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その13


「……成り行きと言えど、何とかなったようで良かったようです。そう言えば、学園祭のこと聞いてます?」


 学園祭? 何それ。


「その様子だと聞いていないようですね。学園祭は全員参加が決まりですから、部活に入ってないようですし、学園祭準備側に回らないのであれば、保健室内で何かやることを考えておいてください」


 うそでしょ? 保健室内の人数は2人と、赤ん坊1人、動物大勢なんですけど……!

 まあ、石鹸とか品質低めのポーションとか販売すれば良いか。雑貨屋さんとかで良いかな? ミツとメルは教えたら、戦力になるし、どうにかなると信じたい。


「本当に聞いてなかったみたいですね、まあ管轄が晴火だからしょうがないでしょう。彼はイベントごとに興味なかったですから。

多分、これも知らないんでしょうね。この学園はあまりイベントをやらないんですが、必ず選抜で選ばれる武道祭と学園祭の2つ行います。

武道祭は学園主催で、学園祭は生徒会主催です。部活動をしてれば、部活費の稼ぐ良い機会なんです。部活してなければ、生徒会の手伝いをすれば手伝いしたことになります。……零さんはどうします?」


 事前準備かぁ……。

 そこまで同級生と関わる覚悟はできてないし、やっぱり保健室で雑貨屋さんでもやるかなぁ。保健室は一番端だし、廊下に机を並べてやれば、救護者が出ても保健室は使用できるし。


「生徒会と関わる気はありませんから、雑貨屋さんでもすることにします。幸い、石鹸やらあまり品質の良くないポーションとかの在庫もかなりありますし、それを消費するため雑貨屋さんでもします。それなら予算使わなくても、いけると思います」


 そう宣言すれば、葉月先生は苦笑いした。


「予算はちゃんともらえますよ。雑貨屋さんで変わらないなら、私が申請しておきましょう。3万くらいはもらえるので、石鹸と回復ポーション以外にも販売できると思いますよ」


「ぼっ、私にも手伝わせてください!! どうせ、部活入っていないので、暇していますから!!」


 ふーん、そうなんだ。

 ガーゼとか布とか買ってマスクとか、刺繍入りのハンカチとか作ろうかな。あと、ゼリーの材料買って回復ゼリーとか作るか、一応販売できる特許持ってるし。


 それより、この子はなんで僕の手助けになるようなことをしたいんだろうか? なんか対価が欲しくて、やってるのかな。そんなに心配しなくてもあげるのに。


「お願いします。

ねぇ、君。対価は回復ポーションで良いかな? 自分で言うのもアレだけど、品質はいいよ。鑑定と手伝いの分だから、これくらいで良いかな? 金銭のやり取りはいけないからさ」


「いりません!! 」


 そういった彼女は、涙を目に溜めていた。

 えっ……?! なんで?


「僕は、僕達は貴方に助けられました!! 結果、女子とバレてしまいましたが、相棒を鞭で打たなくて良いことには変えられません!! 僕には、貴方に返しきれない恩があります!! 対価は必要ありません、恩を返させてください!」


 僕は、彼女を助けたようなことをしたっけ? 女子生徒だとバレた、と言うことは僕と初めて会った時には男子生徒のふりをしていたと言うこと?

