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その12


「あーう!」


 ん? 珍しいな、柘榴が声を出すのは。手をこっちに向けてるから、抱っこでもしてほしいのかな?

 そう思い、うちの子達を撫でるのをやめて、晴火先生に近づいていけば、正解だったみたい。

 最近、うちの子になったばっかりだけど、そばにいた時間が長かったからわかる。目元が少し細くなってるから、笑っているんだってこと。


「抱っこしてほしいの〜、おいで〜」


 僕の方へ移動し、肩に顔をすり寄せ、服を掴んできた。かわいい。

 地面に座り、膝の間ではくつろぐ柘榴を撫でながらケアを続ける。


「……たまには、同年代の子と関わったらどうだ? そういう場でもあるんだぞ、ここは」


「無理でしょうね、それは。だって、テイマーの大半を敵に回していますし、そんなやつと仲良くしたいと思う人はいないでしょう。関わってくるのは新くん達くらいですよ」


 今大事なのは、有栖家の土地に送る前に少しでも保護した子達の心のケアをすることと、森のゾンビ化を防ぐ手段を見つけること、そして柘榴をしっかりと育てることだ。


「決めつけは良くないぞ」


 うっ、珍しく痛いところをついてくるなぁ。いつもなら、僕の魂の状態を思って、味方についてくれるのに今日は違う。どうして?


「お前を観察してみて、深くまで関わるのは同性だけなのは目に見えてわかることだ。それについては、トラウマが関係しているかもしれないから異性と積極的に関われとは言わない。だがな、学園に入ってから初めから新しい人脈を作ろうとしないで、保健室とギルドの行き来だけは良くないと思う」


 だって、あからさまに下剋上を目論んでるか、下心のある視線か、従魔を奪われたと勘違いして憎んだ目をしている人物かのどれかしかすれ違わないんだもん。関わりたいと思うわけないじゃないか。

 だから、身の安全が保障される保健室に引きこもりがちになる訳で。それがいけないことは理解しているけど、どうしても敵意を向け慣れていない僕はここに逃げてしまうのだ。


「……今年から国民の入学も増えた。下心のある奴もいるかもしれないが、そうでない奴もいるってことを学んだ方が良い。それで何かあれば、俺が守るよ。だから、安心して学生生活を過ごしなさい。

同年代と関わるのも、勉強になる。お前の場合、年下か年上しか関わってきていないからな」


 それはそうだけど。……まあ、晴火先生が味方でいてくれるなら? 少しは関わろうと努力はするけど……、テイマーの人はなぁ、考え方がそもそも違うからなぁ。


「それはしばらく考えてみます」


「今はそれで良い」


 そして、髪の毛がぐしゃぐしゃにするように撫でられた。……髪の毛直すのがめんどくさいのが玉に瑕だけど、撫でる手は優しくて、悪い気はしない。


「とりあえず、この子達のケアをもう少ししたら、葉月先生のところへ相談しに行きますね」


 すると、その言葉に反応したミツはとんとんと自分の胸を叩いてみせた。

 まるで「自分に任せときなさい!」と言っているかのようで。この子達は人間を怖がっているんだからと一瞬思ったが、動物を保護して先住動物が人間は怖くないよって教えることもあるだろう、と思い直す。

 ミツが自主的に任せろと言ってきたのだから、そこは任せた方が良いんだろう。


「じゃあ、ミツにお願いしようかな?」


 そう言えば、ミツは任されたことの喜びをあらわしているのか、ぴょんっと一回跳ねていた。かわいい、うちの子可愛すぎる。


 じゃあ、お言葉に甘えていってこようかな。


 柘榴を晴火先生に任せ、歩き出した時、ちょこちょことメルがついてきているのに気づいた。

 ……そばにいてあげられない時間が最近長かったから、寂しかったのかな? かわいいヤツめ。そう思い、手を繋げないので腕を組んで見れば、嬉しそうに微笑むのがまた、可愛らしい。


 テイマーを見限った子達を強制的保護してしまったから、僕はテイマーをしている子達の大半に恨まれていると考えても良いと思う。だから、ミツとメルのどちらかも連れて歩いた方が良いかもしれないな。

 ……まあ、それは僕が彼らのそばにいたいだけで、表向きの理由でしかないのだけれど。


 ちょうど昼休みの時間だったみたいだ、タイミングが悪かったなぁ。晴火先生はああ言ってたけど、テイマーの子たちへの対応で、そもそも近寄ってこないんじゃないかな?

