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その4

キリがいいところで終わらせたので、少し短めとなっております。


「神様、妹が次の一手を進めてきたようですよ。自分と同じ匂いがする娘と、どちらかと言うと有栖零に近い男子を殺めました」


 その場にいるかのように妹と呼ぶ彼女の様子を話すことに慣れているのか、神様と呼ばれる幼馴染は考えるような仕草をした後、


「不本意だが、男子は彼に任せることにしよう。彼にはこれからも徳を積んでいってもらわなければならないからな。今回の事件は月光島で決着つける」


 その決断に、黒猫は目を細めて、


「それは、あのような悲劇を生み出さないためですね? 彼はもう、人間世界で生きるには酷なくらいの試練を与えすぎました。これ以上、人間世界で生きて仕舞えばいつかは魂が回復不可能なくらいに傷ついてしまいます。神様の策は最善かと思います、第二第三の有栖零のような人間を生み出さないためにも神様の決断の通りに物事を進めましょう」


 有栖零が巻き込まれた事件の終焉までのカウントダウンが、カチリッと音を立てて始まった。


※※※※※※


 コンコン、とガラスを叩く音で目が覚め、皆を起こさないように避けながら、あの子達に何かあったのかな……と考えつつ、扉を開けに行くと……、赤ん坊を抱えるメルと子猫を手のひらに乗せるミツがいた。


「大変だ……! 晴火先生を起こしてくるね。ほら、メルとミツ、足を拭いて入って待ってて」


 メルから赤ん坊をまず受け取り、駆け足で急いで晴火先生の部屋へと駆け込み、叩き起こして赤ん坊と子猫を診てもらった。


「学生としてこの学園に在籍していたけど、赤ん坊と子猫を拾ってくるなんてそんなことあったことないぞ。……全く、しょうがないな。お前のことだから育てるとか言い始めるんだろう? 確か、前任の保険医がちょうど母乳をあげてる年の子がいたから、母乳を分けてもらうか。衛生面はお前が持つアイテムボックスに保管すれば平気だろう」


 わぁお、僕の考えそうなことはお見通しかぁ。


「あとはベビー用品だけですね。……それにこの子は僕が育てなきゃいけないような気がするんです」


 なんでだろう? そう考えていれば、


「そう思うのであれば、俺がサポートをしていけば良いだけのこと。……学園で子供が捨てられたとすれば心象が悪いだろう? って言いくるめば良いだけのことだ。あとは戸籍あたりはお前の父親あたりがなんとかするだろ。夜分遅くだが、連絡を入れて元保険医のところに行ってくる。その間、よろしくな」


 晴火先生は勝手に結論を出したようで、さっさと連絡して、どこかへ消えていってしまった。ベビー用品が揃えるまでの代用品としてガーゼの布で布おむつでも作るか。……機能するかどうかは置いといて。

 その間、赤ん坊はメルとミツに任せ、子猫は物音で起きてきた琥珀に見てもらい、様子を確認しながら布おむつを作っていれば、いつのまにか帰ってきたのか、


「そういうのも作れるのか」


 と背中越しから覗き込まれながらそう言われたので首だけ晴火先生の方へ向け、


「ええ、これでも孤児院で学力を上げるために色々教えていたので、こういうことも手伝っていたんですよ」


 前世も現世も学校に通えている自分がどれだけ運がいいことだったか、そんなことを考えながらそう答えた。


「そんなこともやってたのか……」


「ええ、まあ。金銭の援助は裕福であればやろうとすればできることでしょう? それじゃ意味が無いんです、子供達も孤児院の保護下からいつか離れる日は必ずきます。

その時、生活できるための手段を教えることが教育を受けることが義務化されていない世界で出来る最善の援助だと思っています。それで、孤児院に行く子供が減るのなら、僕はいくらでも時間をさきます。

僕の貯蓄が許す限り、咲斗達のように貴族から妬まれそうなくらい才能がある子に対しては後ろ盾になります」


 それが前世養子として育ててもらえたことに対する、命をかけて守ってくれた弟への些細な恩返しになると考えるから。

 そう考えているうちに、メルとミツ達とお守りを交代していたようで、誰かのお古か、少し傷ついた音の鳴るおもちゃであやしていた。


「話がずれてしまいましたね、起きちゃったんですね。そのおもちゃ、どうしたんですか?」


「ああ、泣いてないから自然と目が覚めたみたいだな。おもちゃは母乳のついでに、前の保健医から使わないおもちゃももらえたんだ。あと着れなくなった赤ん坊の衣服とかいろいろな。ついでに、理事長から学園での保護の許可ももらっておいた」


「そうですか、ありがたいですね。

メルとミツ、ありがとう。疲れたでしょう? 休んでいいよ」


 そうメルとミツに話しかければ、なぜか赤ん坊を抱える晴火先生を囲んでおろおろしていた。その様子に思わず笑みがこぼれ、指先を数回動かして彼らを呼んで、


「赤ちゃんを傷つけないように爪を切ってあげよう。赤ちゃんが大きくなるまで、僕の部屋で眠ってもいいよ。面倒見たくて気になっているんでしょう?」


 可愛い彼らの些細なわがままを叶えてあげようと思った。動物に育てられた子供は、人に育てられた子供の脳より小さいと聞いたことはあるけど、完全に育てるわけじゃ無いから大丈夫だと高を括れば、彼らは嬉しそうに駆け寄ってきた。

 そんな彼らを微笑ましく見守りながら、新品の鍋をアイテムボックスから取り出したあと、母乳を人肌まで温め、授乳機に移し、授乳機をメルに渡し、飲んで行く姿を見守っていれば、いつのまにか晴火先生はコハク達の元へと移動して、子猫にもミルクを与えていた。

 そんな穏やかな光景を眺めていると、なんとかなった安堵感からか、大きな欠伸を一回してしまった。そんな僕にミツは僕の手を取り、ベッドへと導き、手を繋いでない方で布団を叩いて寝るように促されてしまう。

 僕は赤ちゃんが心配で躊躇っていれば、


「成長期真っ只中の少年は、クマさんと保険医に夜中の育児は任せてちゃんと眠りなさい」


 と、晴火先生までにも寝るように促されてしまえば仕方ない。僕には眠りしか選択肢はなく、横になったのはいいものの、心配な気持ちが勝ち、アドレナリンが分泌されているのか、なかなか眠れずにいると、コハクがやれやれと言うかのようにクゥーンと何回も鳴き続け始めた。その声を聞いていると、何故だか不思議と眠気が生まれてくる。そして、その数秒後には僕の意識は失っていたのだった。




おまたせしました。学業で精一杯で執筆の時間が出来ず、投稿が遅くなってしまいました。

お知らせです。予定では来年の1月までの不定期投稿でしたが、その期間を来年の3月まで延長させていただきたいと思います。

また、確実にこの作品を完結まで連載したいので、来年3月から投稿の仕方を変更したいと思います。来年の3月になりましたら、またご報告致しますので、よろしくお願い致します。


それでは^ ^

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