 彼女が誰だかわかった気がする。


「……亀くんは元気かな?」


 多分、おそらくだけど。きっとそう。

 彼女は葉月先生と模擬戦をした彼、だ。


「……はいっ、零様のおかげで元気です!」


 それは良かった、そう心から思う。


「様付けはこの学園ではルール違反だよ、せめてさん付けにしてよ。様以外なら、どう呼んだって構わない。……とりあえず、事情話すからついてきてくれる?」


 そう一方的に告げた後、僕はさっさとこの場から去る。歩き出したことを合図に、柊さんは僕の腕から飛び去り、コハクとミツは何も言わずともついて来た。

 ついて来たのを足音で確認した後、かいつまんで事情を説明すると、そんなことが……と彼女は嘆いていた。


「ぼっ、私……「別に一人称を無理に言い換える必要はないんじゃない? 君の話やすい方で話してくれて僕は構わないけど」


 なんで、男子生徒のふりをしていたかはわからないけど、女性だから僕といってはいけないルールはない。……まあ、社交場では私と名乗った方が良いのだろうけど。

 なんて、考えていると、後ろから鼻をすするような音が聞こえてきて、どうやらまた泣かせてしまったようだった。


「そう言えば僕、君の服少しひっぺがしちゃってごめんね。……僕そういうの鈍いから、気づかなくて嫌だったでしょ」


 申し訳ない。

 一応、他の人には見えないように彼女……彼って言った方がいいのかな、見えないように前に立ってたけど。


「いっ、いえ! 治療ですから! 」


 やっぱ、恩に感じることないんじゃないかな? 報酬は必要だと思う……なんて考えている時に、「……それに、女の子に戻りたいって自然に思えるようになったし」と顔を赤くして呟いていたなんて、とあるタイミングで告げられるまで、スルーをかましてしまっていたのだった。


「……ん? なんか言った?」


「……僕っ、確かに一人称はこうですけど、あれです! 自然と女の子の格好に戻るきっかけをくださったので、気にしないでくださいって言いました! 」


 そう?? なんかな??

 それにしては、顔が赤いような……。まあ、服を少しとは言えど引っぺがされるなんて、恥ずかしいよな。それを掘り返すなんてデリカシーなかったかも。

 ……これ以上、掘り返すのはやめよ。本人が許してくれるし。


 ……そう言えば、女の子に戻るきっかけになったってことは異性ってことか。それにしては、いつもなら感じる異性に対する嫌悪感とか感じなかったなぁ、なんでだろ?

 まぁ、いっか!


 保健室に戻り、一連の話を晴火先生にすれば、今思い出したみたいな顔をして。

「ああ、そう言えばそんなイベントもあったな。季水が生徒会長してたから、その手伝いをして、学園祭・武道祭参加とみなされていたから忘れてた」


 それはおいといておこう。人間だから忘れることくらいあるんだから。

 察しの良い先生のことだから、彼女を連れている時点で、鑑定スキル持ちを探している件はどうにかなったと伝わっていると思うから、まず学園祭について話をすればそう返事が返ってきた。


 自分もそのけがあるから何とも言えないけど、もう少し世の中に興味を持って方がいいと思う、晴火先生。


「先生のいた時代には季水が生徒会長だったからそれが曲がり通ったんでしょうけど、僕が現生徒会長と関わったらめんどくさいことに巻き込まれそうなので、学園祭準備に回るのは避けたいんですよね。

なので、大量に在庫がある石鹸と低品質の回復ポーション、それにもらえる予算からハンカチ、回復ゼリー、マスクを販売する雑貨屋さんで葉月先生に話を通してきました。事後報告になって申し訳ありません」


 そう言えば、「それもそうか」と納得してくれた。話が早くて何よりだ。


「人手が足りないんじゃないか? 武道祭と違って怪我人は出ないし、救護者が出なければ俺も手伝うが……。それにしても人手が足りないと思うぞ、お前の発作は何がトリガーになって現れるか定かじゃないんだから」


 それを言われると、困っちゃうな。彼女とメル、ミツだけじゃ足りないかな?


「それについては、森のゾンビ化も学園祭の件の件も彼女に力を借りようと思っているんですが……」


「足りない。あと最低でも2人探してこい」


 「今すぐに」と言われ、知り合いなんて少ないからどうしよ〜と考えながら、真っ先に新くんと戦闘狂に力を借りるべく、久しぶりに自分のクラスへと行くことになってしまったのだった。


 ……あっ、彼女おいてきちゃった。それに名前聞いてない。


 まあ、いいか。今から帰っても、いいから探してこいの一点張りだろうし、まずは学園祭での戦力を得なければ!


