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その5

 

 お抱えの大工のしたお仕事を褒めていれば、一瞬でうんざりしたような顔をした和葉さんと満足げな顔をした季水が現れ、僕はすぐに睨みつけて、


「ねぇ!! カラス君、書類についての回答つけて飛ばしちゃったんですけど!! 来るなら来るって言ってもらえます? ったく、報告・連絡・相談って言葉を知らないんですから、次期領主が基本的なことが出来なくてどうするんです?! 大体、お父様は甘い……「まあまあ、落ち着けよ。まずは季水を叱るよりも、カラス君を呼び戻すのか先決だろ?」」


 怒る僕は、晴火先生に落ち着かせた後、それもそうかと思い出し、口笛で「戻れ」のサインを送れば、なぜかすぐに戻ってきて、僕の肩に止まらず季水の肩にとまった。すると計3回ほど、強めにこめかみをつついて、僕の肩に戻ってきたのだった。

 ……なるほど、わかった。僕に頼まれ、季水に手紙を届けたところ、たまたま和葉さんと季水の気配を学園に感じて慌てて戻らされて、お前の気まぐれに振り回すんじゃねぇぞってことか。


「カラス君も怒ってるじゃないですか!」


 そう言った後、空気を口の中に含ませて頰を膨らませれば、晴火先生はくすくす笑って両頬を親指と人差し指で挟むように空気を出された後、


「悪かったよ」


 と謝ってくれたから、許してあげようと満足げな顔をした。その時、横から素早く鬼の形相をした季水が現れ、僕を抱きしめた。それから逃れようと抵抗していると季水が、


「なんでなんだよ!! なんで、俺より晴火の方が零の兄貴っぽいんだ!! しかも、この短い間にどうやってここまで心を開かせたんだ!! 零は冒険者から姫扱いされるくらいに冒険者から慕われているのに、零は玲亜と俺や朱基、雷紀、俺の可愛い三つ子、和葉くらいにしか心を許していない。その他の人間に対してはまるで教祖のようだと言われてるんだぞ!! そんな頑なな心の扉を最速で開けるんだ!」


 そんなことはないと否定しようとした瞬間、晴火先生は真剣な顔をして……と言うよりかは怖い顔をしてこう言う。


「まず、1つ。零を教祖のようにしたのはその姫扱いだ。心を開いて欲しいのならまず、それをやめろと言っておけ。むしろ、それは零のためにならないから、零のことを慕うならまずそれをやめてやれときつく言っておけ。

 いいか、零は自分がない。周りが求める人格を演じてしまうんだ。だから、零のためにそれをやめさせろ。呼び名は零くん、零さんで固定だ。いいか、良く聞け! 冒険者である時の零は貴族ではない、妖精軍師と呼ばれる零だ。それを聞いても姫扱いをするのは自由だ、勝手にしろ」


 晴火先生はまるで自分のことのように怒っていた。そんな言葉に僕は、自分がないところを治したいと思った。思えるようになった。そんな変化を感じ取ったらしく、僕第一に考える季水は真剣な表情をして、


「わかった」


 そう納得したようだった。しかし、晴火先生はまだ納得していないようで、まだ話を続けようとするから仕方ない、僕は止めに入るために話を再開しようとする晴火先生の言葉を遮って、


「それ以上は言い過ぎですよ、晴火先生。とりあえず落ち着くために、お茶にしましょう?」


 季水を叱るのを互いに止め合うと言うなんとも不思議な光景になってしまったのだった。



 一年生、春編



 入学式、来賓の長い話を経て、へろへろになりながら自分のクラスに行けば、一気に視線が集まり、戸惑っているとそんな僕のところにとある人物がやってきて、少しだけ安堵していれば、僕の苦手なあの子も側にいて、姿が見えた瞬間気を引き締めた。


「零様、お久しぶりです」


 ったく、新くんは相変わらずあれ以降態度が型苦しんだから、だから姫呼びをされなくても貴族のように振舞ってしまうんだよね。


「マナー違反は良くないよ、新くん。学園にいる時の僕は、立場的に冒険者の資格を持つと言う君と同じ立場なんだよ。その堅苦しい態度はやめて欲しいね。敬語を取れとは言わない、せめて「さんづけ」で勘弁して欲しいね」


 そう頼んでみると、新くんは戸惑ったような顔をしたが、決意を見せるような顔に変わり、


「わかりました、零さん。それよりも、零さんはなぜ冒険者なはずなのにあの会場にはいなかったのですか? あれくらいの実戦訓練なら、零さんは余裕でこなせたでしょうに」


 呼び方を変えてくれた後、視線を向けられていた理由の1つであろう理由の質問を彼は直球で向けてきたから、僕は隠さずに答える。


「大人の事情だよ、僕には攻撃スキルが後天性スキルしかないからね。大人は立場を気にするから

 、そう言う対応に出たらしいよ? せめて学生間では対等な扱いをして欲しいよ」


「それは災難でしたね。零さんの武器交換して、攻撃の系統が変わり、魔物を一撃で倒す姿は見所でしたのに、もったいないことをしましたよ。間違いなく!」


 行けなかった理由を述べれば、考える暇を与えることなく、新くんはそう言った。彼のいいところは、彼の姉を助けたことで信仰するような対応を取られるようになってしまったが、変わらず姫扱いをしたことがないところだ。

 そして、後天性スキルしか攻撃スキルがないからと理由で差別をしたりしないで、純粋に戦闘能力を認めてくれているところは有難いと思っている。


「ありがとう、でも君の双剣の攻撃の速さや攻撃力には負けるよ。模擬戦の時全敗したもの。一撃、切り傷入れるのが精一杯だったしね」


 そう褒めれば、なぜか周りがざわざわとさらに騒がしくなってきた。……なぜだ? とそう考えている瞬間、一番厄介な人物が反応して、僕の肩を鷲掴みしてきてコハクが唸る。それでもその人物は怯まず、僕に、


「あの新くんに傷をつけた人、私以外初めて見ましたっ!」


「だよね、あれは運が良かっただけだよ」


「いえっ!やはり、私の目に狂いはありませんでしたっ! さあ、今すぐに模擬戦を……!」


 ……はぁ、この子話聞かないから疲れるよ。会うたびに模擬戦を申し込んでくるんだよね。

 この子、新くんに唯一ついていける実力者なんだから、僕と模擬戦をやっても何も得るものなんかないのに懲りない人だね。


「嫌だって言ってるでしょ、しつこいな。一回やったらもう戦いたいって絡んでこないでよ。それ破ったら……、わかってるよね?」


「はいっ、わかってますっ! 劇怖説教ですねっ」


 ……はぁ、入学初日に何やってんだか。まあ、後天性スキルでも戦えるって証明できる良い機会だし、利用させてもらおうかな。




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