 今だってそう、話しかけようとすればできるだろうに話しかけないのは、僕の方を見てヒソヒソと何かを話しているから。内容までは聞こえないけど、あまり気分のいい感じはしない。


「あっ、柊さん!」


 縁に乗り、女子生徒にちやほやされて囲まれている偶然彼を見つけ、思わず声が出る。……柊さんがいると言うことは近くに葉月先生もいるんだろうか。

 そんな僕の方に首を180度回転して、凝視してきた柊さんに思わずビビる。……思い出したかのようにフクロウの仕草を出さんでくださいよ、柊さん。


 よくよく見れば、柊さんのフォルムがいつもよりか細くなっている気がする。女子生徒に囲まれて警戒でもしているんだろうか、まあ誰かにいきなり囲まれるなんで警戒しないほうがおかしいか。

 それならと、どうぞこちらにお逃げください、とね。僕は柊さんが乗りやすいように腕を曲げれば、かれはこれはラッキーだと言わんばかりにこちらに飛んできて、腕にとまった。


「災難でしたね、柊さん。それはそうと柊さん、葉月先生のいる場所を知りませんか? 知っているなら教えて欲しいんですけど……」


「ホゥ!」


 そう聞けば、任せろ!と言わんばかりに腕から飛びだち、柊さんはとある場所に止まった。そこには、「騎士科1の1」と書いてあり、まだ教室にいることを教えてくれたのだ。

 まあ、教えてくれたあと、柊さんはまた僕の腕にとまったのだけど。


「女子の皆さん、柊さんはあまり囲まれるのはお好きではないようですよ」

  

 僕は、柊さんがまたあのストレスを与えられないよ うに女子の皆さんに忠告を入れたあと、騎士科の教室を覗き込めば、昼休みになったと言うのに真剣に質問をされている葉月先生の姿があった。

 みなさん真面目だなぁ、感心感心。

 声かけるのは後でで良いか。とりあえず、スムーズに質問できる流れを確保できるように、柊さんを腕に呼び戻す。


「あのっ……!」


 ん? 誰かに声かけられた?

 振り返れば、フードを深くかぶった女子生徒がそこにいた。……なんか用かな。


「なに」


 警戒のあまり冷たい感じに返事をしてしまった。……女子が苦手と言えど、反省反省。怯えられてしまったじゃないか。

 別に彼女が僕に危害を加えた訳じゃあるまいし、これじゃあ晴火先生が言っていた人と接することの努力が果たせない。


「めっ、メープルベア、触っても良いですか?」


 勝手に触らなかっただけ好感を持てるな……、触って怒られて怪我したって事態になっても責任は取れないし。

 まあ、この子は触られたところで暴力を振るうような気性が悪い子ではない。まあ、良い気はしないだろうけど。


 さて、どうする?

 ちらっと確認すれば、穏やかな顔をしていたから、おそらく構わないということだろうな。元々、人好きではあったし。


「どうぞ。嫌がったら、触るのやめてあげてね」


 許可を出した後、僕から話すことはなく、壁にもたれかかる。ついてきていたコハクも、女子生徒の「おいでー」と言う声に構うことなく、僕に寄り添うかのように座った。


 コハクは従魔、ペットを合わせた中でもダントツに僕への対する気持ちが強いと思う。

 僕が警戒している相手に対して愛想を振りまいたりしないし、コハクが信頼している人間(多分、晴火先生や季水、お父様、叔父様、咲斗、朱基さんとあまり多くない)がいなければ、コハクは僕の側から基本的に離れないし、誰かに愛想を振りまくことない。

 コハクが誰よりも、僕に対して過保護なのだ。


 だからごめんね? コハクだけは触らせてあげられないんだ。

 それから10分間くらい、メルは女子生徒達に好きなように触らせたり、愛想を振りまいたりしていた。

 メルは可愛いなぁと遠目から眺めていればいきなり、


「ホゥ!」


 柊さんが叫んだ。……びっくりしたなぁ。

 ちらりと視線を向ければ、柊さんはドヤ顔をしていた。なぜにドヤ顔をする?

 それが謎すぎて首を傾げたが、その答えはすぐにわかった。


「珍しいですね、零さんが保健室外にいるだなんて」


 なるほど、柊さんは葉月先生の質問タイムが終わったことをぼんやりしていた僕に教えてくれたんだね。だから、あんなにドヤ顔をしていたのか!

