その4!
本来なら、スライムを従魔にしたと聞けば、この世界では子供の狩りの練習に適しているモンスターの一つであり、品性を気にする貴族が多いため、嫌がることが多いと書物に書いてあった。
だから、本来ならスライムを従魔したら止めるはずなんだけどなぁ……。
何で、無表情ながら僅かにウキウキしていらっしゃるのでしょうか、お父様?
「やはり血筋だな。お前の兄もさすらいの旅に出かけて以来、手紙が来るたびにレアスライムの吐き出した液体とか言って送りつけてきたり、私が言うのはなんだが、変わったやつでなぁ、お前が生まれる前だから6歳の頃か。急に旅に出たい気分だ! とか訳わからないこと言ってきたから、爆笑して、10歳になったら帰って来いって言ったんだよなぁ。
お前が生まれたの確認してから旅だったから、移動時間も考えてそろそろ帰ってきても良い頃なんだがなぁ、あいつも12になれば、貴族としての最低義務である学園に通わなきゃならん、そのための基礎知識は入れてやらんと。流石にな、貴族としての最低限は守らないといかんからな」
え??? 確かに次男候補として生まれたけど、本当に次男だとは思ってなかった!
あ、そういえば自由に暮らし過ぎてて、気づかなかったけどそう言えばお母様がいない?!
「僕にお兄様がいらっしゃったのですか?!
それにお母様も、僕の看病して以来、姿を見ていないような気がするのですが……」
(……気づかない僕も僕だけど、もう1人の僕もお父様の方が好きだったみたいだし、昔から夕食に現れない事が度々あるのがお母様だったし、それにうちではお父様が子育てしているし)
「あー、やっぱり自分に兄がいること知らんかったか。まあ、思いつきで行動する点以外は私にそっくりだから肩の力を抜いて接してやってくれ。
それと、お兄様とか呼ばれんのも、私や妻のことをお父様だとかお母様だとか呼ぶのも嫌う節があるから季水と呼んでやってくれ。さん付け、君付け、まあ本当は嫌なんだろうが様付けは許しているから、呼び捨ては許容してこない。ある程度の教育はしてあるから、貴族の義務は理解しているマイペースな奴だからな。
ああ、お前の母親の月夜はS級クエストの依頼がきてるから3年は帰って来ないな」
(お兄様……じゃなくて、季水くんのことは普通に接して良いってことはわかったけど、S級クエストがお母様のところに届いたってどう言うことだ???)
「……くくっ、お前は表情豊かなやつだな。愛らしい奴め。
お前の母親、月夜は元々傭兵族出身の貴族だ。緑水の位の貴族は代々、政略結婚は断っているため、基本的には恋愛結婚だ。身分差とか気にしないし、光帝は私らの行動についてはあきらめの境地だからな。
まあ、何度か政略結婚をするように頼まれたんだが、彼女以外とは……いや1人いたな、いや彼がもし女性だったら間違えなく彼女ではなく、あいつを選んでいたな。国民が困ることはあってはならないからな、悪いことをしてなければサポートは政略結婚しなくても資金提供はするさ」
(……お父様、話がずれてるの、気がついていらっしゃいますかね。僕が聞きたいのはお母様に何でS級クエストが依頼されるのかなんですが……てか、お父様のこの人が女性だったら結婚したいって思う人ってだれなのかむしろ気になるんですけど……)
「あ、話がずれてしまったな。傭兵族の領地が私がちょうど季水くらいの歳だな、良くないことが重なって没落危機になっていたんだ。その時、たまたま社交場であってな、私が一目惚れしたんだ。
だからその時、確か「私は貴女に一目惚れをした。だから、そんな貴女を悲しませないため、助けるために政略結婚を申し込もうと思う。私は政略結婚のつもりはないし、将来子供が望まない限りはさせるつもりはない。それに君はある程度夫人の知識をつけ、必要な公務さえ出てくれれば自由にしてくれていて構わない」って言ったら、彼女は政略結婚を受け入れてくれたが、本当に自由にしていたよ。
まさか、自分の妻がドラゴンさえも倒す、Sクラスの冒険者になるだなんて思ってもいなかったんだから! 本当に彼女は面白い女性だ!
