケモしい連中がわらわらと動いているのが見える。

私と同じ種族『ポルェ族』猫獣人の彼らは語尾ににゃ~とかつけていない。私の中では常識だったが、どうやらアニメの中の話だったようだ。でも私は可愛いからいつまでもにゃーにゃー言い続けてやる。

見たところポルェ・ミミは一人もいないようだ。町に行けば猫耳美少女がわんさかいると思っていたが町の中で見かけたポルェ族は今のところ全部ケモケモしていた。

クロイツが希少とか言っていたが、他に猫耳美少女がいないのでは悲しい世界に来てしまったのだと泣けてくるよ。

そんな感じで暇を持て余していると空いてるカウンターの受付嬢と目が合った。

ニコリと笑顔を向けられ手を振ってきたので手を振り返す。するとあれ?みたいな顔をされて今度は手招きをされた。はて?


「何か用かにゃ?」


するりとテーブルの間を縫って受付嬢のところまでやってくる。


「こんにちは。今日はどうしたの?ネームを紛失してしまったのかしら?」

「ねーむ?」


事務的というよりかは気さくな感じで話してくる受付嬢。胸元にたぶん名前のプレートがついているが残念ながら読むことはできない。

すると受付嬢が自分の首元をちょいちょいと指差す。


「?」

「ほら、あなたネームつけてないでしょ?」


あー察し。要は身分証明みたいなものだろう。


「あー、ココには今日初めて来たんだにゃ、何か登録して発行するのかにゃ?」


ギルドで冒険者登録。ここに来た目的だ、自分の仕事だと思って気を利かせて話しかけてくれたんだろう。


「そうでしたか、これは失礼しました。私はここでギルド事務員を務めています、リムメリムです」


受付嬢改め、ギルド事務員リムメリム。特にこれといって特徴はなくショートヘアのお姉さんだった。


「私はルクス、今日は冒険者登録したくてここに来たにゃ」

「は?」


え?

そんな聞き返しのされ方するとは思わなかった。

すぐに営業スマイルに戻ったリムメリムは咳払いを一つ。


「えーと『主従労働許可証』のことですね。ここは冒険者専用の窓口になりますので、あちらのポルェ族専用の窓口で登録してください」


リムメリムが促した先にはポルェ族がわらわらしている。その奥に小さなカウンターが見えた。


「しゅじゅー・・・?たぶんソレじゃないと思うにゃ。私は冒険者になりたいんにゃ」

「あー・・・冒険者ですか?町で働きたいのではなく?」

「おーっと見た目で判断されちゃ困っちゃうにゃ。見た目は可愛くて幼い美少女でも、いずれ伝説と呼ばれるような強い冒険者になる逸材にゃ」

「だはははははっ!!おもしれーなお前」


突然の笑い声にビクリと体を反転させる。するとそこには山のような大男が立っていた。


「ひぃ」


ルクスの身長は小さい。普通の成人男性とでも見上げて会話するようなのに、この大男はゆうに2メートルを超えている、かもしれない。目の前に立たれて物凄い圧を感じる。


「お前はアレか、吟遊詩人の物語でも聞いて憧れたクチか?こんなちんまいのに冒険者なんてできるわけがねーだろおい」

「な、な、な・・・」

「ガイスさん、その子まだ子供じゃないですか。ダメですよ、ポルェ族だからって夢を見ちゃいけないなんてことないんですから」


大男の横からひょっこりと顔を出す別の冒険者。

それを合図にでもしたかのように周りの冒険者たちが集まってきた。


「何々?何の話?うわーこの子可愛い。ミミなんて珍しいね」

「なんすか?揉め事すか?」

「ガイスさん何だったら俺等が手を貸しましょーか」

「あ、儲け話ならウチにも一枚かませてくださーい」


あっという間にルクスは冒険者たちに囲まれてしまう。ガイスと呼ばれた大男の方に集まってきたわけだがガイスが注視するルクスに自然と注目が集まっていた。急にそんなことになるもんだからルクスはたじろいでしまう。人の壁が否応なしに圧迫してくるのだ。


「おう、お前ら。なんかこの嬢ちゃんがな、冒険者やりたいんだとよ」

「・・・・・・ぶふっ。あっはははははははははは!!!」



一瞬の沈黙の後、ギルドは爆笑の渦に包まれた。


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