実力テスト編 その1
今月は、偶数月なので週2回投稿の月です。
久しぶりに僕の本拠地とされる冒険者ギルドに寄ってギルドカードのステータス更新をした後、本題である事前に頼んでおいた弓矢や銃弾の受け取りを実力テスト前に受け取った。
何、僕がしたのは墓守の森の開拓だけじゃない。レシピ考案者として様々な武器の可能性について提案し、着々と自分で自衛出来るように心掛けていた。提案といっても、咲斗に「こう言う武器が欲しい〜、こう言う弓矢とか銃弾があればな〜と話していたら出来てしまった」と言うのが僕の中での真実なんだけどさ。
そのことにより生まれたのが、付加弓と付加銃って訳。先天性・血縁スキルに攻撃系のない僕は、武器によって補うしか身を守る方法がない。だからいかに正確に、いかに早く打ち、武器を交換するかだけではなく、どれだけたくさんの武器をアイテムボックスに入れないで持ち運べるかも重要って訳。
だから、咲斗や朱基さんの力を借りて、いかに安全に、いかに自分を守ることが出来るかそればかりを追求している。
そう考えていると季水は演説するかのように饒舌な口調で、
「咲斗、朱基さん、貴方達には感謝している。攻撃性の持たない零が従魔達だけを連れて歩いていても安心していられるのは8割は貴方方のおかげだ。ありがとう。この武器達がなければ、3人くらいの護衛をつけなければならなかった。そうすれば零のプライバシーがなくなり、零に我慢を強いるところだったよ。零は見た目や声変わりが来ていないから声だけでは男だと判断は難しい。零は寛大だから性別を間違えられたところで怒るような子ではないけれど、零は気にしていなくても異性として意識してくる子もいるかもしれないと考えると心配で心配で。それに護衛はどうしても男性になってしまうから、信頼できる護衛でなければ俺の胃がもたない。出来れば、人体に影響が出ない程度で気絶するような護身用の武器を持たせたいのだが、どうにかならないだろうか」
感謝と過保護発言と護身用の武器をよく噛まないなと感心するくらいの速さで、2人に告げた。そんな季水に対して、咲斗は慣れた対応で、
「季水さんは気にしすぎです。零兄様は、調子に乗っているくらいの実力者に負けることはまずありませんから。それに、学園にはコハクとカラス君も行くのでしょう? 彼らは勇敢ですから、零兄様が襲われてもすぐに助けてくれますし、最悪ハッサクの攻撃で何とかなりますから、とりあえず落ち着いてください。
気休めではありますが、胃薬を調合しておきましたから飲んでください。依頼の件、引き受けました。請求場所は季水さんですか? それとも零兄様ですか?」
淡々と事務作業を行うかのように話していく咲斗になだめられつつある季水。……8歳児になだめられる姿を見て、頭が痛くなってくるよ……。
なんて考えているうちに冷静さを取り戻したのか、
「咲斗は小さい零みたいだね。俺は分家の養子に入ったとは言え、俺の愛しい弟。咲斗の言う通りだね、そうだった。零の護衛には頼もしい従魔とペット達がいたんだったね。
胃薬ありがとう、有難く頂くよ。もちろん俺の依頼だから、俺の個人資産から必要経費はおろしてくれていいからさ、頼むよ。無理を言って頼んだんだから咲斗にもご褒美をあげないとね、この前欲しがっていた錬金釜も俺の個人資産から買っていいよ。その代わりちゃんと領収書を貰って、手紙と一緒に送ってきて。一応、資産管理はしてるから必要なんだ」
2年前から有栖家の分家に養子になった3つ子のことを自分の弟のように可愛がり、目に入れても痛くないくらい可愛いと宣言しているくらいだから、相当溺愛している。
意外にも咲斗と季水の相性はとても良く、養子に入った水化家の人間よりも早く懐かせてしまったのは想定外だった。あまり心を許すような子じゃない咲斗は僕と朱基さん、季水、そして最近になってから養父に心を許すようになり、今は養祖父に心を許し始めているところだ。
是非ともとても良い子なので、めげずに頑張って欲しいね。
「わかりました。錬金釜は僕のご褒美として受け取っておきます」
