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004第一異世界人との遭遇

「にゃあああああっ!ちが、違うんですぅ。これはそういうんじゃなくてっ、露出狂とかヘンタイじゃないのおお!!」


その場にしゃがみ込み、両手で胸を隠す。

なんか勝手に自動で言い訳を叫んでしまった。少年は大声にびくついたものの依然として私を見上げている。


「いいい言っておくけど私の方が被害者なんだからねっ。私に手ぇ出したら犯罪なんだからねっ」


冷や汗はかいているけど顔が熱い、涙目で声が上ずってしまっている。ウソみたいに動揺してしまっている。いや普通に恥ずかしいよ。男の時だって裸を見られるのは抵抗あったもの。

少年は何も答えない。ただ見てる、食い入るように凝視している。

くそー、怯むな私!

相手はまだ子供だ。丘の上の高低差があるからワンチャン私の方が有利だし、しゃがんでるから大事な部分は見えてないぞー!


「おぱ・・・おぱ、れれてもぅー」

「・・・ん?」


なんて?おっぱい?やばいじゃんこいつ、子供のくせに私をどうにかしようとしてんのか?!


「おぱ・・・れれてもぅー?」

「・・・ちょっと君、何言ってるかわかんないよ。分かる言葉で話してよ。お、おっぱいは触らせないからお願いしてるならダメなんだから。もう、見てないであっち行きなよ、しっしっ」


あくまで冷徹に、感情を殺した声で。

とにかく動けない。逃げたいけどどこに逃げていくのか見られてしまう。こんなん追いかけてきたらワンパンできそうだけど背中を見せるのはまずい気がする。

美少女としての本能が警告を発しているのだ。あとついでにしっぽもぶるんぶるんしているのだ。


「びおぱ、かんもぅー」


少年はそう言うと、向こうへ走っていってしまった。


「いっちゃった・・・」


助かったー。

私はほっと胸をなでおろした。心臓がバクバクいってるのがすごいわかる。

とにかく今のうちに逃げよう。何言ってるかわからないし、仲間でも呼びに行ったんなら厄介だしね。


「もぉ~、異世界語とかマジ詰んだー。赤ちゃんから始めてたらこんなことにならなかったのにぃー」


ほらね、言葉通じない理解できない謎言語の登場だよ。知ってました、むしろ想定内の予想通りでした。

裸を見られたことと、よわよわ異世界転生のツケを払わされた事でお怒りモードなのです。


「おぱ!びおぱかん!」

「にゃっ?!」


一考してる間に少年が戻って来た。こいつやりおる。一度安心させておいてからの不意打ちなんて、子供だと思って油断してた。

と、気がつけば少年が二人に増えている。やっぱり仲間を呼びにいってたんだちくしょー。

少年Aに対して少年Bの方が体が大きい。心得てやがる、助っ人を頼むなら強い奴に頼むもんな。

ん?よく見ると少年Bはスカートをはいている。女の子?

AとBの区別はつくけど性別までは正直わからない、獣人なんて初めて見るし、もしかしてだけど私を欺くための女装かもしれない。ここは異世界だ、油断はできないぞ。

いやでもこの突発的な状況でそこまで機転を利かせられるとは思えない。けど趣味で元から着ていたのかもしれないし。

追い込まれて時間が経てば経つほど不利な状況になっていく。

アウェイで守るより攻めていかないといけないなんて人生とは過酷なものよ。


「にーぜへる?やおぱあぐまぅーね」


少女?が今度は何か言っている、やっぱり理解できない。


「ワ、ワタシ ヘンタイチガイマス フクモトモト ナカッタ サムイ コマッタコマッター」


私はジェスチャーを交えて、って裸見えちゃうからできないけど取りあえず片言っぽく話しかけてみる。

とにかくコミュニケーションを取らない事にはどうにもならない。現地人に遭遇したら刺激しないように穏便に事を進めていかなければならない。悪意とか敵意は感じないけど、この高低差だけは保っておかないと。


「おねさん、ひとご、じょーずれす」


「!!!、日本語喋った!」


え、喋ったよね?日本語だよ今の、理解できたもん。急に?怖っ。


「おねさん、どしてふくない、なくした?とられた?」


やっぱり日本語だ、言葉が理解できると相手が心配してくれてるのとか、ちゃんと女の子の声だとかいろいろ分かる。


「えーっと私もうまくは言えないんだけど、気が付いたら裸で。あ、裸になるのが趣味とか気持ちいいとかじゃなくてね?」


異世界転生してきました、裸なのは設定ミスです。なんて言えないだろう、それは黙っておかなければいけない。理由?私の見てきたゲームやアニメではやっかいごとに巻き込まれないようにそうするのが常識だからだよ。


「とうぞく?とうぞく?」

「え、違う違う。危険なことは何にもないよ」


不安そうに聞いてくるから否定してしまった。やらかした、盗賊とか山賊に襲われたとか身ぐるみ剥がされて逃げてきたって言えば完璧な裸の説明になったのに。


「おねさんおいで、きてきて」

「えっ?」


不本意ながら痴女まがいの私を見て、獣人の少女は何を思ったのだろう。

少し考えたのち、手招きをして少女はそのまま向こうへ駆けていく、それに少年も続いていく。

え、もしかしてこれついて行かなきゃならないパターンなの?

