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その2


 朝早々に旅立ち、またもや最短距離で学園に行けるように探索スキルを使いながら、駆け足で乗馬をしていけば、正午には無事に学園についた。その時には早起きをしていきなりハードな乗馬をしたせいか、晴火先生はくたくたに疲れきっていた。


 ……申し訳ないことしたなぁ、とお詫びに少し豪華目なメニューのお昼ご飯にしてあげることにするかと、疲労から真っ直ぐ歩けない晴火先生の腕を組んで支えてあげて保健室に移動し、出来るまで寝ていているようにと伝えた後、お昼ご飯作りに入る。

 オムライスに、玉ねぎコンソメスープ、サラダとデザートに桃を切ってから眠っている晴火先生を起こし、お昼ご飯にすれば、「嫁にしたい!」とお褒めをいただいたお昼を過ごした後、季水がプレゼントをしてくれた温室設備を見に行くことにした。

 その途中、理事長先生と会い、廃墟と化していた場所を綺麗にしてくれてありがとうとお礼をするつもりが、言われてしまった。……なぜだ? と首を傾げていれば、


「大人の事情ですからわからなくて良いですよ」


 と言われ、深くまで考えることがめんどくさくなって、その言葉のまま受け取ることにした。……まあ、実際のところ、管理をするのは僕よりもメイプルベアのメル、ミツやリトルベアのリル、リツなんだけどね。あの子達は前も言った通り保護熊でさ、人工的に育てたからか、人間味に溢れているというか、我が子ながら賢い子達なんだよね。

 うーん、知力をあげたのはあれかなぁ? 熊として子育てしたわけじゃなくて、人が自分の子供にするような子育てをしたからかな? 絵本を読んだりとか、外で遊べるあの子達サイズの積み木をプレゼントして遊んでたりしたから、何かを見て真似ることに長けたのかもしれない。だから、管理を任せられるくらいの知力をつけられたんだと思う。

 なんて考えていると、理事長先生は苦笑いをしながら続けて、


「あと、それから言っておかなければならないと言うことは、動物を護衛として認可したのは初めてのことですので、本校の学校運営マニュアルに適応しておりません。ですから、今回の提案により、この数日学校運営マニュアルの改正もしておりますが、付け焼き刃なまでの改正でありますから零さんにはご不便をお掛けしてしまうかもしれません。その時には、直接すぐに直訴できるように手配してあります。ご安心ください」


「ええ、お手数おかけして申し訳ありません」


「いえ、貴方の大切な家族であるペット達が貴方を守る力を持っていることは噂で聞いておりますし、こちらとしては零さんにあてるはずであった護衛が予定よりも半減したことによって、他の護衛が必要なお嬢様方に人員を増やせることは有難いことです。ですから、マニュアルの改正も喜んで致しますので、何かあればすぐに直訴をしてもらい、早々の解決のご協力をよろしくお願い致します。……それでは私はここで失礼致します」


 まくし立てるようにそう言ってきた後、こちら側の返事など聞かずにどっかに行ってしまった姿を見て、


「なんか季水に似ているなぁ」


 そう呟けば、晴火先生は吹き出した後、大笑いをして、


「そう言うのはお前だけだよ」


 そう言われてしまったが、僕はフッと笑って、


「……僕は貴族のご令嬢ほどそこまで弱くありませんよ、……それなのに揃いも揃って僕を過保護に守ろうとする。そこが似ていると言っているんです」


 そう言えば、ハッと我に返ったかのような顔をしたから、僕が言いたいことを理解してくれたんだとみなし、続けてこう言う。


「今まで姫扱いでもまあ良いかと受け入れていたのは自分がそうされてもしょうがないくらいにこの世界で生きるには弱すぎたから、ですから気にしないようにしていました。まあ、見た目も中性的、攻撃スキルもない? じゃあ、強い自分が守らなきゃ、この子は生きれない。だから、生きるために強くなろうとしていたのに、誰も自分を守らせるために傷つけたくないから強くなろうとしていたのに、僕が起こした行動は余計に周りを過保護にしてしまいました」


 6歳頃までは、零姫と呼ばれることに対して抵抗はなかった。それは愛称なものだと思っていたからで、だからそう呼ばれることに抵抗はなかったの。 

 でも、気づいた。傭兵に襲われかけた時、零姫と心配してくる姿を見て、ああこの人達は僕のことを守るべき存在としてしか見てくれていないんだと気づいてしまった。

 だから、僕はそれ以降からあまり咲斗や朱基さんに用事がある時以外にはあの冒険者ギルドで活動することが少なくなった。あそこでは、強くなれないと判断したからだ。領地にある冒険者ギルドの討伐依頼を指の皮がむけ、血だらけになるまで弓を引いた。……それなのに、


「それなのに周りは姫扱いして守ろうとしてくるから貴族に生まれたからにはしょうがないと諦めていました。僕から言えば、僕のことを過保護に守ろうとするすべての人が季水に似ています。僕のことを姫扱いしなかったのは朱基さんや雷紀さん、お父様や葉月先生、……晴火先生あなただけでした。だから!」


 手首に隠しつけていた、立方体から変形する付加銃(氷)を変化させ、天井に向けて打てば、天井に張り付いていた暗殺者が痛みで呻きながら落ちてきた。


「わかるでしょう? これは理事長に向けられた暗殺者です。さっさと立ち去ったのはこの暗殺者をわかりつつ、迎え撃つつもりだったのでしょう? それは、暗殺者は僕に手を出せないのをわかっていての対応です、それは僕が護衛付き対象だって理解しているのにです。

……僕は弱いですか? 暗殺者の気配が辿れるのに、撃退もできるのに、護衛が必要なんですか? 僕は男です、令嬢と同じ立場で傷つかないとでも思ったんですか? 護衛をつけて、その人が殺められないように強くなったのに! 僕は自由に従魔とペットと友人だけで行動することも許されないんですか! 他の貴族の男子は、学園内でなら護衛をつける必要もないのに!」


 そう、いつもそうだ。()()()()()()()()()()()()()()()()


「……零、1回保健室に戻ろうか」


 え? なんで?


「僕は体調は悪くはありませんっ!」


「……わかってるよ。はぁ、本当は生徒に話してはいけないんだけどなぁ、これ以上話を聞いてるだけだと過呼吸を起こしそうだからな。……やっと本音を言ってくれたんだ、仕方ない」


 過呼吸を起こしそうと聞いて、僕は保健室に行く必要がないと抵抗するのをやめたのだった。



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