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024 ポルェ族インザニューヨーク

「ごちそうさまでしたにゃー」


ポルェ族の宿舎にて、ルクスたちは夜ご飯を食べていた。

あの後は、みんなが手伝ってくれたので台車を複数借りて1回で全部の端材を運ぶことができた。

日が沈むと仕事は終わり、ご飯の時間になったのだ。

デニーロさんがレシピ通りに作ると問題なく美味しく麦粥を食べることができた。

酸っぱい果実の切れ端は、もういらない。けど食べるよ、ビタミンが欲しいからね。麦粥だけじゃ栄養偏るよ。


「改めまして、ミミのルクスですにゃー。みんなこれからよろしくにゃ」

「みそぽー」

「えむふぁなす」


ご飯が終わると私は仲間のみんなに挨拶をした。これからこの宿舎でともに生活していく。仲良くしていきたいですよ。

ポルェ族だけになると相変わらず獣人語が出るようだ。ここでも強制しないと。


「みんな!ここは人族の町にゃ!ここで暮らしていくには常日頃から人語で話した方がいいにゃ!フローベルさんたちもそう言ってた気がするような気がしないでもないかもしれないにゃ。ね、人語で話そうにゃ」

「・・・」

「・・・・・・」

「わかったー」

「はいー」


うまくいったようだ。素直なのは良いことだよ。


「みんなは人族の町にきて長いのかにゃ?町での労働って過酷じゃないかにゃー?」


夜は長い。ご飯を食べれば寝るだけという娯楽の無い生活らしいので、雑談タイムだ。

お互いに自己紹介は済ませ、ここでの決まり事なんかの説明を聞く。いっぺんに名前は覚えられないし、ご飯を食べたあとはすぽぽぽぽーんと服を脱いだので誰が誰だか分からなくなった。

電気のない異世界の照明というのは基本はロウソクだ。柱に簡素な燭台が備え付けられている。宿舎を照らすロウソクは仄明るく辺りを照らしている。すぐに寝ることと、猫獣人なので夜目が利くのでロウソクはかなり長いままだ。ちなみに私は夜目が利かない。ミミだからか、転生者だからかは不明だ。だから暗視のポーションとかズビズビ飲まないと暗闇では何も見えない。

宿舎の壁側にはずらりと藁が敷き詰めてあるが、これが寝床らしい。場所は決まってないので空いているところで好きに寝ていいとのことだった。藁に寝るなんて正直・・・と思ったがこれが結構暖かい。

隙間風の通るボロ壁を塞ぐように机代わりの木箱を移動して、藁全体をもっと中央に寄せれば輪になった寝床の完成だ。修学旅行みたいで楽しいかも。


「たいへんもたのしいー」

「まちのためがんばるー」

「はたらけてしあわせー」

「生まれながらの社畜精神にゃー」


藁に収まると生活習慣の賜物か、大半のポルェ族は寝てしまった。猫は夜行性なんていうけど実際は夜は寝てるし、ポルェ族もあれだけ働けば疲れて寝てしまうのだろう。まだ起きているメンツと会話していく。


「私はこんなに肉体労働したことなかったにゃー。みんなもこんな小さいうちから働くとか偉いんだにゃあ」


子どものうちからガッツリ働くなんて日本じゃ考えられなかったもん。バイトにしたってレジとかだし、数時間程度なものでしょ。肉体労働って大変じゃない?私も今日は朝からよく働いたよ。疲れてるし、あったかいから眠いなぁ。


「はたらいてえらいー」

「おとなだからあたりまえー」

「おとうさんだからがんばるー」

「んん?」


大人?お父さん?


「あれ?みんな何歳なんですかにゃあ?もしかして年上なのかにゃ?」

「ういめろー23さい」

「なっ」

「ぼく45になったー」

「まっ」

「35さいー」

「はっ」


げっ。嫌な事実が判明してしまった。人族の子どもと変わらない身長だし、声の感じも幼い感じなのに実は大人。見た目はケモケモしい猫獣人なのにお父さんということは性交経験もおありでいらっしゃるということ。汚らわしい!着ぐるみの中が美少女かイケメンだったらよかったのに、おじさんが入ってたという事実くらいショックだわ!あー夢が壊れた。

