入学準備編 その1
次の朝。いつもよりも寝過ごしたなと考えながら、起きてきた午前6時。……まあ、ここの温室の管理は孤児院で1番に植物を育てるのが上手い子達に任せたから、早起きする必要はないのだけど。
そう考えながら、リビングに行けば朝から爽やかに笑いながら、朝の挨拶をして、季水が抱きしめてきた。めんどくさいから好きにさせていれば満足したのか、抱きしめるのをやめて、彼は朝の挨拶を終えた後早々に、
「学園に零専用の温室を作るそうじゃないか! それならば素晴らしいものを用意しなくてはないからな、最近最新にした有栖家の敷地にある温室と同じものを手配しておいたぞ。季水は零のお兄ちゃんだからな、零の欲しがりそうな設備は網羅している。廃墟化になっていた敷地を改造する許可も得たし、リトルベアとメイプルベアも護衛として連れて行くのだろう? あの子達も住み慣れた住処に近い方が良いだろうから、そのようになるように手配してあるよ。もちろん、これは俺のポケットマネーからの出費だ、零の入学祝いだよ」
僕のいない間にやらかしていたようだ。……まあいいか、弟に貢ぐくらいしか必要最低限のポケットマネーを使わないような男だって知っているし、それに貢ぐために使うお金は彼がポケットマネーと言っていた通り、彼が自分が稼いだお金だからね。使い道をとよかく言える立場ではないから大人しく受け取っておこうと思う。
「……入学祝いが光帝並みだよな、お前は」
苦笑いをしながら、そう呟く晴火先生。それは違いないですね、内心で同意をしながら、
「有栖家の御用達の大工ですか?」
「そうだよ」
「なら、そろそろ作り終えてるところですかね? 複製スキルがありますから、彼らには」
「だな」
季水に向けての言葉だろうから、返事をすることなく、温室設備の進行状態を聞けば、
「お前にとっては普通のことなのかよ……」
プレゼントもろくにできねぇ、と呟く晴火先生に対して心外だなぁと怪訝な顔をした後、
「季水の僕に対するプレゼントのレベルがおかしいことは理解しています。これはまだ自重している方です。前には、調合の仕方やらを研究していた時には研究員まで雇って、施設の建設付きのプレゼントを誕生日プレゼントにしようとしていたので、キッチンの最新設備にリフォームで我慢してもらいました。
僕はこんな高価なものはいらないって言ってるし、僕自身も浪費家じゃないから貯蓄だってあるのに、とも言ってはいるんですがねぇ。貴族として有益な研究をしている人に投資するのは有栖家では当たり前のことだ、それに俺の趣味は零に貢ぐことだからと言われてしまえばこれ以上は止められないでしょう?」
季水が弟達に与えるプレゼントするものの次元が違うことくらい自覚はしていると、そう主張をすれば、晴火先生はまた苦笑いをしていた。なぜだ?
苦笑いをした理由について思い当たる節もないので首を傾げていれば、晴火先生は、
「あの天下の季水様と言われた会長様がなぁ、弟にこうも甘いとは。それから、ここまで尻にひかれているとは目を疑う光景だろうな、アイツらからすれば。……零、お前はあのフィアンセにあったことはあるか?」
そう話してくれたので、
「んふふ、季水は意外にもファーストレディ思考なようで、弟なのに中性的な容姿をしている僕が反論してきた時、戸惑って反論できず、素直に僕が言ったことに応じたんですよ。それ以来から、季水は僕に心配をしてのことを抜いて、命じるようなことはしたことがありません。ですから、この光景が目を疑う光景であるならば季水はちゃんと自重していたと言うこと、季水頑張ったね?
ああ、それからフィアンセにも会ったことはありますよ。この見た目ですから、嫉妬されて大変でしたよ。まあ、季水の弟だから傷つくような真似はされませんでしたけどね」
自重していた季水の頭に向けて手を伸ばせば、撫でやすいように少し屈んでくれ、僕は満足げな顔をして撫でつつ、晴火先生の問いに答えれば、
「で? 2、3日予定を遅らせた理由は? 入学式まであと1週間くらいだ。まあ、お前の主治医を任されたからには側にいるが、今後の予定を教えて欲しい」
ああ、そう言えば朱基さんが、「主治医交代だな」って言っていたなぁ。まあ、所属冒険者の健康管理の一環だからと言われたから、朱基さんに診察料は払ったことはないけど、晴火先生には払った方がいいのかなぁ?
「主治医なら診察料……「いらないぞ、所属学生の健康管理は仕事の一環だ」
その言葉に僕は安堵感を得た。別にお金払うことになっても良かった、そこではなくなぜかああ言った晴火先生の声が、雰囲気が僕の心を安堵感を与えてくれたんだ。
「……わかりました。よろしくお願いします。えっと、今後の予定でしたよね? 僕の弟、咲斗が製作してくれている、従魔空間ボックスを完成するのを待って、実家にいるメイプルベアとリトルベアを迎えに行ってから、温室設備の確認しに行く予定です」
素直に答えることにした僕がそう言えば、
「わかった。……ところで、従魔空間ボックスとはなんなんだ?」
そう質問してきたから、
「簡単に言うと、麟さんが使っていたボックスを従魔や自分のペット、登録した動物のみを別空間に居てもらうためのアイテムです。登録に必要なのは体液がどうしても必要で、1番負担の少ない唾液と涙での登録に限定したものです。本当は早い段階から使用したかったのですが、アイテムと一緒ではもの扱いしているような感じがして使いづらくてですね、無理を言って作ってもらっていたんです。
今回はブレスネット型にしてもらい、持ち運びの良いものにしてもらいました。そのおかげで移動が馬車でなく、馬や飛翔ボードでの移動に移れるので遠出が楽になりますしね。このアイテムを受け取るために今回2、3日滞在することにしました。馬車でなく、馬での旅になりますけど、乗馬できます?」
アイテムについて説明したあと、質問し返せば、
「できるよ」
と返ってきたので、よしよしと内心呟く。
それから2日間、墓守の森の清潔操作をしながら、ゾンビが現れていないかのチェックをする日々を過ごした後、咲斗から依頼品を受け取り、個人依頼が入ってきた季水と別れ、自宅へと最短距離で向かうのだった。
疲労を見せる晴火先生お構いなしに最短距離で自宅へと直行した後、リトルベアとメイプルベアも護衛として連れて行くとお父様と使用人に伝えた後、唾液で登録しておいた時には夕方になっていたので、学園に向かうのは明日にしようと伝えれば、晴火先生は安堵したような顔をしたのだった。