 結果、放課後冒険者活動を優先したくて、部活動をしていないらしい2人は、「どうせ文化祭の準備に回る予定だったから」と手伝いを快諾してくれた。……良かった!

 もう少し人手はあった方がいいんだろうけど、クラスのテイマーから向けられる感情を見るとこれ以上力を借りるのはやめといた方が良さそうだ。


 とりあえず、出し物の内容を伝えて、売り子と商品の梱包を頼むことになると伝え、真っ先に保健室に帰れば、そこには……。

 

「……あれからどうだ」


 晴火先生と彼女と2人で話す光景があった。……ああ、だから僕はいきなり出し物の人材探しに駆り出されることになったのか。と納得して、なんとなく中から見えない位置に移動した。


「無理に女子の格好しているわけじゃないんだよな、改めて聞くけど」


「……はい。性別定まってなかったんですけど、今は心と体の性は一致してます」


「あいつを好きになるとは……、苦労するぞ」


 きっ、きっかけって恋っ?!

 苦労するってことはもしやっ……!


「……今は伝える気はありません。僕と彼では立場も違いすぎるし……、これが恋かどうかも定かじゃなくて……。それに、この気持ちはきっと彼には迷惑になってしまうと思いますから……」


 道ならぬ恋!! つまり、教師に対する禁断の恋愛心ってことですね!!

 テイマーの常識に疑問を持っていた彼女は、それだけじゃなく、自分が女子が男子なのか自分のジェンダーに悩んでいた。

 そんなところに、テイマーの常識を覆す葉月先生が現れ、恋をした。しかし、彼と彼女は生徒と教師! その思いを告げれば、先生に迷惑をかけてしまう!

 そもそも、この想いも憧れなのかもしれないとも悩む彼女。せめて、女の子に見て欲しいと決心した彼女は意を決して女子の制服に袖を通した。なんで健気!! 好感が持てる!!

 おっと、まずいまずい。一人で盛り上がってしまった。


「……なんとなくだが、今は気持ちを伝えるのはやめといた方がいいんじゃないか? でも、もし、あいつのことを好きだって自信が持てるようになってら、気持ちは伝えた方がいい。意外と鈍感なところもあるから、ストレートに伝えないと誤解するぞ。

それに立場は関係ない、それがモットーな奴だから。きっと、傷つけるような対応なんてしないさ」


 そうそう! まあ、葉月先生と決まったわけじゃないけど、こんな健気な恋を僕は見たことがないです。……前世では、狂気を感じる一方通行な愛情しか向けられたことがないから、こんな純粋な愛情の行方を一方通行な恋で終わらせたくないって思う。

 陰ながら、応援してあげたい。


「……それでも、僕から伝えることはないと思います。迷惑かけたくないんです。好きだから、憧れているから、晴火先生に相談して、あの人の話を聞けたからこそ伝えちゃいけないんだって思いました。

……僕、幸せなんです。少しでもあの人のそばに居られるだけで、それだけで満足なんです」


 それなら、なんでそんなに苦しそうなの? 幸せだったら、そんな顔しないでしょ。

 僕の知っている恋している女の子は、僕が他の女の子と話しているのも許さなかったし、出かけるのも許してくれなくて、ほぼ軟禁って状態まで求められた。


 だから、恋している異性は怖かった。

 僕に恋している女の子は、そう言うタイプが多かった。でも、今よくよく考えてみると僕だけじゃなく、彼女達もあんまり幸せそうな顔をしてなかったなぁ〜って、彼女の今の顔を見たら思い出したんだ。


 恋って苦しい思いしかしないのかな?

 幸せそうな顔をしてなかったのは共通してると感じたけど、彼女と僕が知っている女の子の違いはあると思った。

 それは、彼女が恋していると知っても、恐怖も、嫌悪感もなかったということだ。


 なんでかはわからない。まあいいかと知らんぷりをしてしまおう。……だって、僕は20歳になるまで恋をしてはいけないのだから、僕には関係ないことだとわからないことを蓋をした。



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