だから、彼女はあのまんまで良いんだ! だが、零に寂しい思いをさせるのは心苦しいが、自由に生きて欲しいんだ。勝手な両親でごめんな」
普段あんまり表情を変えないお父様が本当に申し訳なさそうな顔をした。
(いやいやいや、僕だってさっきまでお母様がどこかに行ってるだなんて気づいてなかったし、勝手な子供なのは僕も同じなんですけど……、言わないでおこうっと)
まあ、生きているなら良いんだ。そんなことより、
(ドラゴンまで倒す人の息子が攻撃力皆無だなんて遺伝子は不思議だ……)
そうぼんやりと考えた後、
「別に広い屋敷にひとりぼっちとかではないですし、お父様はしっかり親としての責任を果たしています。許せも何も、怒る理由がありませんね」
そう言えば、お父様は一瞬口が緩めるように笑ったような……と考えた瞬間、大砲の音のような音が聞こえて、行儀が悪いと理解しつつも僕は飛び上がるように立ち上がり、僕の部屋で眠っているあの子達の安否を確認するために食堂から出ようとすれば、ゆうに止められる。
「零様! 落ち着いてくださいませ! 敵襲ではありませんから!
奥様の家族に手を出すなど、奥様を敵に回すことになりますから、そうそう敵襲など来ません。あの音は恐らく……」
(……あ、そう言えばお母様はドラゴンを倒せるくらい強かったんだ……。そんな人に挑んでくるなんてどれだけ無謀なんだって話だよなぁ……)
なんて考えた後、サクアやハッサクのことは心配で、びっくりして怯えてないか確認しに行くためにドアノブに手をかけようとした瞬間、いつのまにか背後にお父様がいて、僕を抱き寄せられた。
突然のことに、僕は思わずお父様の着ているシャツを握りしめる。そんな僕を何かから守るかのようにドアの方に背を向けるように方向転換したあと、
「《結界》」
(……やっぱり敵襲じゃないのか?!)
僕は我に返り、お父様の腕の中でもがき、サクアやハッサクの元へと行こうとしても、拘束する力が強すぎて助けに行きたくてもいけない。
「サクア!! ハッサク!!」
話し方からすればしっかりしているハッサクも、まだまだ子供だ。そんな子達がいきなり大砲みたいな大きな音を聞けば怖がっているはず。
あの子達も僕の家族だ。怖がっている時、側にいてあげなきゃ意味がない。
「零様!! サクア様やハッサク様の元には料理長が向かっています! 今は、ここにいてください!」
その言葉に安心し、肩の力が抜けたその瞬間、大砲のような音で食堂のドアが吹き飛ばされた。そう、壁に一つも傷つけず、綺麗にドアだけが吹き飛ばされていた。
そして、それをやった人物は言った。
「ただいま戻りました!! 玲亜、零!」
(敵襲かと思えば、まさかの兄だった!!
それに、まさかの父親の名前を呼び捨て! 玲亜って言ったよ! )
そして、
「ただいまじゃねーですよ!! 猪突猛進しか出来ないなんて、イノシシと変わらないじゃないですか!!ドアの意味を考えてください!
それに、ふざけんなですよ! あなたが壊したドアを直すのは使用人なんですよ! わかってますか?! あなたが物を壊すたびに使用人の仕事が増えることを理解していますか?!
今すぐ、壊してきたドアを直してきてください! 良いですね!!
それに、次あの破壊行動したら……、僕の従魔への敵襲として認識し、地に埋めてやりますからね!?」
焦りから怒りに変わった瞬間だった。
後に語られる、その時の僕の顔はまるでアサシンかのような顔をしていたと。