「そうしてくれ」
2人の会話が終わるまで静かに待っていれば、終わった瞬間、咲斗はこちらに来て、
「零兄様っ!! 咲良がですね、また料理をしてダークマターもどきを作ったんですよっ!! 」
さっきまで大人っぽく振る舞っていたのになぁと微笑ましく見つめながら、飛びついてきた咲斗を抱きしめながら咲良と咲乃の話を咲斗から聞いていると、にこにことご機嫌そうにこちらを見ながら、
「俺の弟達、可愛い」
あまりの溺愛ぶりにドン引きをする時もあるけど、
咲斗達にはこれくらい深い愛が必要だと思う。だからまあ、今日のところは我慢しておいてあげよう。……いつもなら過保護すぎて重いと言ってあげるところだけど、我慢我慢っと。
何せ、水化家にいるあの子達とはしばらく一緒にいたけど、1週間の半分1人ここに拠点を置いて過ごす咲斗と過ごすために、1日早くここに来たのだから。可愛い子には旅をさせよと言うくらいだから、彼の好きなことを出来る場所があるなら好きにやってみれば良い。
幸い、朱基さんと雷紀さんが一緒に暮らしてくれているから、安心して1人でここに居ても安心できるしね。
「……俺のこと、可愛いって言うなんて変な人」
「なら、僕も変な人だね」
ニコニコしながらそう間髪入れず言えば、咲斗は泣きそうな顔をして僕の胸に顔を埋めてきた。
……さては、誰かになんかいらないことを言われてそう思っちゃったんだな? ふーん、あとで朱基さん達に事情聴取しないといけないね?
次の日、実力テストを受けることを目的に、目的にである墓守の森に久々に来た。ハルクールから、
「土地が急速に成長しましたので、それと同じくらいの速さで土地が進化します。次に来る時には何かしら大きな変化があると思いますよ」
と聞いていたとは言え、驚いた。前はゾンビやゴブリンの群れが居たこの場所には、動物以外何も居なかったから。
うちのカラス達やカラス君が聴いたら喜ぶ口笛を吹いていれば、遠くの方からこちらに向かってくる羽が擦れる音が聴こえてきたから、弓を引くためのサポーターに乗るように構えていれば、梟の姿が見え、その子が僕の上に乗るまで静かに見守った。
「……君は飼われている梟だね? 良いの? 飼い主さんにちゃんと伝えてから来たのかい?」
そう話しかければ、その答えを表すかのように梟は首を傾げた。ふーん、言葉がわかっているのかと感心しながら、飼い主に帰すために歩き始めたのだった。
さて、墓守の森がどう変化したのか? それは今まではゾンビやゴブリンの縄張りだった場所がそうではなくなり、戦闘能力がない住人でも冒険者以外立ち入り禁止区域以外は立ち入ることができるくらい、安全な場所が出来たこと。
そして、安全区域の深部まで進むと、門が見えてきて冒険者以外立ち入り禁止区域が現れる。冒険者なら新人でも入れるレベルではあるが、遊騎さんの試みにより、それを成功させるには冒険者以外立ち入り禁止区域を作る必要性があったから、墓守の森では門番が深部にいる。
それから、ここからが本題。じゃあ、何故墓守の森が実力テストに選ばれたのか。
それは墓守の森は、実力を図るためには十分なレベルであること。そしてなによりも、土地が変化したことにより、ここには山が出来たからだ。山があれば体力面やその他の能力も図ることができる。だから、今回から学園側は実力テストの会場をここに移行した。
しかも、ここの冒険者ギルドの冒険者は優秀ときた。それなら、ここに移行しようと思ってしまうのもしょうがないと思う。
「相変わらず、動物にも好かれてるな」
「それを言ったら、季水もでしょ?」
何も意味もないけど、木と木を飛び移りながら移動する季水に話しかけられ、その内容に対して反論をすれば、珍しく呆れたような顔をして、
「無自覚か」
……なんとなく、季水に言われるのだけは嫌って思ってしまうのはなぜだろうか。自分だって無自覚に何かしらやらかしているからかな?
とりあえずムカついたので、季水が一番めげる無視をして目的地まで移動したのだった。




