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その4


「さて、話はさておいて後回しにしていた温室に行くとするかな。零は俺が担当教員だから、先にペット達の護衛証明書を渡しておくな。同時に担当教員が分かるように、俺が担当であることを示す腕輪の護衛証明書だ」


 うんむ言わせず話を切り替えて、僕に護衛証明書を渡してきた。……あれかな、カッコつけすぎたなとか思ったりして照れてるのかな? と思うことにして、そのまま流されてあげることにした。


「ありがとうございます」


 晴火先生から腕輪を受け取り、早速つけるために従魔空間アイテムからペットとハッサク達を呼び出して、順々につけていけば、つけられた後には嬉しそうに眺めていた。


「気に入ったみたいです」


「そうか、それは良かったな。さてと、次は温室の設備の確認をしに行こうか」


 と何故か、さっきから温室の設備を確認行かせることにこだわっているんだけど、なんでだろうか? とそう考えながら、促されるまま、僕は温室のある方向へと向かっていく中、


「今年から教育制度が変わるそうですね」


 そう世間話を入れてみれば、晴火先生は真面目な性格なのか、


「ああ、知っていたのか。今年から理事長の方針で少人数制になったんだ。で、お前は俺の唯一の研究生だ。お前の調合や栽培の仕方を季水から聞いて、お前がしていることを理論的に研究したいから研究生として迎えても良いって許可をくれるならと言う条件で引き受けた。だから、お前が卒業すれば俺も退職する。つまり、俺は今期制が卒業するまでの契約教員で、理事長が教員としてスカウトしている生徒が全員卒業するまでの代打って言うわけだ」


 とご丁寧に説明をしてくれたけど、僕から言えることは、


「お好きに研究してください」


 まあそれしかないよね。自分が他の人とは違うことをしているのは自覚している、それを理論的に説明してくれるならそれに越したことはない。栽培はともかく、調合なら解明されるかもしれないし。


「まあ、栽培については有栖家特有なものかもしれませんけどね」


「それは承知の上でのことでの研究であるからきにするな」


 なんて会話しているうちに温室があると言う奥庭に着いた。その瞬間、広がる花壇に、よく整備された道。花壇と道を遮るように作られた水路とその先を見れば温室の裏に広がるため池。

 温室の隣にはリトルベアとメイプルベアが有栖家の領土に住んでいた時に、住処にしていたツリーハウスが再現されていて、その横にはメイプルベアが趣味とする蜂箱とメイプルの木の簡素版の森が出来上がっていた。


「……いくらしたんだろ、これ………」


 流石に引くよね、これは。えっ、だって正直に言えば意味もなく噴水あるよ? 必要ないよね、まあ僕のお金じゃないから文句は言えないけど。


「それは聞かない方が良いぞ。アイツ、俺の研究所まで設備費を出して作りやがった時にはもう、設備が最新すぎて値段が聞けなかったが……」


 季水の場合、言ったところで、気に入った相手に対する貢ぐせは治らないので。


「「まあ、有難く深く考えないで使うのがいちばんなんだよね(な)」」


 そう呟けば、同じく晴火先生もそう呟いていたので、思わず顔を見合わせて笑う。


「こんなに設備にお金をかけて、借金とか作ってたら容赦なく叱りましょう、そうしましょう。ったく、卒業後は学園に来るつもりはないって言うのにどうするつもりで建設したんでしょうか。そもそも後々この設備は寄付するとは言え、誰が管理するんでしょうか? ……将来は決まってませんが、季水の手伝いをするか、旅をするかの二択なので僕は管理はできませんしねぇ?」


 正直なところ、これくらいの施設を維持することができる人間はこの世界では限られている。僕の弟であり、教え子である三つ子達はこのくらいの施設は維持できるようには指導はしてあるけど、他の人でいるのかは知らないから卒業後が心配だ。

 まあ、僕も在籍中はここを管理することにはなるけど、温室の管理を手伝ってくれる子達が護衛になってくれたから、温室管理を他の生徒の手を借りると言うことにはなさそうだ。


「卒業後は温室を寄付するとのことだが、それについては規則は決まっているからそれに則って解決済みだ。今回、零の卒業後に寄付されるのは温室だけでなく、俺の研究室も寄付される。

温室と俺の研究室の設備については、お前の調合道具のみは料理科が、その他は温室は栽培関係者がいる学科、俺の研究室については薬師科がお前の卒業後管理することになっていることは頭に入れておくように」


 その言葉は少し意外だった。へぇ、僕以外にも何か建物を寄付した人がいるんだと考えていると、晴火先生はくすくすと笑いながら、


「へぇ、意外って思ってんだろ?」


「よくわかりましたね」


 言われた言葉にそう返事を返せば、僕の頬を親指と人差し指で挟むように触って、


「顔に出すぎ」


 とまた、笑われてしまった。


「まあ、意外って感じたのは俺も研究室を寄付するんだってところか、または自分以外が建物を寄付する人がいるんだってところか。

俺の場合は研究室にはこだわりはないし、アイテムボックスをお下がりでもらったものがあるから研究道具も資料も持ち歩けるから、身1つあればどこの小屋であろうと研究はできるからな。それに、研究室を持っていたところでフィールドワークも多いから、ほとんど帰ってこないから寄付することにしたんだよ。

あとは、自分以外が建物を寄付したって奴は、した方は大体有栖家の人間だから安心しろ。ちなみにこの元の廃墟化していた建物も有栖家の寄付だ。前回は管理が行き渡らなくて廃墟化してしまったから、次に有栖家の寄付が来た時用対策がされていたんだよ」


 その言葉に僕はなるほどと納得をした時、メイプルベア組のメル、ミツが何かを思い出したのか、ミツのショルダーバックからA4サイズの封筒を取り出して、僕に渡してきたから、


「ああ、あれか。今確認しちゃうね」


 封筒から書類を取り出して、結論から言うと領主修行をしている季水の添削なんだけど、まあ毎回のごとく見積もりが甘いね。過去のお父様の見積書を参考に考えろって何回言えばわかるのかな?

 ったく、と考えながら訂正箇所を殴り書きで書いていき、カラス君の足にその紙をくくりつけ、


「季水のところまでいけるね」


「カァ!」


 よし、いい子だと人差し指で優しく撫でたあげれば、満足げな顔をして飛びだっていった。その後、褒められ待ちをしていたメイプルベア組も撫でてあげれば、ものすごい足音が聞こえてきたので振り返れば、猛ダッシュでお抱え大工がやってきて、


「零坊ちゃん、今日もいつも通り動物に囲まれていますね! 今日の出来はいかがでしょうっ!」


 そう聞かれれば、この一言に尽きる。


「今回も完璧な出来だよ。少々やりすぎなような気がするけど、これは季水のせいだよね。あとで君らを振り回さないように叱っておくから、ゆっくり休むように」


 彼らには罪はない、なんせ彼らは有栖家のための大工なのだから主人の要望には全力で答える、それが仕事。彼らは全うしているだけ、とそう考えながらいつものように一大仕事をした職人の手を握り、


「いつもありがとう」


 僕は彼らに感謝だけを示せばいい。叱られるのは季水だけで良いのさ。


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