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その2


「……なぜここに福青鳥が……、て言うかちょっと飛んでくるみたいな勢いで飛んで行ってなぜ有栖様の肩に止まっているのです?! (ひいらぎ)こちらに来なさい」


 ふーん、この梟さんの名前は柊さんって言うんだ。名前知りたいと思ってたから、ラッキーだったなぁと考えながら柊さんの額を数回撫でると、彼? 彼女はペコッと一回会釈した後、飼い主さんのところに戻って行った。


「相変わらず柊さんクールだな」


 木の上から感想を述べる季水。……柊さんと知り合いだったんだぁ、ならそうと言ってくれれば……ってひたすら季水の話を聞き流していたんだった! それじゃ、言っていても意味はないよね。聞いてないんだもん。

 なんて考えていると、


「本当に完全に無視していたんだな、まああれは俺の言い方がデリカシーなかったと思う。すまんな」


 捨てられた子犬のような目をして、反省していますって顔しながらそう言ってきた。……まあ、反省しているみたいだし、許してあげるかとそう考えた後、季水ににこっと笑いかける。

 これはいつものご機嫌直りましたよ、のサインだ。それが伝わったのか木の上から飛び降りてきて、僕の頭を撫でてきたけど、抱きしめられて猫可愛がりをされたわけではないから素直に撫でられておくことにした。


 ……それくらいのスキンシップなら許してあげるのに、季水の猫可愛がりは愛が重いんだよなぁ。


 そう考えていれば、僕達の関係を見て苦笑いをしている柊さんの視線に気づき、どうしたんだろう? と見つめ返せば、


「カリスマと呼ばれた生徒会長様は家では弟には敵わないと。……こんな姿他の同級生には見せられませんね」


 ……ああ、なるほど。


「季水は、僕らが関わるとただの弟バカになりますよ? 一応は親しい相手以外には隠さないと駄目だよって言ってあるから大丈夫だと思います。僕の我儘を聞くのが趣味だと自負するくらいですから、安心してください」


 ニッコリと笑ってそう言った後、「ねっ、季水!」と返答を求めれば、満足げな顔をして何回も頷いていた。その様子を見て、柊さんの飼い主さんはどうしたもんかと困った表情をしているとその後ろから男性がやって来て、


「完全に力関係が妖精軍師の方が上だな。この街の冒険者やら守衛やらに、姫呼びされるのも良くわかる。貴族だからと言うのもあるだろうが、生まれ持った中性的な上品さも相まって姫呼びされても、劣っていないよな」


 男性はそう言った。

 うん? 誰だ、この男性は。と考えていると、柊さんの飼い主さんが、


「失礼ですよ、晴火(はるひ)。生徒のことを通り名で呼ぶのは教員としてマナー違反ですよ。……それより自己紹介していませんでしたね。

今年から騎士科の教員となりました、葉月(はつき)と言います。水季さんとは同級生で、生徒会では副会長をしていました。

零さんは普通科の生徒でしたよね、もしかしたら騎士科の科目で会えるかもしれませんね。……あなたなら、僕の科目を絶対取るような気がしますから、その時はよろしくお願いしますね」


 柊さんの飼い主さんの葉月先生が、後ろから来た男性……晴火さんに対して指摘した後、自己紹介をしていないことを思い出したのか、簡単に自分のことを説明してくれた。

 ちなみに、この学園では生徒と教員は対等な関係であり、それが貴族であっても変わらない。そして、例え教員が貴族の位を持っていたとしても、その立場を無くしたものだと思って接しろ、それがこの学園内で絶対に守らなければならないと言うことだ。

 だから、僕は敬語を使って、葉月先生と喋っているんだ。さて、それよりも!