私がそのままついてくるものだと疑いもせず少年少女はずいぶんと遠くまで行ってしまった


「覚悟決めるか・・・」


正直このままあてもなくさ迷うよりはいいだろう。

せっかく人?に会えたんだし、騙されたと思ってこの流れに乗ってみよう。


日本語を話したことで私はあの二人を頼ってみようと思った。うん、我ながらすごく単純だ。

遠くでは二人が手を振っている、私は何とかには見えない服でも着ているかのように堂々と歩き始めた。


******


「あぁ、お帰り。どうだった?無事だったかい?さっきの悲鳴はなんだったの?一緒に行けなくてごめんね。決して怖くて行けなかったんじゃないんだ、僕がここを離れたら馬車を守る人がいなくなっちゃうから仕方がないことだったんだ。わかるだろ?」

「ういうい。おねさんいたー」

「おねさん?え、うわっ」


ええい、ままよ!とついていった先には荷馬車があった。

そのまま少年はいそいそと馬車に乗り込み、少女は誰かと話している。

その人物と目が合った。私が生まれたままの姿だったので驚いたんだろう。


「ごきげんよう」


優雅という言葉がぴったりだ。私はさも当然のようにありもしないスカートの裾をつまんで軽くお辞儀をしてニッコリはにかんでみる。


「あ・・う?」


面食らっているのは眼鏡をかけた青年だった。

クセっ毛のある金髪に黒ぶちの眼鏡、私よりも少し年上な感じのおとなしそうないかにも草食系男子な風貌。

てか人間だこの人、ガチでヤバイ。


「おねさんこれきなー」


少女が馬車に積まれている荷物の中から服を取り出してくれた。ありがたい、裸ネタはもう十分だろう。


「ありがとうにゃ」


テンパって忘れていた安直な語尾も使いだし、差し出された服に袖を通す。

って、袖がない。袖なしワンピースや!

それは白地のワンピースで差し色に水色を使った可愛いデザインのものだった。

しかもちゃんとしっぽ用の穴も開いていた、最初から獣人が着る用に作られている。

はぁ~これが女の子の服かー。本当だ、噂通り下の方がスースーして心もとない感が何とも言えない。

悪いことをしているような気持ちだがもう私は女の子だからね変態でも女装でもない。


「どう?いい感じかにゃ?」


ここは当然くるっと回ってみる。遠心力に従ってスカートがふわりと広がる、やだ楽しい。


「おねさんきれいー」


少女が褒めてくれる。まあ美少女だし当然のことだけど言われて悪い気はしないもっと褒めて。

荷馬車にはこれでもかと言わんばかりの大量の荷物が詰め込まれている。見た感じ食料品に衣類、雑貨、日用品どれも真新しい物ばかりでこれはいわゆる行商の馬車なんだろう。


「でも私、お金持ってないにゃ。この服も中古にしちゃったけど何にも払うものがないんだにゃ」


胸に手を当て、心苦しいような表情で、青年を見つめる。


「いいよーおねさんあげるよー」

「えっいいの?」

「ういういーこまったときはたすけいるー」


青年ではなく少女から返事が返ってきてしまった。いいの?と青年を再度見つめてみるが何も言わない。返答に困ったのか愛想笑いを返された。なんで?極度の人見知り?それとも私よりちっちゃいこの少女が馬車の持ち主だとでもいうのだろうか?


「お腹もすいたにゃー」

「おねさんこれたべなー」

「のども乾いたにゃー」

「おねさんこれのみなー」

「お金もほしいにゃー」

「おねさんいくらいるー」


何を頼んでも少女が答える。よしわかった主導権のあるほうに私はとりあえず媚びることにする。

というか全部一発OKか。

これは親切ってレベルじゃない。言われるがままポンポン出して考えなしのおバカさんの行動だ。

少女は金庫っぽい箱から簡単に革袋を取り出し、そのまま私に渡してきた。

これ全部くれるの?それとも好きなだけ持っていけということか?ズッシリと重いその革袋には銅貨がパンパンに詰まっていた。


「あのさ、マニャレ?さすがにそれはやり過ぎなんじゃ・・・」


ここでようやく青年が口を挟む。そうだ言ってやれ私もお金を握らされてどうしていいか分からなくなってきたところだ。


「そのお金は今月の稼ぎなんだから、里に帰って皆で均等に分けなきゃいけないよ。ちょっとくらいのつまみ食いなら許されるだろうけど、これも里全体で分けるものなんだから一人の子に与えすぎるのは後で問題になるかもよ」

「ちがちがー、さとのこちがよー」

「え、里の子じゃないの?えーと、それじゃあ町の友達かな?」


青年がマニャレと呼んだ少女と私を交互に見比べる。


「ちがよー、おねさんはじめてあったー」

「ええっ、知らない人に物をあげちゃダメだよ」


さすがにやばいと思ったのか青年は即座に私から革袋を取り上げる。

うぅひどい、私は盗ったりしないのに。


「おねさんこまってるのたすけるはあたりまえよー」

「そこはポルェ族の良いところなんだけど、えーと・・・」


青年の言うことは正しいし、少女の行いも間違いじゃない。ダメ私のせいで争わないでっ。


「まーまーまー、お腹空いてるとか軽い冗談だったにゃ。お金もいらないし、食べ物もほーら元の場所に返すにゃあ」


二人の間に割って入り荷馬車に水と食料を突っ込む。これで一件落着すべて元通りだ。

にこっと微笑んで、少し怪しくなってきた場の空気を和ます。

すると青年が咳ばらいをひとつ。


「あー、僕の名前はクロイツ。ウォートレルの学生だ。何か困ってるってことだけど、良ければ事情を聞かせてくれないか?」

「あいはマニャレー!おとーとはグミタレ!」

「おぱ!おぱけれにーたた」


青年クロイツに続いて、少女も弟も名乗りを上げる。弟だけは相変わらず何言ってるか分からないが私の素性についてはもう考えておいた。


「私の名前は・・・うっ頭が!!!」


私はわざとらしく頭を抱えてへたり込む。


「おねさんっ?!」

「おい、急にどうした?!」




「うぅ・・・。私は・・・記憶喪失なんだにゃ」


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