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その5

今回も、キリが良いところで終わらせたため、少し短めです。


 ミツとメルが赤ん坊を発見したと同時に一人の女の子がとある孤児院へと入れられた。無表情で泣くこともしない、ミルクは与えようとしないと飲もうとしない、そんな不気味な子だった。

 その女の子は、貴族の子だった。同じ年代の子供が刺激になればと一時的に保護された子で、変化が見られれば自宅する予定、であった。


「シスター!! 皆が、皆が!!」


 夜、屋根裏で眠っているシスターの元に、肩を抑えながら支えられながら、2人の少年が助けを求めてきた。


「何があったの!? 強盗でも入ってきたの? 待っていなさい、私がなんとかするわ」


 そう言って、下へ向かおうとするシスターを、怪我をしていた少年を支えていた少年が腕を掴み、


「だめだ!! シスターが相手にできるような相手じゃない!! あの子は狂ってる、人間を……!」


 引き止め、何かを言いかけたが、その先が声が震えて言えずにいる少年を見かねて、怪我をしていた少年が引き継ぐように、


「……人間を栄養にしてるんだッ。だから、ミルクを無理やり与えない限り飲まなかったッ。幸い、あの子は赤ん坊だったから、シスターの部屋に逃げ込めば命を守ることができた……。僕達は、学園に入るための勉強をしていたから、僕が肩をかじりつかれるだけで済んだ…、シスターが何とかできる問題じゃないんだ」


 手をわずかに震わせながら、冷静を装ってそう言う少年にシスターは極まって、涙を流しながら、地で汚れることを厭わずに2人を抱きしめた。

 シスターに、抱きしめられた少年達は、自分より幼い子達をあの子から守れなかったことを悔やむように唇を血が出るまで噛みしめていた。


 一方。


 孤児院の一階にいた女の子は、満たされたような顔をしたあと、歯を見せて笑った。チラリと見えた口の中には、乳幼児とは思えないくらいに鋭い犬歯が生えていた。

 そんな笑みの一方、周りはあまりにも悲惨で。なぜか被害に遭わなかった3歳児の男の子は、ガタガタと音を立てて震えていた。……まるで肉食獣の前にいる草食動物かのように。

 そんな男の子を無視して、まるで行き先が決まっているかのように女の子は、ハイハイをして誰もいなくなった孤児院の一階を歩み始めた。そんな女の子の行き先は、朝礼拝している礼拝堂だった。

 そして、女の子は再会する。


「協力してくれて感謝しているわ、さあ行きましょう。計画を潰してくれちゃった神様の世界を一緒に壊して行きましょう? ……狂気は予想外だったけど、まぁ支障はないわ。……それより、残りの人間は放っておいていいのかしら?」


「……あーう」 


 女の子を転生させた、あの女性はクスリっと笑った後、こう言う。


「……不味そうだから、ね。そう言うわがままは嫌いじゃないわ、女はわがままなくらいがちょうどいいのよ」


 答えがお気に召したのか、気分が変わったのか、女の子を抱えて窓を壊し、飛び去ったのだった。

 その音が起き、去っていってからしばらく経った後、シスターは一階へと駆け下り、ガタガタと震えの止まらない男の子を発見したが、抱きしめようと近づいた瞬間、パニックを起こし、気絶してしまったのだった。



「お早う、零」


 優しい声に、導かれるように目を開けば、真ん前に晴火先生の顔があり、驚きのあまり飛び起きれば申し訳なさそうに謝られた後、


「有栖家の人間である零に聞きたいことがある」


 真剣な声に、顔に圧倒され、思わず反射的に頷けばすぐに僕のベットに腰掛けた。それから、すぐに答えを早く聞きたいのか本題に入る雰囲気になる。


「傭兵族の孤児院に寄付しているそうだな。ここの孤児院を知っているか」


 そう言った後、晴火先生は僕の膝に一枚の記事をのせて読むようにうながす。僕は促されるまま、記事のないように目を通せば、あまりの事件の残酷さに口を押さえた後、自分が教えていた子のほとんどが亡くなっていることの事実に、呼吸回数が上がり、半過呼吸と言った状態になりながら悲しみから涙を流し、


「……知ってッ、ます……!」


 僕はその一言を言うのが精一杯だった。


「……現場、行くか? 4人、生存者がいる。学園は国の管轄だ、今回は俺が現場検証の担当となる。恐らく、4人の精神状態はかなり参っていると思う。知り合いがいれば、少しでも良くなるかもしれない。……どうする? 零も精神状態を回復しなければならない立場だ、医者としては進めたくない。しかし、零の正確上、黙っている方が得策でないと考えたから話しただけだ。むりして来いとは言わない」


 そんな優しい気遣いに首を振り、


「行きッ……たいです。慰霊、碑を建てなくては、あの子達、の居場所が、なくなっ、てしまいま、すから」


 そんな僕の答えに優しく微笑んで、


「そう言うと思った」


 そう言った後、僕の頭を二回撫で、僕の目の前に喪服を置いた。


「朝、記事を読んだ季水が喪服と、和葉さんがここに来るように手配してくれた。約束の時間まであと数時間ある、気持ちを整理して喪服に着替えると良い」


 そう言った後、気を遣ったのか、足速に僕の部屋から去って行った。完全に足音を聞き終わった後、僕はコハクを手招きをしたと同時に、彼は僕にお腹を見せていた。そんな優しさに一度は引っ込んだ涙が溢れてきて、お腹に顔を埋めて泣いた。泣いている僕を守るかのように従魔達は、寄り添うように僕の側から離れることはなかった。


 数時間後。僕は喪服を身に纏い、晴火先生が用意してくれた氷嚢で目を冷やして、和葉さんが来るのを待っていた。


「……これからどうするつもりだ」


「孤児院への土地、建物の寄付、元々孤児院があったところにある礼拝堂に慰霊碑を建てます。彼らはどうするんですか」


「……そうか。3歳の男の子の精神状態は崩壊寸前らしい、状態によってはこちらで保護するつもりだ。恐らくそうなるかと思う。他の男子2人は早めに学園で保護という形で、試験を受けるまでは母乳をもらった元保健医が預かることになる。そう言う形で、理事長と話がおりついた。……シスターの様子は地元の医師に、支援は有栖家、零に任せる」


 ……学園の支援をするのは2人だったから、誰かは把握できた。しかし、三歳の男の子は数人いたから、誰が無事なのかがわからない。……どうしてこうなった、何があったの。何が彼らを殺めたんだ……とそう考えると悔しくて、哀しくて、何もできないことが虚しくて僕は唇を噛み締めた。

 そんな僕を和葉さんが来るまで、晴火先生は横から抱き寄せ、抱きしめ続けてくれたのだった。



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