 ……これはドヤ顔をされてもしょうがないな。お礼を言っておかなくては。

 それにしても、葉月先生は僕のことを保健室に引きこもってばかりだと思ってただなんて、心外だな。……まあ、間違いでもないから否定はしないけども。

 

「柊さん、葉月先生が来たことを教えてくださりありがとうございます。今日は頼みたいことがあって、葉月先生のこと探してたんです」


「私にできることなら、なんでも力になりますよ。どうかしましたか?」


 つくづく思う、良い先生だなと。


「葉月先生は知っていますか? この街の森がゾンビ化っていう現象が起きていること。

それで、有栖家の中で一番育てる力が強い僕に依頼が来たんで、森を鑑定すること試したいんですけど、知り合いは幼くてあんまり深夜に連れ出すのは嫌なんで、鑑定スキルの子を紹介してもらいたんですよ。誰かいい人いませんか?」


「……森のゾンビ化は初めて聞きました。後で 色々な先生に聞いて、情報収集しておきましょう。何かわかったことがあれば、教えますね。

それはそうと、鑑定スキル持ちの零さんと相性の生徒を紹介してほしい……と言うことですね。下手な生徒を紹介をすれば、コハクさんと晴火に怒られてしまいそうですからね、どうしましょうかね?」


 さすがに、そこまで2人とも過保護ではないと思うんですけど……と反論したかったが、すでにコハクがうゔ〜と牽制するかのように唸っているので、苦笑いするしかない。

 ちなみに、コハクがうなり始めたのは誰か鑑定スキル持ちの人を紹介してほしい、と話し始めたところからである。過保護だ。


「コハク、葉月先生だから僕に対して悪いことをするような生徒を紹介するわけないでしょ? 唸るのやめなさい」


 なだめても、コハクは誰が紹介されるかわかるまで唸るのをやめなさそうだった。もう一度言うが、過保護だ。

 やれやれ、しょうがない。


「構いませんよ、零さんは相手次第では発作を起こしかねませんからね。コハクさんが心配するのも理解できます。

ですがね、男子生徒を紹介できればいいんですけどね、渡したから紹介できそうなのは女子生徒なんですよね……。ほら、零さん女性が得意じゃないでしょう? それにね?」


 それから先、言いづらそうな顔した。……気にしないでいっていいのに、僕もわかってるし。


「男子生徒からの印象が良くないんでしょう?

だって、女子生徒の方が鞭を打つことを躊躇う子が多くて、葉月先生の考え方を受け入れる子が多かったから、女子生徒の方が関係性がやり直しが効く子が多いから保護しなかった。それを良く思ってないってこと理解しています。

今回は、葉月先生が紹介してくれる子を信じます。僕は葉月先生のこと、信じてますから」


 強制的に保護する上で、僕に敵対心を抱かれるのは覚悟していた。それが男子生徒だと言われれば、女子生徒の鑑定スキル持ちの子を紹介してもらうのが一番安全だと思う。


「そうですか。嬉しい限りです、警戒心の強い零さんに信じてもらえるなど。……そうですね、」


 その先の言葉を聞くことなく、葉月先生の言葉を遮るように先ほどの女子生徒が咄嗟にと言ったように、


「ぼっ、私にその役目をさせてもらえませんか!!」


 立候補してきた。

 んー、ぼってなんだろー? とどうでもいいことを気にしながら、僕の過保護なお犬、コハクさんのお眼鏡にかなったんだろーかと確認すれば興味なさそうにしていた。

 興味なさそうなのは、重要ではない。

 うなったり、吠えたりしていないことが重要なのだ。コハクは、自分がいなくても僕を任せられる相手が信用している条件であり、それ以外の信用していない相手には興味を示さない。

 何よりも、悪意のある相手にはうなり、吠え、攻撃する。それをしない時点で、コハクのお眼鏡にかなったのだ、彼女は。


「真夜中だけど、大丈夫?」


「はいっ!」


 コハクのお眼鏡にかなったわけだから、大丈夫だろうと思いつつ、葉月先生の方へ視線を移し、意見を促す。


「彼女ならば、安心して任せられます。大丈夫だと思います」


 コハクのお眼鏡に叶い、葉月先生の太鼓判をもらったわけだから、ひとまずは安心だろうと思うことにした。



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