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その9


「さて、作り始めようかなっ!」


 さーて、早速始めるぞ! と内心で意気込み、アイテムボックスから調合用の調理器具を出していくと2人が呆けたような顔をした後、


「「今から?!」」


 同時に同じことを言ったから、仲良いなぁ〜って考えつつ、グーグー草と水を出し、最近手に入れたスキルを使ってみようと思う。


「清潔変化!」


 そう呟いた瞬間、グーグー草と水が数秒間光に包まれ、鑑定《品質》で状態を確認すれば、2つとも状態は新鮮状態に変化していた。調合師には便利なスキルだなぁーってそう考えながら下準備を始めようとすると、冒険者さんこと(かおる)さんは僕の肩をいきなり掴んで……、


「そのスキル、何?!」


 いつも穏やかな薫さんが鬼の形相でそう聞いてくるもんだから、僕は驚いて固まってしまった。それを見て冷静さを取り戻したのか、穏やかな薫さんの表情に戻り、


「ごめんね、そのスキルは初めて見たから思わずテンションが上がっちゃって」


 申し訳なさそうに言われては、責めることはできないよね? ……しょうがない。念のためステータスを確認しておいて良かった、説明できるちゃんとした理由があるからさ。


「えっーと、清潔変化は後天性スキルで、入手が難しいってされているスキルと言われているみたい。能力的には先天性スキルの浄化の劣化版と言われているスキルで、入手した人が入手の仕方を教えると、教えられた人は入手出来ないスキルらしいよ?」


 にこにこと笑いながら、説明していると呆然としているから情報を消化できるまで作業しながら待ってるかと普段よりかなり多い量のグーグー草をすり潰したものと、普段と同じ量の水を用意して煮詰めていけば濃度の高いものが作れるはず。

 鼻歌を歌いながら作業を進めていると……、


「あの、浄化の劣化版と言うとゾンビの浄化とかも出来るってこと? じゃあ、ここまでゾンビが減っているのはこのスキルのおかげってことなの?」


 そう言われて、え? と思わず声を上げて驚き、


「ううん、清潔変化にはそこまでの力はないよ? ゾンビを倒せていたのは回復ポーションを使って浄化してたからで、最近魔法武器の銃に使えるゾンビ浄化用の銃弾を考案したの。それを孤児院の賢者見習いの子の咲斗に製作してもらったもので倒してるだけよ」


 にこにこと微笑みながら真実を話せば、


「え、それ欲しい。そしたら、僕達の浄化回数が減るし、徹夜で野宿しなくて済むよ。僕も、新くんも浄化スキル持ちだから、被んないようにしてもらってるけど大変でね。いや、良いことを聞いた」


 嬉しそうにそう言ってくれた。……そこまで喜んでもらえるとは、嬉しいよね。

 さてと、話しているうちに沸騰してきたから、次にすり潰したグーグー草を一気に入れて、回復ポーションも普段よりも大目に入れ、さらに10分くらい煮詰めていきます。

 煮詰めている間、やって来たゾンビ達はハッサク達にお任せして、危ないときだけ遠距離から援護をしつつ、10分後。1段階目、一番濃い濃度の眠り解除薬の出来上がり。

 仕上げは、清潔な布をかぶせたざるでグーグー草をすくい上げ、濾す作業をすれば完成。


 もったいないけど、グーグー草の残りカスはここではもう使いません。このカスは、クッキーに混ぜて回復ポーション入りは不眠症改善の目的用、なしについては罠の餌にしたいと思う。

 ここからはグーグー草の量を、同じ量ずつ減らしていく作業を水が減るまで繰り返します。煮詰める分数も合わせて、10分ね。


 濃度が高い順から1と番号を振って、濃度が一番低いものが1番数字が大きくなるようにした。この作業を終えたのは、普段帰宅している時間の10分前のことだった。

 気がついたら、新くんしかいなくてゾンビの土葬をしている最中だった。


「おっ? できました?」


 警戒心がすっかりなくなったのか、とりあえず敬語を使っていると言ったような口調で僕の元へと駆け寄って来た。すっかり、ハッサク達とも打ち解けたのか彼の後ろをひょこひょことついて来ている。……あーうちの子可愛い。


「うん、出来たよ。この数字の一番大きいやつから飲ませていってね。順番的には日に日に順番が小さくなっていくようにすること! 安易に数字の大きいものを飲ませようとしちゃダメだからね? 後遺症で不眠症になりかねないから、あと数時間でも起き始めたら教えて! それに合わせて配合を変えていくから。

それから、毎日検査のスキルで状態を見てもらうことを忘れないようにしてね。あとは、いつ目が覚めても良いように、ゆっくりと丁寧に足やら腕やら動かしてあげるように。免疫力も落ちてるだろうから、体を拭くなり環境を清潔な状態に保っておくこと! いいね?」


 注意することをまくし立てるようにそう言えば、困ったような笑顔を浮かべながら、


「わかりましたよ、わかりました! ちゃんと零様の言っていることをちゃんと気をつけますから、ね? 安心してください」


 優しい声で僕のことを諭してくれた。さっきまでは警戒心が強かったのに、理由はわからないけど、まるで危なっかしい子猫を守るような優しさに包まれているような温かい気持ちになった。……不思議。


「帰ろ、新くん」


「はい、零様」


 冒険者さん達の誰よりも丁寧な対応なのに、どうしてだろう? なんで、新くんが1番近い存在だなと感じてしまうんだろう? ……ほんと、不思議。

 今日はどこにもよる気にもならなくなったので、新くんには直接叔父様の屋敷まで送ってもらった。

 古本屋には明日圭介さんに付き添ってもらおう、今日はとりあえず屋敷のことを早めに済ませて早く寝てしまおうとなぜかそう思ったのだった。



 ……次の日、新くんのお姉さんの調子はどうかなと考えつつ、朝の日課をいつものようにこなしていると迎えに来た圭介さんが笑って、


「まるで恋する乙女みたいにそわそわしてどうかされましたか? 好きな人でも出来ましたか?」


 そう嬉々とした顔で、茶化してくるから僕は、


「まさか! ()()()()()()()()()()()()()よ。ただ、調合師として初の試みの薬を調合してさ、効き目はどうかなと気になっただけだよ」


 僕が過剰に反応せず、いつも通りの切り返しでそう言えば、つまんなそう顔をする。


(僕に何を期待してるのさ、恋なんてしないよ)


「そうですか、そうですよね〜。薬づくりがご趣味な有栖様が恋する乙女のような顔をするなんて、新作の薬の効力が気になる時くらいでしたね!」


 久々に、主人と護衛らしくない会話が出来て内心嬉しく思いつつ、今日の予定に話を切り替えることにした。


「失礼だなっ、僕だって新作の本を見つけても恋する乙女の顔くらいするさ! ……そもそも乙女ですらないけどさ。今日の予定なんだけどね、今日は古本屋に行ってからギルドに行こうと思うの。それで良い?」


「構いませんよ、かしこまりました」


 勇者が現れたとわかった今、その人が善であるか悪であるかわからない状態であの本が手に渡ることは避けたい。それだけあの本には貴重なことが書いてあった。日本語がわかる人ならあの本がどれだけこの世界に影響を与えるか理解できるはずだ、だから有栖家が保護しなければいけない。


「急ぐよ」


 僕がハッサクを抱っこし、サクアを圭介さんに抱っこしてもらい、あの日以来久しぶりに古本屋へと足を運ぶのだった。



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