 ……うん? 何で、僕が葉月先生の科目を取るって決まってるんだろう? 確かに普通科はどの学科の科目もオールマイティに取れるけど……。


「葉月は鳥使いだからだよ。葉月は異様に鳥に懐かれてな、スキルも加護も関係ない能力なんだよ。だから、鳥による伝達の講義や学科のないテイマーの講義をしている。葉月はテイマーでもあるから、講義内容は零には物足りないだろうけど、テイマー仲間を作るのも今後のためになると思うぞ」


 僕が抱いた疑問に対して、すかさず季水が答えてくれた瞬間、僕は反射的に警戒心を出す。それを宥めるようにコハクとハッサク、サクアが僕の足に寄り添い、高まった警戒心を落ち着かせようと試みているのを感じるが、止めることが出来なかった。


「嫌だ!! 僕は知っています!! 現代のテイマー達は従魔達のことを武器だとしてしか見ていない!! 従魔にも意志がある、心がある!! 役に立たないと言われれば傷つく心があるんだ。主人が好きなのに見向きもされないことに気づかず、従魔を武器と扱うテイマー達と仲良くする気はありません!!」


 ……まずい。ストレスがかかりすぎて、しかも感情が高まりすぎているから、後もう少しで過呼吸になりそ……!


「零さん」


 優しい葉月さんの声が聞こえ、過呼吸になりかけた呼吸が落ち着いてきて、顔を上げれば声と同じくらい優しい顔をしていた。


「僕も小さい時、同じ疑問を持っていました。……いえ、僕の場合はテイマーはこうであれと言う知識を学ぶ前に、それを間違っていると教えてくれた存在が現れたのが運が良かったんだと思います」


 ……え? 今、なんて言ったの? 聞き逃しちゃいけないような言葉を言っていたような……?


「僕の家は貴族ではありませんでしたが、商家の育ちで、市民の中では裕福な生活をしていると思います。実家は田舎なので山を所有していていたのですよ。僕は自然が好きで、良く山登りをして景色や植物を楽しんでいたんです。その時、白狐(しろきつね)と偶然出会いましてね、お腹すかせていたようでサンドウィッチを分けてあげたんです」


 僕は同じ疑問を持っていた、と話をされて未だに呆然としていて、気を使ったのか葉月先生は続きでそう言った。


「そしたら、長く生きている魔物でしたから喋ることができまして、そのお礼にテイマーのスキルを持っていたからテイマーの知識を教えてもらっていたんです。その時に、現代のテイマーの知識と比べて良く考えてみろと言われたんです。それで、驚きました。現代のテイマーは、まるで従魔を奴隷のように扱われていたのですから。……僕は怒りを覚えました、なぜ共に戦っている仲間を痛みを与えることが出来てしまうのかと」


 ……ああ、だから季水は葉月先生の授業を受けておけば今後のためになると言ったのか。似たような考えを持っているから、だから大人しく葉月先生の話の続きを聞くことにした。


「ですから聞いたんです、その背中にあるのは()()()()()()()()()()()()()と。そしたら、白狐は大きな傷は自分を家族のように愛してくれた人を攻撃から守るためについた傷だと話した後、なぜかその主人は死の間際契約を解除したらと言った後、その周りにある小さな痣はその後の主人からされた仕打ちだと話してくれました。

その時、思ったんです。家族には白狐の居場所をバレてはいけないと」


 痣……と聞いた瞬間、訳もわからない恐怖感に襲われかけた瞬間、寄り添っていたコハクが立ち上がり、一鳴きして僕は我に返る。そして、まだ続くであろう話を耳を傾け直した。


「僕はそれから学園に入るまで白狐の存在を隠し通しました。そして、この地を一時的に離れると白狐には話した時に従魔になってやる、お前が側にいなければ人間に攫われかねないからなと言ってくれました。その時の僕は無知だったんです、僕の右腕である白狐はどれだけ古参な魔物でテイマーであれば喉から手が出るくらい仲間にしたいと思うような存在であったことを」


 ……そういえば、古い魔物図鑑に白狐って名前だけはあったなぁ。でも、正体がわからないから名前からして狐なんだろうかとは思うんだけど……。


「まさか柊さんが、白狐って訳じゃないですよね?」


 言われてみれば見た目は若い梟なんだけど、雰囲気は堂々としてるはしてるよね、確かに。


「そうですよ、白狐には変化のスキルが使えるんです。だから、鳥に変化して欲しいと頼んだんです。自分は異様に鳥から好かれるからって。

それを初めて頼んだのは契約した初日でしたから、もしかしたら信頼度が足りなくて使えないからもしれないぞって予防線を張られててはいたのですが、初日から問題なく使うことが出来たんです。その時初日から使えない力が使えたと言うことを実感したことで、テイマーにとっては絆が力になるんだと再認識させられました」