眠気も吹っ飛びました。勝手に仲間意識持ってたけどちょっと考えさせてもらおうか。

いやでも、精神年齢でいえば私も大人だしな・・・。


「そっか、みんなケガと病気に気を付けて安全第一で働こうね!」

「うい」

「あい」

「がんばるー」


私に言えるのはこのくらいだ。

よし、寝よう。歳を取ると睡眠は大事だからね。明日も過酷そうだし寝よう。

と、ちょうどその時、外から足音が近づいてきた。


「何だい、もう寝てるのかい?ルクス、起きな」

「にゃ?フローベルさんにゃ」


ポルェ族の宿舎にやってきたのは大きな手提げカバンを持った、商業ギルドのポルェ族担当主任のフローベルさんだ。

私は藁から這い出ると、フローベルさんの元まで駆け寄った。


「ルクス、あんた風呂に入ってないだろ。今から入りに行くよ」

「えっ、こんな夜半にですかにゃ?」

「夜半って、絶対意味を知らないで使ってるだろ。今はまだ19時前だよ」

「にゃーん。というかお風呂に入る文化あるんですかにゃ?」

「当たり前さね。ここは港町だからね、潮風で髪はゴワゴワだし肌はベトつくだろう?あんたはミミだし余計に入らないとダメだよ」


当たり前かー。この世界ではお風呂に入るのは日常なんだね。確かに、こっちに来てからお風呂入ってないな。元日本人としても一日の疲れと汚れを落としてサッパリしたい。


「行きますにゃー。みんなも行こうにゃー」

「おふろきらいー」

「ねてるます」

「ぐーぐー」

「ポルェ族は身体を濡らすのが得意じゃないからね。放っておきな。じゃあついといで」

「にゃにゃにゃっ」


そっか、そういうところは猫獣人か。じゃあひとっぷろ浴びに行きましょうかねー?

ランタン持参のフローベルさんの後を追いかける。町のはずれということでここら辺は暗い。


「お風呂ってどんななのかにゃ?どこで入れるんですかにゃあ?」


お風呂と一口にいってもいろいろある。大きな桶にお湯を張っただけかもしれないし、煮えたぎる鍋に入れと言われるかもしれない。銭湯のような施設があるのか、フローベルさんの自宅のお風呂に向かうのか。はっ、もしや天然温泉かけ流し?!


「宿屋の方に公衆浴場がある。そこに向かってるよ」

「ほーう。銭湯的なやつですにゃあ」


夕凪亭の前を通り過ぎ、冒険者ギルドも通り過ぎて町の入り口に着く。

ここから反対方向が複数の宿屋が並ぶ宿場になっている。まだ夕食時だしここら辺は灯りも人通りも多い。

夜の賑わいの中、はぐれないように歩いて行くと大きな煙突のある建物にたどり着いた。


「さ、ここだよ」

「へー、なんか真新しい建物ですにゃー」


フローベルさんの後に続いて中に入る。するとカウンターに妙齢の女性が座っていた。


「女2人だよ」

「へい、ごゆっくりどうじょ」


フローベルさんが私の分も代金を払ってくれる。そこで道が左右に分かれている。文字が読めないが男湯と女湯で分かれているのだろう。私たちは右へ曲がった。通路を進んで行くと広い空間へ出た。

楽しそうに談笑する女性たち。髪の濡れた女性たちが薄着や肌着そのままにくつろいでいた。


「あっ」

「ん?何だい」


私の足が固まった。

そうか、そうだった。お風呂に入るとはそういうことだった。

いや、女性の裸とか動画やアニメやアプリで散々見てきたわ。何を今更、こんなことでどどどど動揺とかしないんだからね!


「全然平気ですにゃ!」

「何がだい?いいから行くよ」


さらに進むと脱衣所、その先がお風呂だ。なんかもう店の造りが日本の銭湯と同じような感じだがどうでもいい。若い女性を見るとはわわと思うがそうじゃないとすん、てなる。まだお風呂に入ってないけど温まってきたなー。


「ここを使うかね。使い方は分かるかい、初めてだろう?」

「分かりますにゃ」


カギの掛かる戸棚に荷物を入れていくフローベルさん。タオルは無償レンタルで角に大量に備え付けてある。

そうだよ、今は同性だし気にする必要がない。男としての性欲も皆無だしお風呂を楽しんだらええんや。

私はすぽぽぽぽーんと服を脱いだ。


「さあ、入浴の時間にゃっ」


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