 実感しても長年積み重なった常識が邪魔をして受け入れられらない人は多い。

 でも、葉月先生は受け入れることが出来た。幼かったからかもしれない、それでもこれから先、葉月先生のような経験はなかなか出来なくても、葉月先生から学べばだんだん考え方も変わってくるかもしれないと思う。そう思うと、ほんの少しだけ警戒心を強めたことで入った肩の力も抜けたような気がした。

 そんな僕を見て、葉月先生は安心したような顔をした後、彼はまた話の続きを再開した。


「……だから、僕は従魔を奴隷のような扱いではなく、仲間として、家族として扱うようにこれからのテイマー希望者には指導していきたいと思います。そんな考えを受け入れてくれるのは友人くらいなもので、生徒からも反感も受けるでしょう。この考え方が広まるまで、僕は周りから変な先生だと言われ、嫌われるかもしれません。

それでも彼らは12歳、まだ考え方を変えられる時期にいます。これはチャンスです、この国の考えを変えるチャンスなのです。僕1人、変人と言われるだけでこの世界の常識が少しでも変えられるのであれば、変人でも奇人にでもなれます」


 そう言った葉月先生の目は、本気でそれをやり遂げると決めた人の目だった。だから、僕は少しだけアイディアを提案することにした。それが採用されるか、それを採用されたところで良い方向に変わるかどうかは分からないけれど、やるだけ無駄ってことはないだろうからね。


「変人奇人を演じ、功績を残したところで貴方が理想とするテイマーと従魔の関係を傷つけるようになるまでは時間がかかると思いますよ。塵も積もれば山となる、大きな功績を残すよりは地道にコツコツ正しいテイマーとしてのあり方を印象付けてみてはいかがでしょうか?」


「例えば?」


「そうですね。例えばテイマーの講義をする時、授業初回時点の実力を図るために葉月先生と模擬戦でもしたらどうですか?

強さを理解させれば憧れる生徒もいるでしょう。実力差がわかれば、なめてかかられることも少なくなるはずです。そうなってから、座学で先生が教えたいと考えていることを授業として話すんです。先生、先駆者とは人が今までこれが当たり前だと決めつけていたことをそうではないと常識を壊す人のことだと思うんです。ですから、理想のテイマー像に貴方がなれば良いのではないかと僕は思いますよ。そうなれば、自然にテイマーと従魔との関係は変わってくるのではないですか?」


 目に見えた強さのものさしは必要だ。だから、自分のやり方での強さと信頼を築いている葉月先生の強さとは何が違うのか、明確にする必要があるからね。ただ、そのやり方は間違っていると主張するよりか体感した方が僕らの年代にはわかりやすいと思う。


「それもそうですね。授業内容の変更も検討してみましょう。幸い、テイマーの授業を持っているのは僕だけですし、考え方が先生によって変わることもないですから、今から考え直しをしてきます。失礼しますね」


 そう言って、スイッチが入ったかのように考え込みながら何処かに消えて行ってしまった。


「あれって遭難しないの?」


 そう季水に聞けば珍しく苦笑いをして、


「考え事をし始めるととことんダメなんだよ。本人も自覚してるし、友人は皆、場所特定機を本人から与えられているから大丈夫。俺か晴火が迎えに行くから安心してくれ」


 そう教えてくれた。だから、


「じゃあ、季水迎えに行ってあげてよ。山だし、遭難したら大変だよ」


 いつもなら自分と信頼できる同性以外の同性と2人っきりにするのは嫌がるし、嫌がるかなぁ……と思いつつ、そうお願いすれば珍しく、


「いいよ、任せとけ。……その間は晴火、零のことを頼むな」


 素直に晴火と呼ばれる男性に任せて、葉月先生を探しに行ってしまったのだった。



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